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『庄や』『やる気茶屋』を中心に躍進する大庄の経営に学ぶ-その1

日本を代表する外食チェーンも創業店は6坪だった

大衆割烹『庄や』『やる気茶屋』『日本海庄や』などなど、28の業態を全国に約900店舗を展開するまでになった(株)大庄の経営は実にユニークだ。同社の起業時の姿とその後の成長戦略を2回に渡って紹介したい。

過日、同社の創業者で今も社長を務める平辰社長の話を聞く機会があった。『庄や』を中心とする同社の繁盛ぶりはよく知られるところだが、お話を伺って筆者が興味をひかれたのは、創業店を軌道に乗せるまでの平社長の取り組みだ。経営上のヒントが多々あると思えるので、今回はその話を。

大庄の創業店は大田区池上にあった。6坪の店を借りて、平社長が29歳のときに若鶏焼きの店『とき』を始めたのだ。

新潟県佐渡から上京、サラリーマン生活を2年強送った後、義兄の洋食店の店長を務めていた平社長には、調理の経験はない。

「まあ、焼き鳥なら自分でできるだろうと、仕入先の鶏肉屋に3週間くらい教わりに行って始めたのですが、鶏を捌いて串に刺すのも大変だし、売れ残ると2日でだめになります。恐ろしいなと思いましたね」

思うように客足が伸びない。一日の売上げが3000円程度にしかならないのだ。

「あり地獄にはまり込んだようなものですよ。いずれにしても何とか這い出さないといけないので、できることはなんでもしました。家に帰らないで店に泊り込んで仕込みをやる。午後3時ぐらいに時間が空くと近所の風呂屋に行く。じいちゃんと子供ぐらいしかいないのですが、そこで人の背中を流して焼き鳥屋の宣伝をやりました。

そうすると、帰りに子供をつれて買いにきてくれるのです。町会に少しでも顔が利かないと相手にされなかったですから、近所の掃除もやりました」

そんな努力が効を奏したのか徐々にではあるが客足が伸びてきた。そんなお客さんに評判をとったのが、『とき』のつくねだった。

「私が、鶏肉屋で勉強していたときに、新橋の超一流の料理屋さんに勤めている人が、鶏肉屋をやろうということで、見習いに来ていたのです。その人が教えてくれたつくねが、すごく美味しかったのです。この評判が口コミで広がって、銀座からもお客さんが来てくれました。このレシピはいまも使っています」

平社長は、集客にこれ努める一方で、初期の頃から資金の蓄積にも努力していた。これが今日の地位を築く礎になったのだ。

「自分がなにかやりたい、夢を掴みたいと思っても、お金がなかったらなにもできないんですよ。誤解されそうですが、自分の強い味方というのはお金しかない。保証人が必要だといわれても保証してくれる人は誰もいないのですから。

それで1千円の貯金を毎日やるようにしました。それも、否が応でも逃げることができないように、毎日集金にきてもらうようにしました。3千円の売上げでも1千円、2千円でも1千円の貯金を、苦しみながらも続けました」

1年目は一日3千円程度の売上げだったものが、2年目には3万円、3年目には9万円と、業績はうなぎ登りで伸びた。

貯金も、昭和45年には400万円程度にまで増えていた。

あり地獄から脱出するために、平社長は、まず集客に取り組んだ。近所の人にお客さんになってもらうために、何をすればいいのかを徹底的に考えて実践し、来てもらったお客さんに満足してもらうために、どんな商品を提供しサービスをすればいいのか、満足したお客さんは、口コミで評判を広げてくれることも、平社長は、身をもって経験したのだ。一方で、次の飛躍のための資金作り。これが大庄の経営の基本となっている。
この『とき』での取り組みが、その後の大庄の経営の基盤となっていると考えれば間違いない。(次回に続く)

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2006年10月12日 掲載]


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