Fujitsu The Possibilities are Infinite

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成功に至る道は無数にある

マブチモーターとパトライトの経営に学ぶ

筆者は経営の現場をフィールドワークして30年近くなるが、痛切に感じているのが、「経営の世界では成功に至る道は無数にある」ということ。成功を手にしてきたのは、「自分の会社にとって、自分たちのお客さんにとって最適のシステムを構築してきたところ」といっていい。具体的な例として、小型直流モーターで世界シェアの50数%を持つマブチモーターとパトカーの屋根に付いている回転灯で100%近いシェアを持つパトライトを取り上げて説明したい。

両社は共に、小型モーターを主力に事業を展開してきたが、創業後の軌跡がまったくといっていいほど違うのだ。

マブチは、機能性部品としての小型モーター一筋で好業績企業になり、パトライトは、小型モーターを使用する回転灯・表示灯の製造に力を入れることで成功を手にしているのだ。

マブチの場合、周辺の機器を作らないとの誘いもあった。マブチの営業が売り込みにいくと、モーターだけでなく、周辺の機器も含めて納めて欲しいとの要望が頻繁にあったと聞く。当然のように営業は周辺機器を扱いたいと要望をだすのだが、経営者からはOKがでなかった。その理由を、同社の馬渕隆一会長は次のように説明する。

「1本の錐の上だと、ちょっと乗っかっただけで刺さってしまうが、剣山の上は歩けますよ。マブチは、1本に錐のように、小型直流モーターに特化して、深く入って極めて勝ち残ろうと考えたのです。それと創業からの10数年、自社のモーターに不満がいっぱいありました。もっと、静かに、もっと高性能で、もっと安くというふうに、改善する余地をうーんと残しているのに、わき見をしてはいけないということです」

限られた経営資源を、マブチは、小型モーターの改善に集中的に投資することで、勝ち残ってきたと考えれば間違いない。

いまひとつのマブチの経営上の特徴は、少品種大量生産へのこだわりにある。小型モーターのような機能性部品は、機能さえしっかりしておれば、安い方が競争力はある。安く作る一番いい方法は大量生産であるのだから、そのメリットを最大限に追及すればいいと真淵会長は言う。

一方、小型モーターを、下請け的立場で松下電器産業に納入していたパトライトがとった戦略は違った。松下に一括納入することで、安定した売上げは確保できる。しかし、下請けとしての悲哀もある。

支給された材料の不備が原因で不良品を出し全品回収を余儀なくされたことがあるのだが、このとき、松下の担当者は、製造に問題があるとして、すべての責任をパトライトに押し付けてきたという。

下請けの限界を痛切に感じていたパトライトは、松下電器に小型モーターを納品する一方で、自社製品の開発に乗り出したのだ。結果、誕生した製品が、モーターによる回転と光表示を組み合わせた回転警示灯だった。以後、回転、光表示に音声合成を組み合わせた『警報音響分野』にも進出し、自社ブランド製品の売上げ比率も高めていき、1985年には、松下電器との下請け契約を打ち切ってしまったのだ。いまでは売上げの100%が自社ブランド商品になっている。

生産スタイルもパトライトはマブチとは正反対だ。
パトライトは、生産品目21,000種類と多い上に、一個での受注が55%、2個から9個の受注が30%と、多品種少量生産を徹底することで顧客の支持を得てきたのだ。

同じ小型モーターを武器にしながらも、まったく違う戦略をとりながら両社ともに成功を手にしている。ここに経営の面白さがあると筆者は考えている。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2006年8月10日 掲載]


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