ウェブマーケティングの新潮流
~業績アップにつながるホームページの新常識~
第1回 「ホームページ」の常識が変わった
会社の連絡先や業務内容などを紹介するホームページを持つのは、今や当たり前の時代。しかし、多くのホームページはパンフレットを紙からデジタルデータに移したに過ぎず、 “インターネットならでは”のものではありませんでした。もっと“インターネットらしさ”を活かそう、ということは以前から言われてきましたが、具体的な“らしさ”はなかなか見えず、成功事例も比較的小さなものに留まっていました。
ところが近年、「グーグル」や「ミクシィ」のような大きな成功例が現れたことで、その“インターネットらしさ”に多くの注目が集まってきています。最近では「ウェブ2.0」という言葉がブームになっており、従来からの「ホームページ」の常識が、大きく転換する時を迎えています。
このような時流の中、中堅企業においても、パンフレットをデジタル化しただけのホームページでは、勝つことはできません。これからの時代を見据え、確実に利益に繋げるホームページ運営について、これから6回に渡ってご紹介します。
インターネット環境が変わり、ユーザーの行動が変わった
ホームページの常識が変わった、とされる要因は複合的なものですが、中でも最大かつ直接的な要因として考えられるのは、ネットユーザーの行動の変化です。
2000年代に入り、一般家庭にインターネットのブロードバンド常時接続環境が広く普及しました。定額で使える高速な常時接続環境が手に入ったユーザーは、課金を気にせずインターネットを利用するようになり、利用時間が増えていきます。インターネット人口も右肩上がりで増え続けており、2005年末で8,529万人。多くのユーザーが長時間インターネットを使うようになった、というのが大きな変化です。
この、長時間インターネットに接続しているユーザーたちは、いったい何をしているのでしょうか?
ユーザーは「検索」と「コミュニケーション」をしている
彼らがしている行為のひとつは、大きな意味での「情報収集」です。情報収集の入り口としては、「検索エンジン」が使われています。検索で利用されたキーワードをランキング形式で公開している検索エンジンがありますが、そこからは、その日のニュースになった人名や商品名などが大量に検索される、という傾向が見て取れます。
より小さな時間軸に切ってみると、テレビに登場した瞬間にタレントの名前や飲食店名などの検索数が上昇する、という現象も見られ、テレビとパソコンの両方をつけて「ながらインターネット」をするユーザー像が浮かびます。

テレビなどで見た言葉を検索エンジンで検索し、表示結果を上位からクリックしていく、という行動を取るユーザーが多い。検索機会の多いキーワードで結果の目立つ位置(上位)に表示されることが、ホームページの集客増に繋がる
また、最近では「検索キーワード」を、時事を語る素材として扱ったテレビ番組も登場しています。これは、検索という行動が世の中のトレンドを反映していることの裏付けだと言えるでしょう。
かつて、タレントのみのもんた氏がテレビの健康番組で紹介した食品は、その日のうちにスーパーからみんな売れてしまう、と言われたことがありました。今のネットでは、テレビの健康番組で紹介された健康食品が一斉に検索され、それを販売しているオンラインショップに注文が殺到する、という現象が日常的に起きています。
もうひとつの行為は「コミュニケーション」です。人間は日常的にコミュニケーションをする動物で、いわゆる「井戸端会議」もコミュニケーション手段の一種。メールや電話も同様です。ネットユーザーの間では、そこに「ウェブ上で日記(など)を書く」というコミュニケーション手段が加わっている状態です。

SNSのmixi(ミクシィ)は、友達が書いた新しい日記や、自分の日記に書き込まれたコメントがすぐに分かるユーザーページが特徴。新着記事を求めて1日中パソコンの前に座っている「mixi中毒」ユーザーもいるという
近年ではブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)など、無料で使える高機能なコミュニケーションツールが多数登場しており、2006年3月の段階で、ユーザー数はブログ868万人、SNS716万人と言われています。のべ約1,600万人が日常的にウェブ上に日記を書いていて、そこに友人やネット仲間がコメントを書き込み、コミュニケーションが行われているのです。
総務省の「平成17年版 情報通信白書」によると、彼らが運営しているブログの内容は「自分自身の生活日記」が61.3%、「趣味、スポーツ、映画、ドラマ、ペット」が23.6%と、言ってみれば他愛のない内容がほとんどです。
それがなぜ、企業のホームページのあり方に影響を与えるのでしょうか?
「日記」は「口コミ情報」である
ユーザーのコミュニケーションが、企業のホームページのあり方にどう影響を与えるのか、ペットフードの製造会社を例として考えてみましょう。
ペットについてブログを書く人たちは、ペットの写真を自慢したり、飼育に関する試行錯誤の記録や、日々の出来事を主に書いています。そんな彼らが自社のペットフードを買ったとします。彼らは商品名を挙げて、「うちの子のお気に入りになりました」とか、「ぜんぜん食べてくれませんでした、これはダメですね」などとブログに書くでしょう。特に製品を批評しようと意図しているわけではありません。ただ素朴な感想やメモとして、そのようなことを書くのです。
マスメディアの情報が飽和している現代は、ユーザーのリアルな体験談による「口コミマーケティング」が強い時代だ、とよく言われていますが、こうしたブログはまさに「口コミ情報」に他なりません。実際に生活している人ひとり(とペット)の背景を持ったブログの文章は、きわめて強烈なリアリティを持った口コミ情報となり、ブログの読者にヒットします。ブログの内容を「自分自身の生活日記」とした人たちもまた、大抵はどこで何を食べた、今日は何を買った、といった「口コミ情報」になり得る話を書くでしょう。
個人のブログの読者など、たいていは1日あたり数人~数十人程度です。マスメディアほどの影響力はありません。しかし、こうしたブログの記事が「情報」のひとつとして、検索エンジンによって検索されるところに、もうひとつのポイントがあります。
商品について知りたいという、強い目的意識を持ったユーザーが検索を行い、高評価のブログを多く読めば、購入意欲を高めるでしょう。逆に、皆の評価が低ければ、購入を見送る可能性が高くなります。こうして、ネットユーザーが何気なく書いた日記たちが、企業の活動に大きな影響を与えているのです。これは特にBtoCビジネスにとって、無視できない現実です。
ネットワークに生まれる「繋がり」から取り残されるな
インターネットは、数多くの「ページ」と「リンク」によって構成されるネットワーク空間です。検索エンジンはリンクを辿って多数のページの情報を収集し、ページの内容やリンクの繋がりを分析して、検索結果を表示します。検索結果の表示においては特に、多くのページからリンクされている(繋がっている)ことが強い(メジャーな)ページである、と判断され、上位表示される傾向があります。
多くのページからリンクされていると、多くの誘導路を持ってユーザーを集めやすくなる上に、上記のような理由により、検索エンジンを利用するユーザーのアクセスも集めやすくなります。つまり、多くの「繋がり」を持つことが、今の時代におけるホームページの運営戦略では大きな意味を持つのです。
ここでも、最初に述べたユーザーの行動の変化(ネット上でよくコミュニケーションを取る)が影響を及ぼします。ブログは「トラックバック」により、記事どうしが繋がることがひとつの特徴です。また、コメントなどを通したユーザー同士の繋がりが生まれることもあり、ユーザーが活発にリンクを生んでいきます。
精力的に活動するユーザーたちが次々とリンクを生み、互いのページを強めていく中、相対的に努力が足りない企業のページの存在感は下がっていきます。そうすると、検索結果に表示される順位が下がり、誰にも見つけられなくなってしまう恐れがあります。
ですから、ただパンフレットをデジタル化したようなページで、どこからか誰かがアクセスしてくれるのを待つような受身の姿勢では、どんどん取り残されて、ネットワークの辺境に追いやられてしまうのです。
では、どうすれば良いのでしょうか?
積極的に「繋がり」を生むための施策が、ホームページに求められる
積極的な繋がりを生む施策には、次の2点があります。
ひとつは「検索」という行動にダイレクトに対応した「検索エンジンマーケティング(SEM)」。自社プロダクトと関連性の高いキーワードを入力して検索したユーザーの、検索結果に広告を表示し、自社サイトに誘導する「キーワードマッチ広告」や、検索結果の上位に表示されるよう、ページのコンテンツや構造を調整する「検索エンジン最適化(SEO)」が具体的施策です。両方の併用により、従来のバナー広告等よりも低いコストで、有力な見込み顧客だけを選び、自社サイトに誘導することを目指します。
もうひとつは「コミュニケーション」という行動に対応した「コミュニティー・マーケティング」。ユーザーに語られる=ブログの記事にしてもらう、リンクを張ってもらう、おすすめしてもうことを目指し、話題作りや素材の提供を行います。具体的施策は多様であり、逆にいえば、まだ明確な手法は確立されていない状態でもあります。ユーザーに紹介料報酬を用意して商品を紹介してもらう「アフィリエイト」もそのひとつ。企業がブログを立ち上げたり、SNSの中でマーケティング用のコミュニティーーを運営し、積極的に「繋がり」を作る例も見られます。
次回からは、これらの施策の詳細な内容と、成功事例を見ていきましょう。
参考資料:総務省「平成18年版 情報通信白書」、「平成17年版 情報通信白書」
ウェブ2.0
米オライリー・メディア創立者のティム・オライリー氏が提唱する、新しいウェブサイトのあり方やビジネスモデルを示した概念。先進的な技術、ネットワーク内に散在する情報を集めた「集合知」の利用など、複数の「原則」からなる。
グーグル(Google)
米国ナンバーワンの検索エンジン「Google」を運営する企業。高い技術、「ロジックによって世界中の情報を整理する」というスタンスで、業界の関心を集める。主な収益源は検索キーワードに関連した広告を出す「キーワードマッチ広告」。2004年10月に株式上場を行い、大きな話題となった。
http://www.google.com/
ソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)
友人・知人との人間関係を構築していくことを主なコンセプトとし、日記機能、メッセージ機能、特定のテーマで集まるコミュニティーー機能などを持ったサービス。
ミクシィ(mixi)
株式会社ミクシィの提供するソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)。国内のSNSとしては最大の規模を持ち、500万を超えるユーザーが利用している。2006年9月に株式上場を行い、大きな話題となった。
SEM(検索エンジンマーケティング)
Search Engine Marketingの略。検索エンジンを利用したマーケティング施策全般として、「キーワードマッチ広告」と「SEO」を指す。
SEO(検索エンジン最適化)
Search Engine Optimizationの略。検索結果の上位に表示されるよう、ホームページのコンテンツや構造を調整すること。HTMLの記述を正しく行う、他のサイトからの多数のリンクを得る、といった施策が有効だとされる。
アフィリエイト
ネットショップやオンラインサービスと、個人サイト等が「提携(アフィリエイト)」し、個人サイトでショップやサービスを紹介してもらい、売り上げや成約があったときに紹介者に報酬を支払う、という広告の仕組み。
著者プロフィール
- 小林祐一郎(こばやし ゆういちろう)
ライター - IT企業勤務の傍ら、ライターとしても活動。
会社の業務では事業者視点から、ライターとしては一般ユーザーの視点からネットと関わり、「普通の人」の幸せに繋がるインターネットのあり方を模索している。
【近著】
Internet Watch連載「Web2.0 超入門講座(インプレス)」
単行本「Web2.0超入門講座 初心者でもよくわかる『これからのWeb』のすべて(インプレス)」
[2006年11月9日 掲載]
関連記事
- 第1回 「ホームページ」の常識が変わった
- 第2回 見込み客を引き込む 「検索エンジンマーケティング(SEM)」~解説編~
記事についてのご質問・ご意見ご要望など、お気軽にお問い合わせください。
