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第6回 キャッシュフロー経営の実践

1.フリーキャッシュフローを活用した経営指標

ここまで、最新キャッシュフロー経営というテーマにもかかわらず、売上高対利益率や流動比率など、かねてからよく使われていた経営分析指標のみを使い、キャッシュフローを使った経営指標については言及してきませんでした。それは、キャッシュフローが増減した原因を特定するためには、これまでのような経営分析のほうが直接的でわかりやすいからです。例えば、営業キャッシュフローマージンという指標があります。営業活動によるキャッシュフロー÷売上高×100(%)で算出でき、キャッシュフロー版の売上高営業利益率とも言えます。この指標は、何パーセントを維持すべきといった性質のものではなく、前期と比較する、あるいは他社と比較して大きいほうがいい、という指標です。この指標は、滞留在庫や滞留売上債権が発生した場合や、粗利益が低くなったり、固定費が売上高の伸び以上に増加する場合などに悪化する、と言われています。原因が在庫か売上債権なのか固定費なのか粗利益なのかを特定するには、結局、売上高対総利益率や売上高対費用比率などの財務分析に戻ることになります。それならば、直接法によるキャッシュフロー計算書を使えば、費用の増減を直接的に把握できるのではないか、という意見もあるかもしれません。確かに、仕入費用や営業費の内訳を詳細に把握すれば、支払った費用の増減が一目瞭然です。ただし、この費用は該当する期間にキャッシュで支払ったものです。キャッシュベース行った利益計算は、当然のことながら費用と収益の対応関係を無視しているので、どの費用が収益に比して余計にかかっているのか、という判断はできません。
しかしながら、キャッシュフローを使った経営指標が不要なのではありません。これらは経営状況を「モニタリング」する指標として活用すべきです。

2.経営活動のモニタリングを行う

キャッシュフロー経営を実践するには、年に1度だけキャッシュフロー計算書を作成し、過去1年間の反省をして次の期に対策を講じるのでは遅すぎます。少なくとも、毎月のペースでキャッシュフロー計算書を作成し、それに基づいて営業キャッシュフローマージンなどのモニタリング項目をチェックする必要があります。そして、おかしいと思う兆候が見て取れたら、先の経営分析を行うことにより原因を特定し、適切な対応をとる必要があります。このようなモニタリングが有効に機能するには、月次ベースで決算を行う必要があります。売上と費用が期間対応していない状態での貸借対照表と損益計算書は正確な経営状態を表現していません。正確でない貸借対照表と損益計算書から作成したキャッシュフロー計算書も、当然正確ではありません。そうなると、真の原因特定ができずに、間違った対応をしてしまうことが考えられます。キャッシュフロー経営を実践するには、月次決算の正確性が必要不可欠です。さらに、軌道修正に余分なコストをかけないためにはスピードも重要になってきます。会社の数値を正確にタイムリーに把握できる体制が必要です。

3.キャッシュフロー経営の実践

定量的にキャッシュフローの減少要因が把握できたとしても、数値面からだけのアプローチで対応策をとっていくことは返って改善につながらない場合もあります。例えば、在庫の時にも述べましたが、財務面だけを考えて在庫削減を図ると、欠品やリードタイムの長期化などで顧客満足を低下させ、売上高の減少を招くかもしれません。売上減少はすなわち利益の減少を意味しますので、せっかく在庫が減っても営業キャッシュフロー全体で見るとキャッシュが減少するという結果になる可能性もあります。同様のことは費用の削減にも言えます。原価を減らした結果、品質が低下したら意味がありませんし、人件費削減を行う場合には従業員の士気低下に注意が必要です。キャッシュフロー経営とは、企業のフリーキャッシュフローを最大化することが目的なので、キャッシュという数値ばかりに注目しがちです。それは、売上高対利益率などの経営分析でも同じことです。しかしながら、結果としての数値の裏には、従業員への働きかけ、顧客・市場への働きかけといった、数値では測れない活動があります。定量的な側面と定性的な側面の両方からアプローチすることがキャッシュフロー経営を実践していく上での成功要因と言えるでしょう。

中小企業診断士 那智久代
[2007年3月27日 掲載]


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