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新規事業・起業家支援「インキュベーション」

第8回 今後の課題と展望

北米インキュベーターは、2005年において27,000社以上の新興企業を支援し、10万人以上の常勤労働者の雇用を創出、約2兆円の売上を生み出しました。
2006年10月時点での我が国インキュベーション施設への入居企業数は約2,400社であり、ここ2年間に卒業企業が増えたと云っても年間500社程度です。

米国と我が国を比較した場合に、現状は正に桁違いと言うほかありませんが、その桁違いのギャップこそが我が国のビジネス・インキュベーション(以下BI)に対する今後の課題と云えるでしょう。我が国のBIに関する課題は次のとおりです。

<1>起業家自身を含む我が国の創業環境

米国では開拓者精神に富む高学歴の若者が創業を志すケースが多いです。またいわゆるエンジェルやベンチャー・キャピタル等の援助も期待できます。1拠点当りのインキュベーション・マネジャー(以下IM)の人数も多いです。我が国では特別な訓練を受けた起業家は少なく、地域全体が積極的に新規創業企業の創出を支援出来る環境にあるところも多くありません。

<2>準BI施設のレベルアップ

JANBO の昨年度調査でインキュベーター4つの定義に該当した施設は190施設でした。この他に、IMがいない施設(91)、IMがいても入居基準や卒業基準のない施設(42)など準BI施設と呼ぶべきものが多数存在します。貸しオフィススタイルから脱却して施設自身のレベルアップを図る必要があります。

<3>IMに関する課題

IMとしての勤務年数は3年未満が約60%であり、平均2年7ヶ月と勤務年数が短いです。地方自治体が設置した施設には2年程度の出向でIMが派遣されるケースが多い他、待遇面の問題(年収250万円未満29.9%、250~500万円31.7%)もあるようです。
地域に定着し、地域に溶け込んで豊富なネットワークを持つIMでなければ、様々な難問を抱えるクライアントの面倒は見切れないでしょう。入居中に受けた支援の中で、受発注先の紹介や販路開拓・販売営業等の支援効果に比較的厳しい評価がなされているのは、この間の事情を反映したものと推定されます。

<4>ポスト・インキュベーション施策の展開

メイン・インキュベーション施設を卒業して企業として独立した場合でも、経営基盤はまだ脆弱であり、事業展開に必要な経営資源の確保も容易ではありません。地域の雇用や税収を速やかに増やし、より効果的な地域貢献を果して行くためには、卒業後も継続的な支援が必要です。
ポスト・インキュベーションの充実を望む声が大きくなっています。

上記の如く我が国のBIについては数々の課題が存在しますが、その解決のために地道な努力がなされつつあります。企業家自身のレベルアップについては、多くの大学で創業に関する教科のみならず専門コースも設けられて来ました。またJANBOのIM認定者も500人に増えました。4項目の定義をクリアするBI施設も全国47都道府県にほぼ設置されました。

今後は地域コミュニティー全体が、BI を核として新事業創出に取り組んで行くことが求められます。その取り組みの如何によって成果には大きな差が生ずることは当然であり、むしろ積極的な地域間・都市間競争が我が国産業経済の活性化の源泉になって行くと考えられます。

魅力的な「まち」とは何でしょう。少なくとも住民にとって働き甲斐のある職場の存在がその根底にあらねばなりません。BIはその中心として機能しながら発展して行くでしょう。

出典:NBIA,(財)日本立地センター/JANBO

中小企業診断士 中山 和彦
[2008年4月10日 掲載]


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