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最新コーチングの極意

第6回 コーチングのポイント(3) - コーチングを成功させる5つの究極ポイント

最終回では、プロのコーチとして社内社外の数多くの人たちをコーチングした経験から、部下へのコーチングを成功させる究極のポイントをご紹介しましょう。

コーチの役を演じきる

第1回目にもお話ししたように、コーチングをするときはコーチの衣装に着替えた気持ちで望みます。大事なのは、着替えたらその役を演じきることです。中途半端に普段の自分を出してはいけません。「コーチだったらどのようにするのが適切だろうか?」と頭の中でコーチ像を描きながら、それを再現してゆくのです。演じるのですから、疲れます。実は相手もかなり疲れるのです。ですから会話をするときはあまり長時間にする必要はありません。短い時間でテンポのよい会話を行ったほうが、コーチングの効果は高まります。

場合によっては、部下に明確に「今から30分間コーチングをしよう」と宣言して行うのもよいでしょう。そうすれば、あなたが普段のあなたとは違っていても部下は違和感を持ちません。
一度プロのコーチにコーチングしてもらって、どれだけコーチ役に徹しているかを観察するのもよい勉強になります。

主役は相手であることを忘れない

コーチングの主役は自分ではありません、あなたの部下です。これを間違えてしまうと、コーチングではなく「リーディング(誘導)」になってしまいます。コーチングは部下の価値観や主体性を尊重しながら育成や指導をするものであり、あなたのやり方や一般的な方法を押し付けるものではありません。それがコーチングの他の指導法と大きく違う点であり、他の指導法では得られないたくさんの効果を生み出すのです。もちろん、コーチングだけがベストというわけではありません。他にも有効なツールはたくさんあります。しかし、相手を主役としていく方法の良さを享受するにはコーチングはもっとも簡単で効果的な方法と言えます。

コーチングは効果が出るのに少し時間がかかります。相手を主役にするからこそのデメリットです。しかし時間をかけて相手を主役にしつづけるからこそ得られる成果というものがあるのだ、ということを忘れないでください。

相手は自分と違うことを受け入れる

あなたがよいコーチとなれるかどうかの境目は「相手を受け入れられるかどうか」にあると言えます。当たり前のことですが、人間は百人百様でいろいろな考え方や感じ方をするものです。大事にするものや、得意な分野も違います。
ところが相手が部下の場合、同じ環境で同じ分野の仕事をしているわけですから、ついつい「相手も自分と同じように考え、感じるはずだ」と思いがちです。場合によっては「~であるべき」というべき論をベースに部下を見てしまうこともあるでしょう。
「相手が自分と同じである」「~すべき」という観点のままコーチングをしても、それは相手の能力を引き出すことにはなりません。
「部下は自分と違って当たり前。だから部下なりの考えや価値観を尊重して、結果的に組織の目的・目標に近づくにはどうしたらよいかを、部下を主体にして考えてゆこう」というスタンスが、コーチングには必要なのです。

ビジネス・コーチングとパーソナル・コーチングの違い

ビジネス・コーチングとは、「ビジネスの関係がある相手(部下・上司・取引先等)に対して行なうコーチング」のことです。これに対してパーソナル・コーチングとは「コーチとクライアントという関係の相手に対して行なうコーチング」のことです。ビジネス・コーチングもパーソナル・コーチングも同じスキルを使うのですが、その相手が異なるために少し留意しなければならないことが出てくるのです。ここではそのうちの2つをお話しします。

1つ目は利害関係の存在についてです。
ビジネス・コーチングではコーチをする側とされる側には何かしらの利害関係が生じます。部下の失敗は上司の責任でもある、というような具合です。したがって、コーチをする側が、相手により大きな結果を求めてしまいがちです。ビジネス上でのことなのである程度は仕方の無いことなのですが、そればかりが全面にでると、コーチングそのものが機能しなくなってしまいます。

2つ目は力関係の存在についてです。
ビジネス・コーチングでは、上司と部下、先輩と後輩、などのように上下関係や力関係のある間柄でのコーチングとなります。したがって、力の強い側が力の弱い側(例えば上司が部下)にコーチングをした場合、相手は自分の立場が不利にならないように気を使います。例えば、上司が部下にコーチングをすると、部下は
「自分の発言によって自分の評価が下がってしまわないか?」
「自分の考えが上司の考えと違うことによって、これから先仕事がしにくくならないか?」
「こんなことを言ったら、上司は怒ってしまわないだろうか?」
というようなことを気にしながら話すことが多くなってしまうのです。したがって、コーチをする側はパーソナル・コーチング以上に、「相手に安心感を与える」ようにしなければなりません。つまり、「どんな話をしても大丈夫」ということをことあるごとにアピールする必要があるのです。

習うより慣れろ

このシリーズで、いろいろなことを学んでいただいたと思います。また、コーチングに関する書籍を読まれたりセミナーに参加されたりした方もいらっしゃることでしょう。
私も、コーチングに取り組み始めたころはたくさんの書籍を読んだり(まだ日本にはほとんどコーチングの本がなかった時代なので原書を探したり)、海外のコーチについたりして「習う」ことに多くの時間をかけました。
しかし、途中で気がついたのは、やはり「慣れる」ほうが大事であるということです。もちろん、基礎は抑えておく必要はありますが、プロになるのではないのですから、職場で使える程度の知識で十分です。あとは、どれだけ実践して行くかで、コーチングがあなたの組織の役に立つかが決まります。先述したようにコーチングの効果がでるまでは少し時間がかかりますが、今までにないミラクルが起こることもしばしばです。どうか、これをスタートラインとして、末永くコーチングを活用していただき、ご自身にとっても部下の方にとってもさらに素晴らしい組織にしていただければと思います。
本シリーズをお読みいただきまして、ありがとうございました。

中小企業診断士 黒須 靖史
[2008年11月13日 掲載]


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