年金パーフェクトガイド2004
第12回 おさえておこう!平成16年 年金制度改正案のポイント
年金制度改革の関連法が先の通常国会で成立しました。
保険料の負担と年金給付の仕組みが大幅に見直されている今回の改正は、保険料の上限の固定と保険料の収入の範囲内で年金額を自動調整することが大きな特徴となっています。
主な改正事項はつぎのようになっています。
給付と負担の見直し
厚生年金保険料の引上げ 《平成16年10月》
・平成16年10月から毎年0.354%ずつ引上げられ、平成29年度に18.3%で固定。(現在13.58%)
国民年金保険料の引上げ 《平成17年4月》
・平成16年10月から毎年280円ずつ引上げられ、平成35年度からは月額16,900円で固定。(現在13,300円)
基礎年金国庫負担割合の引上げ 《平成16年10月》
・基礎年金の給付は保険料だけで賄っているわけではなく、その3分の1は国庫負担(税金)で賄われています。平成16年10月からはその国庫負担率が2分の1へと引上げられます。
年金額の調整(マクロ経済スライド) 《平成16年10月》(注)実際の適用は平成17年4月から
・年金額は通常の場合、一人当たりの賃金や物価の伸びに応じて増えていきます。
しかしながら、年金を支える力の減少や平均余命の延びを年金額の改定に反映させ、年金額の伸びを一人当たりの賃金や物価の伸びよりも抑え、年金額の調整を行います。
(「平均賃金の上昇」から「現役人口の減少」と「平均余命の延び」を差し引いた率で毎年変更されます。)
給付水準50%の確保 《平成16年10月》
・標準的な年金受給世帯(夫が平均的収入で40年間就業し、妻はその間全て専業主婦)の給付水準を、現役世代の平均収入の50%を上回る水準に確保。
生き方、働き方の多様化への対応
第3号被保険者期間についての厚生年金の分割 《平成20年4月》
・被扶養配偶者をもつ第2号被保険者が負担した保険料は、基本的に夫婦が共同して負担したものと認識されます。
夫婦が離婚した場合など、第3号被保険者(被扶養配偶者)は第2号被保険者の厚生年金を2分の1に分割できるようになります。
離婚時の年金分割 《平成19年4月》
・離婚した場合、当事者の合意又は裁判所の決定があれば、婚姻期間中の厚生年金の分割を受けることができます。(1/2が上限、割合は夫婦間で協議)
高齢期の遺族年金の支給方法の変更 《平成19年4月》
・配偶者を亡くした場合、残された遺族が遺族年金を受給する場合、自身の厚生年金が掛け捨てになるのを避け、自分自身が納めた保険料をできるだけ年金額に反映させるため、まず自分の老齢厚生年金を全額受給したうえで、遺族厚生年金との差額を受け取ることのできる仕組みとなります。
子のいない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金の見直し 《平成19年4月》
・子のいない30歳未満の遺族配偶者への給付は5年間限りとなります。
中高齢寡婦加算の支給対象の見直し 《平成19年4月》
・中高齢寡婦加算の支給対象が、配偶者死亡時35歳以上から40歳以上へ限定されます。
次世代育成支援の拡充 《平成17年4月》
・育児休業中の厚生年金保険料免除措置の対象となる子どもの年齢が1歳未満から3歳未満へと延長されます。
・短時間勤務を選択して給与が下がっても、子どもが3歳になるまで出産前の給与水準で保険料を納めたものとみなされるようになります。
60歳台前半の在職老齢年金制度の改善 《平成17年4月》
・在職中の老齢厚生年金が一律2割カットされる仕組みが廃止されます。
65歳以降の老齢厚生年金の繰下制度の導入 《平成19年4月》
70歳以上の被用者の老齢厚生年金の給付調整 《平成19年4月》
・世代間、世代内の公平を図るために、70歳以上の老齢厚生年金について、60歳台後半の年金受給者と同様の仕組みで年金が調整されます。
障害基礎年金と老齢厚生年金との併給 《平成18年4月》
・障害を持ちながら働き続け、厚生年金保険料を納めた場合、65歳以降に障害基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせの選択が可能となります。
障害基礎年金等の保険料納付要件の特例措置の延長 《平成18年4月》
・障害発生等の1年前に保険料の滞納がなければ、障害基礎年金等の受給を可能とする特例措置を10年間延長。(本来は被保険者期間の2/3以上保険料を納付していること等が必要です)
第3号被保険者の特例届出の実施 《平成17年4月》
・第3号被保険者となっているのに届出を忘れてしまっている場合、本来2年分しか遡れませんが、特例的に2年前以前の期間の届出が認められます。
国民年金保険料の未納対策、年金個人情報の通知
多段階免除制度の導入 《平成18年7月》
・現在の保険料免除制度「全額免除」「半額免除」に加えて、「3/4免除」、「1/4免除」の段階を追加し4段階とします。
若年者に対する納付猶予制度の創設 《平成17年4月》
・失業等で低所得の若年者が所得の高い世帯主(親)と同居しているときは、保険料免除の対象となりませんが、20歳台の人が将来保険料を負担できることになった時点で追納できるようになります。(10年間の時限立法)
保険料免除申請の遡及 《平成17年4月》
所得情報の取得 《平成16年10月》
年金個人情報の定期的な通知(ポイント制) 《平成20年4月》
・保険料の納付実績と年金の見込額が定期的に本人に通知されるようになります。その際、1人ひとりの保険料納付実績を点数化する「ポイント制」を導入します。
企業年金の充実・安定化
厚生年金基金の免除保険料率の凍結解除 《平成17年4月》
厚生年金基金の解散の特例措置 《平成17年4月》
確定拠出年金の拠出限度額の引上げ 《平成16年10月》
確定拠出年金の中途引き出し要件の緩和 《平成17年10月》
企業年金のポータビリティの確保(年金通算措置) 《平成17年10月》
年金積立金の運用
年金積立金管理運用独立行政法人の創設 《平成18年4月》
少子高齢化が進行し年金問題が加熱する中で、若年者層では高齢者層に比べてあたかも「損をしている?」かのような「世代間」の不公平感を主張する声や、「本当に頼りになる制度なの?」と不安を訴える声があるかもしれません。
でも、本当に年金制度がなかったらどうなるのでしょうか。
産業構造が変化し、都市化、核家族化が進行、共働き家族も増加するなどライフスタイルの多様化も進んでいる日本において、これまでのように家族内の「私的扶養」によって高齢となった親の生活を支えることは実質困難といえます。
そこで、社会全体で高齢者を支える「社会的扶養」が必要不可欠となります。公的年金制度は本来、このような「社会的扶養」を基本とした仕組みです。
このように、年金制度は給付を受ける高齢者だけでなく、若い世代にとっても不可欠なものとなるのではないでしょうか。それだからこそ、年金本来の意義、役割が正しく反映され、私達が安心して生活し、老後を迎えられるような年金制度の改革、運用を期待したいものです。
社会保険労務士 米田 聡美
[2005年4月22日 掲載]
