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「右手に感性、左手にそろばん」で、ファッションビジネスの雄に -その2

~「管理」が「感性」をサポートして好業績企業に~

前回、「右手に感性、左手にそろばん」のスローガンのもと、管理会計を導入することで好業績企業になったサンエー・インターナショナルの経営を、同社の三宅正彦社長の言葉を交えて紹介した。今回は、「両手に感性」タイプの人間が、このスローガンをどのようにとらえているかを紹介することで、同社の強さの秘密に迫ってみたい。

三宅正彦社長は、「赤いジャケットを着て出社するような人間に、『そろばん』の勉強をさせるのは大変だった」(前回参照)というが、その代表的な存在が、1976年に入社し、いまは取締役の職にある平岡久人さんだ。

平岡さんは、日本大学の芸術学部で演出を学んだあと、パリに渡り、当地のアルバイト先で垣間見た、デザイナーの高田賢三さんに刺激されて、ファッションビジネスに入ってきたという。デザイナーではないが、入社当時は、まさに「両手に感性」というタイプだった。そんな平岡さんは、「右手に感性、左手にそろばん」という教えを、次のように分析している。

「私自身がちゃらんぽらんでしたが、当時のサンエー・インターナショナルは、烏合の衆というか、業界の不良児みたいな存在でしたよ。あとで、会長(管理会計導入時には社長)が、『潰れるかと思って、夜も眠れないことが何回もあった』と、笑い話としていっていましたが、両手に感性じゃ全部死んでしまうとお考えなったのでしょうね。

しかし、感性がいい商品を生みだすわけですから、感性というエネルギーをどうすればサポートできるかを考えて、数字しかないと思ったらしいのです。管理会計導入の背景にあるのは、『ガラス張り』で『公正』な評価という考えです。デザイナーのオリジナリティや創造力を引き出すのは、成果をきっちり評価することですが、感性を認めるために数字を重視するということですよ。あんなに数字を勉強したのは、生まれて始めてのことでしたが、私は凄く感謝していますし、デザイナーも管理会計でいきいきしてきました。明確に数字で評価されるのですから--」

デザイナーが重要視する数字は、売上高ではなく粗利だと平岡さんはいう。コスト1万円の商品が3万円で売れるブランドになるのか、5万円で売れるブランドになるのか―――その差を生み出すのはオリジナリティしかない。とすると、オリジナリティを発揮すればするほど、利益が出てくるようになる。「感性の対価は収益」(平岡さん)ということになるのだが、その感性をサポートするのが、管理会計だと考えればいいだろう。サンエー・インターナショナルでは、平岡さんのような感性人間ほど、「感性が数字に置き換えられるのは面白い」というのだから、本当に面白いではないか。

一般的に「管理」という言葉は、「感性」とは対極にあるように思われるが、サンエー・インターナショナルでは違う。「感性」というエネルギーを「管理」がサポートしていることを、社員が理解していることが、同社の強さになっている。

ただし、サンエー・インターナショナルでは、あくまでも、「右手に感性」が言葉の先にくる。先に「そろばん」がきたら、「両手に感性」タイプの人間は、能力を発揮できなかったに違いないと、平岡さんは振りかえっている。

ファッションビジネスに限らず、感性を重視しないといけないビジネスは多い。サンエー・インターナショナルの「右手に感性、左手にそろばん」の経営は、すべての企業に参考になると思える。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2003年11月21日 掲載]


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