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ユニバーサルデザインが経営を変える
第1回 いま、なぜユニバーサルデザインなのか

潮流は・・

産業界ではいま「企業の社会的責任に関する報告書」を発行する動きが本格化しています。これまでの環境報告書をさらに発展させて、雇用問題や法令順守(コンプライアンス)といった社会性の高い情報についても開示する企業が増えています。
欧米では当たり前になっているCSR(Corporate Social Responsibility)について、我が国でも関心が高まっていることがわかります。多様なステークホルダー(利害関係者)に対して積極的に情報を開示していくことが、中長期的な企業価値の向上につながるとみているからです。

報告書に記載した内容の狙いを経営トップがアピールするという試みも始まっています。
今年目立ったものは、誰でもが使いやすいユニバーサルデザインの採用方針を記した報告書を発行し、社長自らが外部説明会で「あらゆる商品で推進する」と強調したという企業が現れていることです。

いま、ユニバーサルデザインが注目されています。
特定の人の立場ではなく、地球上に住む人類全ての立場に立って、本当のニーズが何なのかを理解し、空間や情報・商品を開発しなくてはならないという時代になっていることがわかります。

企業理念が問われる

ユニバーサルデザインを経営理念の中に組み入れてトップダウンで進めていくという動きが目立っています。
ユニバーサルデザイン(UD)は、IR(Investor Relations)や環境のように、まだ経営テーマとして十分に認識されているとはいえません。しかし 、UDこそ「モノづくり」や「サービス開発」の重要テーマである、という認識が開発現場では極めて強いものがあります。

一方で、UD商品の開発にあたっては、「これこそがUD」という基準や標準がまだありません。企業はこれから本格化する超高齢化社会における「モノづくり」の手法を確立するために、試行錯誤の状態にあるといえます。

バリアフリーからユニバーサルデザインへ

1)バリアフリーとは

バリアフリー(BF)とは何を指すのでしょうか?
障害のある人が社会生活していく上で障壁(バリア)となるものを除去することがバリアフリーの概念です。段差の解消などのハード面(施設)の色彩が強いのですが、広義には障害者の社会参加を困難にする障害の除去(ソフト面の思いやり、気持ち)を含むものです(総理府「障害者白書」から)。

2)ユニバーサルデザイン(UD)とは

ではUDは何を指し、BFとどう異なるのでしょうか?
「改善または特殊化された設計なしで、最大限可能な限り、全ての人々に利用しやすい環境と製品のデザイン」がUDの概念です(UD提唱者のロナルド・メイス)。
現実には、「ユニバーサルデザイン」を理想としつつ、「バリアフリー」の観点で実績を積み上げていこうとしています。

BFはもともとあったバリアを取り除くことにあります。それに対しUDは最初から取り除かれています(特別な調整をしていません)。
UDの考え方は最初、1990年代初頭、米国で社会的にも話題となった「ADA法(The Americans with Disability Act:障害を持つアメリカ人法)」の議会通過を契機に発生しました。
その運動の中心となったのは、建築家であった故ロナルド・メイス氏らの、ノースカロライナ州立大学センター・フォー・ユニバーサル・デザイン(CUD)でした。

この考え方の中核となるのはユニバーサルデザインの7つの原則です。それぞれの原則に3~4つのガイドラインが付けられており、環境や製品、サービスなどにおいてユニバーサルデザインを取り入れる上でのヒントが盛り込まれています。

原則 具体例
公平な使用への配慮
Equitable Use
特定の人にとって使いづらいデザインにならないこと。
(例)センサー付き自動ドア
使用における柔軟性の確保
Flexibility in Use
多様な個人的嗜好や能力を許容するデザインであること。
(例)両きき用ハサミ
使用における分かりやすさ
Simple,Intuitive Use
使い手の経験,知識,言語能力などに関わらず使いやすいデザインであること。
(例)イラスト付き説明書
感覚的理解への配慮
Perceptible Information
周辺の環境や使い手の感覚的能力に関わらず必要な情報が効果的に伝わるデザインであること。
(例)触覚や視覚によるサーモスタット操作盤
誤動作への配慮
Tolerance for Error
予期しない動作による危険に陥る可能性を最小化するデザインであること。
(例)コンピュータソフトの「取消」機能
身体的負担の軽減
Low Physical Effort
身体的負担を最小限度とし,効率的,快適に使用できるデザインであること。
(例)ノブハンドルより操作が簡単なレバーハンドル
余裕あるスペースの確保
Size and Space for Approach & Use
使い手の身体的大きさ,姿勢,移動能力に関わらず容易にアクセス,操作ができる適切な大きさや広さがあること。
(例)誰でも便利な広い改札口

ユニバーサルデザイン経営とは

UDの領域は製品、施設、都市などの目に見えるものから、サービスやシステムなど目に見えないものまで多岐にわたっています。それらが関連し、補完し合わなければ、UDの社会を実現することはできません。
UD経営は、UD社会を実現するために企業をあげて取り組むという姿勢を表明し、実際に取り組んでいこうとするものです。
UD経営は、大企業だけのものではありません。企業規模に関係なく取り組んでいかなければならない大きな経営課題です。
企業の社会的責任を果たす取り組みであるととともに新たなビジネスチャンスの芽にもなります。
素早い意志決定と舵取り、全社的取り組みなどが中堅企業の特徴です。中堅企業ならではのフットワークを活かして、その企業らしい特色ある活動を展開できるはずです。
お客様の視点に立ったモノづくり・サービスづくりの基本スタンスとして、UD経営がいま重要テーマの一つとなっています。

著者プロフィール

阿部 将美(あべ まさみ)
株式会社クロス・メディア・コンサルティング 代表取締役社長
1976年、中小企業診断士(商業部門)登録、近い将来にコンピュータがビジネスそのものの在り方を大変化させると予想し、1970年代にはパソコンを利用したビジネスゲームを開催。1983年 株式会社クロス・メディア・コンサルティングとして独立、中小企業大学校客員講師、中小企業事業団指導部登録指導員などを兼務しながら現在に至る。主な専門分野は、情報、マーケティング、新規事業・新分野進出、企画開発、創業支援。
http://www.ab-cmc.co.jp/

[2004年12月28日 掲載]


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