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繁盛店を作り続けた経営者・小山武夫の経営に学ぶ ― その1

弱点をつく

筆者は、30年近く経営者にインタビューすることを生業としてきた。実に多くの出会いがあったが、とりわけ、その経営哲学に魅かれた経営者が何人かいる。今回から数回にわたって紹介したい。まず登場願うのは、ベビー・子供服で坪当たり日本一の売上げを誇る店を作った小山武夫さんだ。

このシリーズの8回目で、小山さんには、「大流行は流行の終わり」のタイトルで登場願っているが、今回はそこでは紹介してない話を……。

小山さんの商人としてのスタートは池袋のキンカ堂だった。専務として、昭和25年から10年在籍、この間に、テレビコマーシャル、タレントのサイン会等々、当時としては業界初の取り組みを次々に実践して、服地で東京一の売上げを上げるまでに成長させている。

そんな小山さんが義父でもあった社長との確執で、キンカ堂を離れ、商人として第二のステージの幕を開けたのは、昭和35年の2月。場所は、東京北千住だった。当時の北千住には、イトーヨーカ堂の創業店があり、ほかにも小売業では実績のある店が軒を連ね、東京でも有数の激戦地だった。なぜ、小山さんは、北千住に狙いを定めたのか。

「ここが都内最大の激戦地だったからこそ、出店したのです。北千住は激戦地ゆえに、お客さんが沢山集まってきます。そういう強力なお客様誘引力を持つ市場への出店が第一の条件と考えてのことでした」

勝算はあったのだろうか。小山さんは、人が集まるからといって、闇雲に北千住に出て行ったわけではない。出店に際しては、徹底した市場調査を行なっている。

「店を出す前に、私は毎日のように北千住に来て商店街を見てまわりました。たしかに、激戦地ではありましたが、同時にここにも『弱い商品』があることに気付いたのです。既製品や下着類を売る店は沢山あるのですが、弱い商品もありました。それが服地であり、呉服であり、寝具であり、カーテン地であったわけです。服地は北千住であまり売られていない商品であるばかりでなく、私の得意商品でもあったから、これを扱えば、お客様が多いだけに必ず繁盛するとの自信がりました」

結果は、まさに小山さんの目論み通りだった。一年後には大繁盛店になっていたのだ。

服地での成功に満足せずに、次に小山さんがとった策は、ベビー服への進出だった。昭和38年、従来の店の斜め前に位置する12坪の貸し店を借りての出店だった。ベビー用品を扱うようになったのは、12坪という小さな売り場で、適当な商品がなかったためとはいうが、ここにも小山さんならではの考えがあった。ベビーも弱い商品だったと思われるかもしれないが、それは違う。近くのイトーヨーカ堂には50坪程度のベビー売り場があったし、その他の大型店でも売られていた。

小山さんは、大型店のベビー売り場の弱点をつけば勝てると考えたのだ。

ひとつは、立地だ。

大型店のベビー売り場は三階以上のフロアーにあった。客の立場からすれば、これほど不親切なこともない。ベビー服を買いに来るのは妊婦さんかベビー連れだ。いくらエスカレーターがるとはいっても、大儀に違いない。それに比べれば、小山さんの店は、わずか12坪ではあるが、路面店であり、カートのまま入店してもらえるのだ。

いまひとつは、接客だ。

ベビー服を買いに来る客は、商品選びばかりでなく、子育てそのものの相談にも乗って欲しいものなのだが、セルフサービスの店では、それはできない。ところが、小山さんの店は、子育ての経験のあるパートをそろえて、新設丁寧な接客を心掛けさせた。

この戦略も見事なまでに成功し、12坪の店で2億7千万円を売るまでになったのである。

あえて激戦地へでて、隙間をつく、大型店とあえて競合し、その弱点をつく――小山さんの経営哲学は、時代に関係なく通用する。

小山さんが日本一の繁盛店を育てることが出来た理由は、ほかにもくつかある。その話は次回に紹介する。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2008年9月11日 掲載]


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