ウェブマーケティングの新潮流
~業績アップにつながるホームページの新常識~
第4回 ユーザと手を取り合う「コミュニティー・マーケティング」
~その1 コミュニティーへの仕掛け編~
「書きたい」心理を刺激することがカギ
マス広告を「メディアにお金を払って、多数のユーザにまとめて宣伝する」ものだとすれば、コミュニティー・マーケティングにおける口コミは、「ユーザ一人ひとりがドミノ倒しのように情報を伝えていく」ものです。一つひとつのアクションはきわめて小さいけれども、それが次々と連鎖することで、大きな効果が生まれます。カギは、お金をかける代わりにユーザの「書きたい」心理をいかに上手く連鎖的に刺激できるか、という点にあります。
そこで、ユーザの心理を想像してみましょう。ブログやSNSを持っているユーザは、いつも何か書くネタはないか、と探しています。なぜなら、ネット上のコミュニティーでは「何か書く」ことが存在証明であり、何も書かないと、その場に存在していないのと同じことになってしまうからです。どんなものを「書きたい」と思うのかは様々ですが、一般的には、それを書くことで「カッコいい」、「センスがいい」、「面白い」といったプラスの印象を他のユーザに与えたい、と考える人が多いようです。また、有用な情報、楽しいコンテンツを「みんなに教えたい」という親切心を持つ人も多いでしょう。
つまり、ユーザが「これを紹介したら自分は『カッコいい/センスがいい/面白い』と思ってもらえそうだ」と感じられるコンテンツ、そして皆に教えたくなるような質の高いコンテンツを発信すればいいわけです。具体的にはどのようにすれば良いのでしょうか?
それには大きく分けて2つの方法があります。まずは「何らかの仕掛けによって、コミュニティーの外から『書かれる』ことを促す」方法、もう一方は「自身もコミュニティーに入り込み、自ら『書く』ことをする」方法です。
まずは前者の「何らかの仕掛けによって、コミュニティーの外から『書かれる』ことを促す」方法について解説します。
何かを語らずにはいられなくなる仕掛け――「バイラルCM」など
仕掛けの方法その1は、ユーザの好奇心を刺激し、ブログや日記で紹介したくなるようなコンテンツを自社のホームページで提供する、というものです。あるユーザが「あのホームページにこんなものがあったよ」と紹介することで、仲間が次々と自社ホームページにアクセスし、コミュニティー内で「面白いね」、「よく見つけたね」と会話が膨らみます。こうした中で、自社や商品の認知を高められるわけです。
代表的なのが、何かを語りたくなるような刺激的な内容のムービーをインターネットで流す「バイラルCM」。テレビCMよりも時間の制限や内容の規制が緩いため、工夫を凝らす余地が大きくあります。また、ゲームやクイズなどで、続き物として順次新しいコンテンツを追加し、コミュニティー内の会話を持続させ、再訪を促す方法も有効です。
最近ではテレビCMでキーワードを流し、そのキーワードで検索されたサイトでバイラルCMを見せる、という合わせ技が盛んです。富士通では、2006年夏モデルのFMVでは「地底人は誰?」、2006年秋モデルでは「ウサタクの秘密」というキーワードを使って検索させるテレビCMを放映。キャンペーンページでは地底人の正体を探りながらFMVに詳しくなるクイズや、“ウサタク”の部屋を探索しながらFMVの機能を知るムービーなどを提供し、話題作りと製品の情報提供を行いました。
この手法の成否のカギは、ユーザの好奇心や知識欲を刺激し、書きたいと思わせる「クリエイティブ」ができるか。そして、紹介される文脈に反応するユーザが、見込み客となってくれるかどうか、という2点にあります。
バイラルCMはマス広告よりもずっと少ない予算で作れますが、一方で、紹介されて口コミに乗らなければ宣伝効果はきわめて低い、というリスクを持ちます。また、単に「面白い」ものを作っても、それを面白がってくれる層が見込み客と重ならなければ、やはり宣伝効果は低いものになってしまいます。例えばFMVの場合、パソコンを買うことのメリット――豊かなライフスタイルや、情報ツールとしての便利さ、といった要素を盛り込みつつの「面白さ」を狙わなければならない、という難しさがあります。
ビジネスとしての提携――「アフィリエイト」
仕掛けの方法その2は、ビジネスとしてブログや個人ホームページの運営者と提携する「アフィリエイト」です。提携者に商品を紹介する記事を書いて自社ホームページにリンクを張ってもらい、そのリンクを辿って来たユーザからの成約があったら一定の報酬をその提携者に支払う、というのがアフィリエイトの基本的な仕組みです。
魅力は「ストーリー作り」に提携者の力が借りられる点。さらに提携者と企業の間で「売れれば儲かる」という目標を共有できるので、モチベーションが高くなります。一方で、売り上げに対して一定率の報酬を支払うシステムなので、利幅の薄い商品には使いにくい、という難点もあります。
大手のオンラインストア「アマゾン」、ショッピングモール最大手の「楽天市場」など、ECサイトの大多数はアフィリエイトを提供しています。従来、個人のブログで書籍やCD、DVDなどの紹介をしたくても、表紙やジャケットの写真を掲載することは権利問題に抵触すると考えて、遠慮する人が多くいました。ところが書籍やCD販売サイトのアフィリエイトを利用すれば、権利問題をクリアして写真が掲載できます。報酬が得られるだけでなく、こうした面でも提携者は恩恵を受け、語りやすくなるのです。
楽天
http://www.rakuten.co.jp/
約2千万点の取り扱い商品があり、購入した商品のレビューや、友達にメールで紹介することでポイントが入るなど、PCに詳しくないユーザでも手軽に「語る」ことができるシステムになっている
「ブログ」を使って、ユーザと同じ目線でコミュニケーションする
今回ご紹介した手法は、企業がコミュニティーと一定の距離を保ちつつ、コミュニティーに働きかける方法でした。次回は、企業もユーザと同じ目線に立ち、「ブログ」を使ってコミュニケーションを行う手法を解説します。
企業の宣伝・広報担当者によるブログや、開発者が直接メッセージを伝えるブログ、社長が個人として運営する「社長ブログ」などがすでに登場しており、企業の公式発表のような堅苦さがない、独特の距離感でユーザと接触できるツールとして受け入れられています。この新しいツール「ブログ」ならではの特性や活用事例を、じっくりとご紹介します。
バイラル・マーケティング、バズ・マーケティング
バイラル(Viral)とは「ウイルス性の」という意味で、ウイルスが周囲に次々と感染していくように、口コミを広めていくことを表す。バズ(Buzz)とは「噂」、「ざわめき」といった意味を持つ言葉。どちらも「口コミマーケティング」を表す。
ナノ・マーケティング
多数の消費者を対象とする「マスマーケティング」の対義語として、個人個人をターゲットとしたマーケティングを表すため、極小単位(10億分の1)の「ナノ」を付けた言葉。「パーソナルマーケティング」等とも言われる。
ブログ
世間一般の認知としては「日記を書くための新しいサービス」。掲示板に書き込むような感覚で記事を書き込めるので、素人でも簡単にコンテンツが作成でき、作られたページはSEOに有利な構造をしているのが特徴。日記だけでなく、自社のPRやユーザへの情報提供など、さまざまなコンテンツの作成にも有効。
SNS(ソーシャル・ネットワーキングサービス)
友人・知人との人間関係を構築していくことを主なコンセプトとし、日記機能、メッセージ機能、特定のテーマで集まるコミュニティー機能などを持ったサービス。
バイラルCM
ウイルスのように、周囲に話題が広がることを期待して作られた宣伝ムービー。テレビCMよりも諸々の規制が緩いネットを利用して、刺激的な内容の動画を流し、口コミでの宣伝効果を狙ったもの。
アフィリエイト
ネットショップやオンラインサービスと、個人サイト等が「提携(アフィリエイト)」し、個人サイトでショップやサービスを紹介してもらい、売り上げや成約があったときに紹介者に報酬を支払う、という広告の仕組み。
著者プロフィール
- 小林祐一郎(こばやし ゆういちろう)
ライター - IT企業勤務の傍ら、ライターとしても活動。
会社の業務では事業者視点から、ライターとしては一般ユーザーの視点からネットと関わり、「普通の人」の幸せに繋がるインターネットのあり方を模索している。
【近著】
Internet Watch連載「Web2.0 超入門講座(インプレス)」
単行本「Web2.0超入門講座 初心者でもよくわかる『これからのWeb』のすべて(インプレス)」
[2007年2月1日 掲載]
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