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「イデシギョー」(ポケットティシュ生産量日本一)と「カイハラ」(デニムの雄)の経営に学ぶ ― その3

提案営業で勝ち残る

ポケットティシュ生産量日本一の「イデシギョー」とブルージーンズ用デニムで国内シェアが50%を超える「カイハラ」。前者は製紙業、後者は繊維産業と、極度に厳しい業界にありながら、両社ともに好業績を上げている。そんな両社には、生産、営業両面にわたって見事なまでの共通項がある。
今回は「カイハラ」ならではの営業戦略を紹介する。

「カイハラ」が拠りどころとしている言葉に、「桃李ものいわざれども下自ずから蹊をなす」という史記の一節がある。桃やすももは何もいわないが、その花や実にひかれて多くの人が集まってくるので、その下には自然に小道ができる、との意味だが、この言葉を、カイハラでは、「優れた製品をつくり続ける」ことで、「選ばれる企業」になると定義づけている。

「カイハラ」はまさに、「優れた製品をつくり続ける」ことで、「選ばれた企業」に成ったのだが、「選ばれたあとの対応」が素晴らしいのだ。一度選ばれたからといって慢心するわけではない。同社の営業マンの役割は、単純な営業活動だけではないのだ。

「東京に営業所がありますが、セールスだけが目的で設けたわけではありません。当社の営業はルートセールスが中心ですから、一度お取引が始まりますと、あとは、市場動向をお知らせするとか、新しい提案をするといった具合に、カスターマーサービスのほうが多いのです。われわれは、デニムを売り始めた頃から、アパレルさんやブランドを持つメーカーに、来春はどうですか、といった話をしていました。
流通として商社を通すものもありますが、基本的には新しい商品の企画を立てて、直接お話をするようにしています。ジーンズは、昔はワーカーの作業着という位置付けでしたが、いまは男女の区別なく、それもかなりファッション化してきましたので、ますます商品開発力、提案力が大事になってきました」(貝原良治会長)

昨年の12月2日、「カイハラ」は、NHKが、毎週日曜日の朝8時半から放映する「経済羅針盤」で紹介されていたのだが、なんとそのときのタイトルは、『素材メーカーがつくる流行』というものだった。番組が取上げたのは、東京の営業マンの日常の仕事振りだ。
まず、映し出されたのは、「カイハラ」の営業マンが、カジュアルウエアの流行の発信地である原宿を中心に、エンドユーザーの嗜好がどう変化しているのかを調査している姿だった。
彼らは、そうした調査の結果をベースに、新しい生地見本をつくり、ときにはデザインまでをジーンズメーカーに提案しているのだ。

貝原会長によれば、一年間で新しくつくる生地見本は700にもなるという。そのうちの7割程度は、ジーンズメーカーに提案されることもなく消え去っていくとも聞く。
日の目を見ない生地見本の多さをさして、「うちは世界一失敗の多いデニムメーカーです」と、貝原会長は、苦笑まじりにいうが、この失敗の多さをよしとする、新しい生地を開発する力で「カイハラ」は顧客の支持をえているのだ。
前々回、「カイハラ」の過剰な設備の話を書いたが、余裕のある設備があるからこそ、年間700もの生地見本を製作できるのだとも指摘しておきたい。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2008年8月7日 掲載]


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