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名経営者 小林一三・岩切章太郎の経営に学ぶ その5

小林流出世への道

阪急東宝グループの創始者小林一三は、今太閤と呼ばれていた。サラリーマンから時代を代表する経営者になった小林は、「使われる側の人間」に対して数多くのアドバイスを残しているが、今回はそのエッセンスを紹介する。

サラリーマンとして出世できる人はどういう人物かと聞かれて、小林一三は次のように答えている。

「出世する方法はようするに二つしかない。重宝な便利な人になること、是非必要な人になることの二つしかないと思う」

小林は、便利な人には心がけ次第でなれると指摘した上で、「平凡主義」を説いている。

「これからの世の中で、有用の材ならんとする青年は平凡でなくてはならぬ。偉がってはもう駄目である。一芸一能のある者ない者にかかわらず、平凡なことを忠実に行ない得る人でないと、人に使われることができない。学窓を出たばかりの、したがって理想の高い青年は、平凡ということを知ってこれを軽んじるが、平凡の非凡ということを知る者が少ない。平凡の非凡とは、平凡なことを忠実に真面目に実行すること以外にない。例えば、朝早く起きて、毎日30分前に会社に出る。そうすれば必ず成功する。私はそう考えております」

小林は、本当に数多くの文章を残しているが、この「平凡主義」という言葉は随所に出てくる。小林は新入社員が入ってくると、まず平凡な仕事を課すという。その仕事を完全に出来る人間を「将来見込みがある」と考えて重用して育てるという。

ところが、なまじ学校の成績のよかった青年ほど、平凡な仕事を嫌い、「俺は平日怠けていても、いざ鎌倉という場合には大いにやる。俺は一芸に秀でている。何もあくせくする必要はない」となりがちなのだが、こんな不了見な青年は人に使われないがよい、とまでいっている。

この「平凡主義」で思い出すのが、日本電産永守社長の経営だ。永守社長は再建請負人として知られるが、再建先にいって、社員に話すことは以下の三つだという。

  1. 始業時間の5分前には席につくこと
  2. 机の周りを整理整頓すること
  3. 出勤すると決めた日は絶対に休まない

どんなに業績の悪い企業も、全社員が以上の三つを守れば、業績が伸びると永守社長は言っている。いずれも「平凡」なことだが、それができていない企業が圧倒的に多いのだ。逆に言えば、凡事を徹底すれば勝ち残れるということだ。

小林の説く出世する方法のもうひとつ、「必要な人」になるためには、どうすればいいのだろうか。小林は、「特徴を持つ」ということだという。例えば、銀行員なら、為替のことなら誰よりも詳しいといった具合にだ。では、特徴を持つためにはどうすればいいのか。これは、「天分を自覚して自分で勉強するより他に道はない」と小林はいう。やはり「勉強に如かず」なのだ。

小林が説く、「二つの出世する方法」は、企業経営そのものに通じるものがある。企業は、まず取引先なり顧客から重宝がられる存在にならないといけない。ただ、これだけだと大きな飛躍は期待できない。そこで大事になってくるのが、相手にとって「必要な存在」になることだと考えたい。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2009年10月23日 掲載]


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