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繁盛店を作り続けた経営者・小山武夫の経営に学ぶ ― その2

キーワードは『仕入れ代理』

筆者は、30年近く経営者にインタビューすることを生業としてきた。実に多くの出会いがあったが、とりわけ、その経営哲学に魅かれた経営者が何人かいる。今回から数回にわたって紹介したい。まず登場願うのは、ベビー・子供服で坪当たり日本一の売上げを誇る店を作った小山武夫さんだ。

売り場面積わずか12坪のベビー服店で2億7千万円を売り上げるまでになった小山武夫にも悩みはあった。いかんせん、連日超満員の12坪の店では、品揃え、接遇にも無理が出てくる。これではあまりにも不親切と考えた小山さんは、昭和59年に『白亜こども館』をスタートさせている。

子供館の売り場スペースは一階、二階合わせて100坪あまり、ここでは、ベビーを卒業したお客様のために、子供服も品揃えした。一階がベビー服で、エレベーターで上がれる二階が子供服だった。この子供館はスタートから順調で、100坪で年間15億円を売り上げる繁盛店になっている。
なぜ小山さんが手掛けた店は繁盛するのか。前回は、立地、接遇戦略で、小山さんが、規模は小さいながらも大型店に負けずに繁盛店を作り上げた姿を紹介したが、成功の秘密はそれだけではない。特筆すべきは、小山さんの『仕入れ哲学』だ。

小山さんに、店を繁盛させるコツはと聞くと、「お客さまの望む商品を、どこよりも安く買って、どこよりも安く売ること」との答えが返ってきた。実に単純明快なのだが、この考えを実現することは難しいといわざるをえない。小山さんはどのようにして具現化したのか。キーワードになるのは、『仕入れ代理』だ。

「小売店として、メーカー、問屋の販売代理人になるのか、お客様の仕入れ代理人になるのか。繁盛する店としない店の差は、そこから出てくると思います。私は、顧客の仕入れ代理人になれといっているのです。いかにお客さまのお役に立てるかです。ですから、利益は手数料です。儲けを考えて仕入れをしていたのでは、お客様はきません。お客様に儲けていただこうと思って仕入れて販売していると、自然に繁盛して儲かるものです」

メーカーや問屋の言うがままに仕入れて、いわれた値段で売れば、楽に商売はできる。しかし、メーカーや問屋の売りたい商品とお客さまの欲しい商品は違うのだから、販売代理人では繁盛する店はできないということだ。

自分の店にくる顧客の好みも懐具合も、注意深く観察していればわかる。それなら、顧客の欲しがる商品を、顧客が安心して財布の紐を緩めてくれる値段で売れるように、仕入れに工夫をこらせということだ。

そんな小山さんが大事にしてきたのは、メーカーや問屋の人たちとの人間的つながりだ。量販店のバイヤーは、大量に仕入れるだけに、知らず知らずに態度が横柄になってくる。ところが小山さんは、うちは量が仕入れられないのだから申し訳ない、買わせていただくと、丁寧な態度で接する。これで、量は少しでも大手量販店並の価格で仕入れることができたという。
毎日仕入れも、小山流仕入れの特徴のひとつだ。

「商品の売れ具合、傾向を見て、担当者が毎日問屋を回り、夕方の5時頃に私どものほうから商品を引き取りに行きます。毎日いくのですから、商品の動きが本当によくわかるし、人間関係ができますから、思わぬメリットもでてきます。問屋のほうでも、毎日だいたい同じ時刻に行く担当者を待っていてくれます。ときには、問屋の人が、『白亜さんが来る頃だけれども、今日は何か出すものがあるか』と心配して、あまりないようだと、『じゃあ、今日で見切って白亜さんに回そう』といって、安く品物をだしてくれるのです。場合によっては、ただ同然のこともあります」

10数年前のことになるが、白亜に10個近くの段ボール箱が届けられるところに出くわしたことがある。聞いてみると、注文もしていないのだが、付き合いのあるメーカーが、見切り商品を、白亜なら何とか処分してくれるだろうと考えて送って来るのだという。値段は一枚20円でも30円でもいいというらしい。

白亜では、そうして手に入れた商品を、自社内で100円とか200円の値付けをして特価品として店頭に並べている。実績のあるメーカーから直接持ち込まれる商品だけに質がともなっていることはいうまでもない。

小山さんは逝去され、白亜も北千住駅前の再開発とともに姿を消してしまった。しかし、小山さんが残した経営哲学はいまも輝いていると思える。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2008年10月14日 掲載]


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