Fujitsu The Possibilities are Infinite

ユニバーサルデザインが経営を変える
第2回 ユニバーサルデザインは究極の顧客志向

UD(ユニバーサルデザイン)は儲かる?

マーケティングは、「作れば売れる」生産重視から、高度成長期の大量生産・大量販売のマス重視へ、さらに進んでモノ余りになると顧客の求める商品を開発するという顧客志向へと視点が移ってきました。
低経済成長の下では「売る相手のことを知る」ことが重視されました。市場調査を行ってターゲット顧客を絞り、絞った顧客が求めるであろうという商品を開発して売る顧客志向的な考え方です。

バブルが崩壊すると、顧客ニーズそのものが捕らえにくくなり、市場調査技法による科学的な調査と分析を通じて顧客のニーズをストレートに読む・・という構造が崩れてしまいました。
いまはモノが売りにくくなっています。そこで、ユーザーの視点を重視する立場でさまざまな商品・サービスの見直しが活発に行われています。
中でも注目を集めているのが、高齢者や身体的なハンディのある人々と健常者との垣根を取り除いて、誰にとっても使いやすいものを実現しようとするUDの考え方です。

UDは高齢者や障害を持つ人々をはじめとして、「誰にでも」、「安全に」、「自然に」使えるものです。
UD商品は高齢者や障害を持つ人々を中心にユーザーの支持を着実に集めつつあります。また、高齢者や障害を持たない人々にとっても使いやすく考慮されたものが多いために、商品開発におけるスタンダードの1つとなるものとみられています。UDを取り入れる動きは、真の顧客志向にかなうものといえます。UDと真剣に取り組む企業にとっては意外に儲かる話になっているといえるでしょう。

商品開発では

1)バリアフリーでは・・

2015年に人口の25%が65歳以上の高齢者になると予測されています。バリアフリーの必要性はますます高まり、加齢による運動や感覚などの機能低下を補う福祉機器・用具などへのニーズが強まっていくことでしょう。
しかしながら、バリアフリーの考え方をそのまま商品・サービスに反映させた場合には、高齢者や身障者をユーザーとして限定した特別なものになります。したがって、それ以外の人にとっては利用しにくくなるかもしれません。バリアフリーでは、商品化してもコストや市場の面で常にハンディを背負うというのが大きな課題となっています。

2)UD商品開発では・・

企業レベルでのUDへの取り組みは、いまのところ大企業が中心となっています。
経済産業省認可で選定している「グッドデザイン賞」に1997年度からユニバーサルデザイン賞が新設されました。また、1998年にISO(国際標準化機構)が設置した高齢者・障害者のニーズに関するワーキンググループにおいて、商品・サービスの基本原則としてUDとアクセシビリティ(使いやすさ)があげられるなど、UDが国内外で主要な開発テーマとして認知されるようになっています。

グッドデザイン賞の受賞商品をみると、その対象とされる範囲は幅広くなっています。いずれも特定の身体的・感覚的な条件を持つ利用者が使いやすいように配慮されたものであるという点で共通しUDはデザインの種類ではありません。UDは経営に関わる理念でもあります。商品の開発者やデザイナーたちが勝手な見込みで作ったものがUD商品として出回ってはなりません。必ずユーザーによるテストが繰り返され、コンセプトがしっかり確認されてから市場に登場させるべきものと考えます。
こうして登場したUD商品はクレームが少なく、しかも売れて儲かる商品になることでしょう。

3)中堅・中小企業は-単独もあるが連携で

UD商品はユーザーの立場に立つことがポイントです。つまり、ユーザーに近い立場で、ユーザーの視点に立って開発することが多い中堅・中小企業にとっては、まさに打って付けの商品だといえます。
多くの中堅・中小企業は専門的でかつ独自のノウハウを持っています。しかし、それはパーツレベルのものが多く、最終的なUD商品にまで持っていくためには、実は高いハードルが控えています。
その解決策の1つとして「連携」があります。自らの技術がどのようなUD商品に応用可能なのかを見極めながら、様々な連携を模索することです。産業集積地であれば、どのようなUD商品でも開発できるでしょう。

官学におけるUD研究・支援は、全国あちらこちらで展開されています。
たとえば、(財)三重北勢地域地場産業振興センターが、県の補助金と科学技術振興センターの協力を得て四日市萬古焼メーカー6社とともに開発した「ルッフ」というユニバーサルデザイン食器があります。
「ルッフ」は「全国地場産業優秀技術・製品表彰事業(平成14年度)」(全国地場産大賞)で、奨励賞(全国中小企業団体中央会会長賞)を獲得しています。

地場産振興センターが取り組んできた地域産業育成支援事業の1グループである異素材との複合化のメンバーのうちメーカー6社を中心に取り組んだものです。県科学技術振興センター工業研究部窯業研究室のデザイン室と外部デザイナー、及びメンバー6社によって、誰もが使いやすいユニバーサルデザインを検討しました。子供から高齢者、障害者まで使えるようにシンプル、安全、やさしさを追求したら「たまご型」となったものです。フランス語で「たまご」を意味する「ルッフ」と名付けられました。
食器の種類は、パスタ皿、ボール、プレート、ランチプレート(仕切り皿)、マグカップ、カップ、浅鉢、深鉢、大皿、土鍋などの13種類。縁の角度を工夫すると同時に皿の底にシリコンゴムを付けて、料理がすくいやすいように調整されています。また、土鍋の本体には取っ手の裏に滑り止めがあり、ふたには窪みを付け、持ちやすくしています。色は、パスタ皿やマグカップ等はやさしい色目のパステルカラーを採用、ホワイト、ブルー、ピンク、イエローの4色。
萬古焼は半磁器であり、磁器に比べると強くないため、業務用として機械洗浄するにはあまり適しません。しかし、萬古焼の温かみのある色合いで「介護、癒し、健康」といった細分化された消費者ニーズに応えるべく新商品を開発したことは、低迷する萬古焼業界において活性化につながったと思われます。

21世紀はお金だけの関係ではない 「共助」、「互助」の時代とも言われています。「共助」「互助」の発想のひとつがUDではないでしょうか。
ユーザーテストなどもNPO(UDのユーザーグループ)等との連携が行われれば、開発者側の思いこみの危険を回避できることでしょう。

UDは究極の顧客志向

UD市場は2025年には16兆円に拡大するとの予測があります(経済産業省「ユニバーサルデザイン懇談会第一次取りまとめ」から)。UD商品は競争がない、あるは少ないために値崩れや安売りの対象になりにくいという特徴を持ちます。そのために企業規模にかかわらずUD商品開発に取り組む企業が増えています。
UDを取り入れることは、商品開発にユーザー本位の設計思想を取り入れ、顧客満足を追求することになるといえます。UDの考え方が浸透していけば、世の中に存在するほとんどの建造物や商品・サービスに対して、その設計思想が見直されることになるでしょう。UDこそが究極の顧客志向であり、有望市場に繋がるものだといえます。

著者プロフィール

阿部 将美(あべ まさみ)
株式会社クロス・メディア・コンサルティング 代表取締役社長
1976年、中小企業診断士(商業部門)登録、近い将来にコンピュータがビジネスそのものの在り方を大変化させると予想し、1970年代にはパソコンを利用したビジネスゲームを開催。1983年 株式会社クロス・メディア・コンサルティングとして独立、中小企業大学校客員講師、中小企業事業団指導部登録指導員などを兼務しながら現在に至る。主な専門分野は、情報、マーケティング、新規事業・新分野進出、企画開発、創業支援。
http://www.ab-cmc.co.jp/

[2005年1月25日 掲載]


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