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少子高齢化・人口減少時代の経営学
第3回 就業人口の減少に対応する企業経営を考える

少子高齢化時代というテーマで議論がなされる時、これから増えていく高齢者をどのように捉えていくかが主題となりがちです。しかし、長期的により大きな影響を社会に与えていくと考えられるのは、団塊の世代の大量退職後に予想される、就業年齢層が長期的に減少していく「労働人口減少時代」の問題です。

働き盛りの従業員が減少していくという経営環境

企業経営の現場において、緊急に対応しなければならない課題として取り上げられるのが、団塊の世代の大量退職にともない、技術・ノウハウというようなナレッジの継承をどのように行っていくかということです。各企業においては、若手に向けたベテラン社員によるナレッジ継承のための社内研修会を行う動きが活発化していると同時に、政策として、各地の商工会議所などが実施主体となった企業OB人材の活用事業が展開されています。
もちろんこのような活動は、積極的に行われていかなければなりません。しかし中期的な観点から考えると、社会全体の構造変化というより大きな課題への対応が必要であることに気づきます。それは、労働人口減少による競争力の長期的な低下、という問題です。今後企業を長期的に悩ませていくと考えられるのは、若手から働き盛りといわれる年齢層の従業員数が減少していくことです。図1を見ていただけば判るように、これからの日本社会では、労働人口が減少しつつ高齢化が進んでいくことが予想されています。

図1 労働力人口の高齢化

これを企業経営の観点から考えると、従業員一人当たりの生産性が同じであるならば、必ず競争力が低下していってしまうのです。つまり、企業経営のあり方を従来のものから変えていかなければならない時代が来ているのです。

構造が変化する時は新たなビジネスが発生する

このような社会構造の変化に対して、経営者はただ悲観するしかないのでしょうか?
そうではありません。実は、社会構造の変化は、新しい産業や製品・サービスを生み出すビジネスチャンスも同時に発生させる、大きな経営環境の変化であると捉えることができます。
それでは、労働人口減少時代に向けて、どのようなビジネスチャンスが生まれてくるでしょうか。

最大のテーマは「生産性向上」

「労働人口の絶対数が減少する中で、企業がその事業力を維持・発展させる」、これが今後の経営の最大の課題であることに間違いありません。これを実現するためには、少ない労働力でいかに高い成果を上げていくか、つまり、従業員一人当たりの生産性をいかに高めていくかが最大のテーマとして浮かび上がってきます。企業が生産性を高めるための方向性は、大きく2つに分かれます。それぞれの方向性から新たなビジネスや経営手法が発生すると考えられます。

1. 生産性の低い業務を自社で行わない

労働人口が減少するということは、付加価値を生み出さない業務に従業員を割り当てない、という経営が主流になるものと考えられます。これにより、総合化による規模の拡大から専門特化による生産性向上への動きが強化されるでしょう。これを新しいビジネスのヒントとして捉えるならば、専門分野に特化していく企業が自社で行いたくないと考える業務を請け負う、事業所向けサービスがより拡大していくものと考えられます。
では、自社がこのような事業所向けサービス事業に進出するためのアイデアは、どのような切り口で考えれば良いのでしょうか?
BtoC事業者向けに考えるならば「消費チェーン」、BtoB事業者向けに考えるならば「バリューチェーン」と呼ばれる事業プロセスの流れを分解し、自社が優位性を発揮できそうな業務を発見していきましょう。

図2 消費チェーンとバリューチェーン

このような事業所向けサービスは、総務や経理などの管理業務が中心でしたが、これからは店舗運営や営業活動、商品企画など、従来は企業の根幹業務として外部委託の対象として考えにくかった分野へも拡大していくものと予想されます。

2. 競争力強化のための新たな仕組みを考える

付加価値を生み出さない生産性の低い業務を排除するだけでは、競争力は強化されません。労働人口の減少は、自社の基幹業務に従事する従業員数も減少させます。このことから、研究開発や商品企画、マーケティングなどの基幹業務での生産性を向上させる新しい仕組みを検討する必要があります。
この方向に関しては、これから皆さんが知恵を絞って考え出したものが、新たなビジネスや経営手法として世の中のスタンダードになる可能性を秘めています。そのための切り口として、ブレーンストーミングという企画開発手法を生み出したオズボーンが提唱する「9つの発想手法」を元に考えてみましょう。図3に示したものがオズボーンの9つの発想手法です。

図3 オズボーンの9つの発想法

この発想法を元に、筆者が考えた新たなビジネスの仕組みの切り口が図4です。皆さんの参考になさって下さい。

図4 「オズボーンの9つの発想法」を基にした「新たなビジネスの仕組みの切り口」

労働人口減少による企業経営のあり方の変化は、団塊の世代の大量退職到来のような「既に起こっている変化」「一時的に発生する事象」ではなく、「今後本格的に発生する構造変化」であり「長期間にわたって起こり続ける事象」です。皆さんの取り組み自体がこれからの成功事例になる分野ですので、ぜひとも素晴らしい取り組みを見つけ出してください。

次回は続々と生まれてきつつある新たなビジネスの事例を検証し、少子高齢化・人口減少時代を勝ち抜くビジネスモデルの発想ノウハウをわかりやすく解説していきます。

著者プロフィール

西村 健一
エヌ・コンサルタンツ 代表取締役
1962年生まれ 大阪府出身、同志社大学法学部卒 中小企業診断士
証券会社にて中堅・ベンチャー企業のIPOに向けての育成指導や事業戦略策定、システム開発プロジェクトのマネジメントなどを経験後、国内独立系コンサルティング会社に入社。取締役東京代表を務めた後、東京事務所をMBOし2002年エヌ・コンサルタンツ設立。
通信会社や電力会社などにおける社内起業家制度の運営支援、大手ケミカル会社での新規事業進出計画策定支援、製薬会社における中期事業計画策定支援など、新規事業関連での実績多数。近年は研究機関での技術シーズの産業化などにも注力している。
シニア市場に関しては、2001年に公的機関における研究会のコーディネータに任ぜられて以降、一貫してコンサルティングに取り組んでいる。
著書「中堅企業・中小企業の経営革新・事業転換戦略構築法」(平原社刊)
http://www.n-cons.com

[2007年11月8日 掲載]


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