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実践!ビジネス処世術

第6回 トップマネジメントって何?
~トップと現場の距離を縮めるには~

経営企画部の管理職をしていたFさんは、急遽、社長に就任しました。というのも先代の社長が倒れ、帰らぬ人となったからです。Fさんは先代の血縁者ということ、経営企画の管理者で社の経営状況に詳しかったというのが就任した理由です。しかし、就任してからというもの業績がなかなか伸びません。それに社内も何だかまとまりが感じられません。
Fさんは幹部を招集して怒鳴りました。「一体、どういうことなんだ!予算では達成する筈なんだぞ。」そう言うと、営業部の部長が立ち上がりました。「社長は現場をご存知なのですか。」Fさんは驚き、こう言い返しました。「何言ってるんだ、それはお前らの仕事だろ!トップは、現場の仕事ではなく、会社全体の戦略や長期計画を練ったり考えたりするのが仕事だ!」幹部社員たちは、冷ややかな視線を社長に向けました。

トップの仕事ってそれだけ?

「トップは、現場の仕事ではなく、会社全体の戦略や長期計画を練ったり考えたりするのが仕事だ!」なんて、経営学の本によく書いてありそうなフレーズです。確かに、トップの仕事は、資金繰りや銀行や投資家に対しての事業計画書を作成したり、事業の戦略を練ったり、それに基づいての意思決定など、会社の根幹を担う重要な仕事ばかりです。

しかし、トップの仕事ってそれだけなのでしょうか?極論を言えば、トップの仕事は、企業の利益を出すことです。それには、株価、収益力、顧客満足度の高さ、ブランド価値。ほかにも、オンリーワン技術や新しい価値を生み出す独自性、従業員のやる気も利益を出すには重要ですね。しかし、ここで挙げた物差しは、企業活動の「結果」に過ぎません。本当に「強い企業」にしたいのならば、実体を理解することです。

有能な人には大きな落とし穴が・・

Fさんは、経営に関しては有能ですが、管理部門にいたせいか現場のことを何も知りません。いくら組織の求心力となるビジョンを掲げ、合理的な経営戦略を作っても、実行できる組織能力がなければ、絵に描いた餅となります。
そして、「有能な人」には落とし穴があります。何故なら、有能であっても全ての分野にわたって有能ではないからなのです。自分が上手にできる分野、Fさんで言えば、経営企画は誰にも負けないほど能力がある。そうすると経営企画のみを大事に思い込んでしまって、自分があまり才能を発揮できない分野は、重要ではないと思い込みがちなのです。

現場を軽んじて見ていたFさんに、「現場」を見直していただきたいと思います。
現場の社員は、自ら問題を発見し、自ら解決する現場の能力があります。決められたルーチンワークをこなすだけでなく、強い当事者意識を有しています。そして、強い現場、強い組織であるには、全員が理解し参画している組織化された力が重要です。仕事は業務連鎖としてつながっており、自分だけでできることは極めて少ないからです。

主役はあくまでも現場であり、それを本社や経営層がサポートするという構造が、強い企業の条件といえます。それには、まず、Fさんからすすんで現場に出向いて、例えば、顧客との折衝、あるいは細かい生産計画の策定、その他個別的かつ具体的な、いわゆる現場レベルの仕事を社員と一緒になってトライしてみましょう。その中から、様々な問題点が見えてくるでしょう。そして、その問題に対して現場と議論し、トップとしてより良い方向にいくよう、現場をサポートする体制をつくること。そうすることにより、社員とコミュニケーションがとれ、今まで以上にまとまった組織へと変貌していくでしょう。

Fさんもそのうち、現場の社員から「同じ釜の飯を喰う仲間」と思われるといいですね。

経営コンサルタント 菊地 徹
[2005年12月8日 掲載]