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少子高齢化・人口減少時代の経営学
第4回 新たなビジネスモデルでチャンスをつかむ

ビジネスモデルは「7つの収益性モデル」をベースに考える

ビジネスアイデアとビジネスモデルの最大の違いは、ビジネスとしての収益をどのように獲得するかという仕掛けが、明確化されているか否かです。せっかくのアイデアも、この仕掛けが不十分ではビジネスとして成功しません。ここからは「収益性」をキーワードとしてビジネスモデルを考えるノウハウを解説します。
図3は、新規事業におけるビジネスモデル研究分野で第一人者の早稲田大学大学院教授 大江建先生が提唱されている「儲けの戦略」を基に、筆者が収益性ベースでのビジネスモデルのあり方を7種類に分類したものです。これを使って、これからの少子高齢化・人口減少時代に、中堅企業にとって有効なビジネスモデルについて解説していきます。

図3 収益性から考えたビジネスモデルの切り口

1. 高価格化による収益性確保

大企業が扱うような商品・サービスではなく、一部のマニアや専門業者向けに特化したものを提供することで、数ではなく質で勝負し、利益率を確保するモデルです。生活者向けならば、嗜好性の高い分野で一品単位の手作り品に特化する、法人向けならば自社が培ってきたノウハウを技術継承が上手くいっていない企業などに専門家として提供していく、などのビジネスがこれにあたります。

2. 売上の極大化による収益性確保

大手企業であれば、広範な顧客層に積極的に働きかけることで売上を拡大することができますが、中堅企業においては体力的に困難です。むしろ、特定層の顧客を囲い込み、リピートオーダーを得る仕組みを組み込むモデルが有効です。生活者向けならば、地域ブランドなどを上手く活用した消耗品(食材や石鹸・化粧品など)によってお得意様にする、法人向けならば、特定業界に関して顧客データベースを整備し定期的にアプローチするなど、顧客を囲い込むことが可能なサービスが有効でしょう。

3. 規模の経済による収益性確保

中堅企業では採用が難しいモデルです。唯一可能なのは、特定地域や特定業界に密着する中堅企業がその知見を活かし、急成長する大手企業の代理人となるモデルです。例えば大手ディベロッパーが展開するシニア向けリゾート地域での仲介代理を行う、大手が展開しようとする新たな生産性向上のためのシステムを特定業界向けに専従的に代理展開する、などが考えられます。

4. シェア確保による収益性確保

ニッチ市場でのシェアを確保することで、販売コストを低下させ収益性を確保する、いわゆるニッチ市場モデルです。中堅企業で特に検討したいのが、特定地域特化型のビジネスモデルです。大手が広範な地域で展開するために、高いマーケティングコストをかけてビジネスを行うのに対し、特定地域に特化することで販売コストを下げつつも顧客の利便性を向上させ、同一価格でもより高い収益率を上げるようにするモデルです。特に地域高齢者向けの専門的サービスや、御用聞き型の営業スタイルが採れるビジネスでは有効な考え方です。

5. コスト低減による収益性確保

従来とは異なる手法を盛り込むことで、収益性の高いビジネスモデルを考える方法です。例えば健康食品やアンチエイジング化粧品などの販売において、店舗を構えると発生する固定費や在庫コストを、人脈を使った無店舗型の販売にすることでコストを抑える、ネット上での店舗によって固定費を抑えながら、広告収入や他社商品取り扱い手数料などで収益源を複数化する、などの手法が考えられます。

6. 資源多重利用による収益性確保

これからの人口減少時代における法人向けビジネスを検討する企業に、特に推奨するモデルです。本コラムの第2回でも述べたように、これからの企業経営はいかに生産性を向上させるかがキーワードとなってきます。自社に有効な知的財産を保有する中堅企業ならば、これをライセンス供与していくことで収益化する、知財ではないがノウハウがあるならば、それをパッケージ化(ソフト化だけに限らず、人手によるサービスでも可能)することで、繰り返し多くの顧客に対し提供していくことを、ぜひ検討してみてください。

7. 複合型による収益性確保

1から6のモデルを組み合わせて考えるモデルです。例えばシェア確保とコスト低減を組み合わせ、生活者向けならば健康食品や化粧品などを配置薬(いわゆる富山の薬売り方式)で提供する、企業向けならばサプライ品提供と省エネルギーコンサルティングを結びつける(ガス事業者や松下電工などが取り組んでいます)など、より優位なビジネスモデルを考えていく方法です。

本質的なビジネス環境の変化は、これからが本番

「2007年問題」と言われる団塊の世代の大量退職問題は、決して消え去ったわけではなく、定年延長などにより一時的に棚上げされているだけです。そして、人口減少という構造的な問題による日本企業の相対的な競争力低下の可能性は、今後少しずつ表面化してくるものと思われます。また、シニアビジネスに関する期待は、やや沈静化したような印象を受けるかもしれませんが、これは一時的なブームが過ぎ去っただけです。表面的な熱狂の後にこそ、本質的なビジネス環境の変化が現れてくるのです。
本番はこれからです。読者の皆さんがチャンスを確実に獲得し、新たな時代のビジネスを築いていかれることを願っています。

著者プロフィール

西村 健一
エヌ・コンサルタンツ 代表取締役
1962年生まれ 大阪府出身、同志社大学法学部卒 中小企業診断士
証券会社にて中堅・ベンチャー企業のIPOに向けての育成指導や事業戦略策定、システム開発プロジェクトのマネジメントなどを経験後、国内独立系コンサルティング会社に入社。取締役東京代表を務めた後、東京事務所をMBOし2002年エヌ・コンサルタンツ設立。
通信会社や電力会社などにおける社内起業家制度の運営支援、大手ケミカル会社での新規事業進出計画策定支援、製薬会社における中期事業計画策定支援など、新規事業関連での実績多数。近年は研究機関での技術シーズの産業化などにも注力している。
シニア市場に関しては、2001年に公的機関における研究会のコーディネータに任ぜられて以降、一貫してコンサルティングに取り組んでいる。
著書「中堅企業・中小企業の経営革新・事業転換戦略構築法」(平原社刊)
http://www.n-cons.com

[2007年12月6日 掲載]


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