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「株式公開に向けての準備とシステム化」
第4回 公開申請書類作成に向けての作業と公開スケジュール

企業の経営実態を掴むためには月次決算が適正に行われ、損益が正確に把握されていなければ、次月以降の経営目標数字に対する予算編成ができません。また、予算統制においても差異分析が有効に実施できません。このため、予算管理を有効に機能させるためには、月次決算が翌月5日以内に報告できる迅速性のあるシステムの確立が必要であることをこれまでに述べてきました。しかも、月次決算確定時点での業績報告において、問題点の把握、対策の立案までが完了していることが求められますので、数字自体の集計はさらに早く行う必要があります。

以下では、公開申請書類の作成にあたり、この日数の短縮のためにどのような分析を行えばよいかについて述べます。また、最後に、公開までのスケジュールについても簡単に触れます。

公開申請書作成に向けての分析作業

まず、現状の月次決算の問題点をリストアップします。月次決算処理に関する現状のスケジュールを作成し、それぞれの所要時間短縮にあたって、ボトルネックになっている業務処理を明確にします。さらに、それらをシステムにより効率化が実現できるものと、業務処理が欠如している、または充分に機能しておらず業務処理手続きそのものを見直さなければいけないものとに分類します。

  1. 定型化できるものは、コンピューターシステムへの移行が考えられます。
  2. 業務処理手続きの見直しが必要なものは、管理体制を含めた検討が必要です。

公開申請書類である『有価証券報告書のIIの部』にスポットを当て、分析することも必要です。現在稼働している基幹業務・会計業務システムでアウトプットされている情報の個々の項目が、『有価証券報告書のIIの部』の各帳票項目にどの程度対応できるのかの診断分析を行います。分析結果を以下の4つに分類します。

○ 対応可能
× 対応不可
△ 他の項目と計算処理して対応可能
□ 手作業で対応

分析結果として「×」、「△」の出た項目に対して、それぞれ、「新規構築を必要とする」か、「現状のシステムを見直せば良い」かを、開発投資金額と期間を考慮し充分検討します。別の方法として、時間は要しても、手作業集計で対応する等の方法もあります。このように、自社の稼働システムの診断・分析を行うことにより、公開申請書類作成完成度の評価を行います。

公開後、『有価証券報告書IIの部』を活用されている顧客例として、IIの部の帳表をピックアップした資料を経営会議資料として利用されている例があります。

今まで述べた内容は決められた申請書類の定型情報に関するものです。公開審査時には、これら定型情報に関すること以外にも審査官より任意の質問が出ます。この質問に関する情報を非定型情報といいます。質問に対する回答は即応性が要求されるため、これに対応するにはデータベースの内容を自由に検索・集計できる多次元分析ツール等の利用が考えられます。

公開申請書作成のための分析作業イメージ

株式公開に向けてのスケジュール

株式公開に向けての準備は、社内体制の確立、情報システムの確立など企業活動の根幹をなす部分の整備が求められます。このため、早い段階(3~5年前)よりスケジュールを作り、N年(公開申請年)に向け準備を進める必要があります。

公開申請書「有価証券報告書IIの部」の基礎情報をコンピューターシステムより出力することを考えた場合、公開する市場によって情報開示対象の期間が異なりますが、公開申請年をN期とすると、N-3期より公開対象データの蓄積をすることが望まれます。最悪の場合でN-2期からの累計が必須条件となります。これは公認会計士によるN-2期の監査証明が必要になるためです。したがって、新情報システムの「企画立案書」の作成をN-4.5期前より着手し(この段階が一番重要であり充分な時間をかけることが必要です)、システム開発の時期をN-4.5~N-3期とし、システム設計・開発・テストに1年相当かけられる、充分な確認検証期間が必要です。

株式公開までのタイムスケジュール

まとめ

公開にあたっての、1) 社内基盤の確立とこの整備ポイント、2) 企業の根幹となる基幹業務システムの整備のポイント、3) 基幹業務のサブシステムと会計システムとの連携のポイント、4) 公開申請書類作成に向けての作業と公開スケジュールについて4回のシリーズで述べてきました。公開にあたっては、企業として成長していくことが前提条件となるため、この成長していく企業の環境条件をどう整備していくかがポイントです。また、仕組みやシステム面だけでなく、社員の意識向上も必要です。経営者あるいは公開手続きの関係者だけの認識にとどまらず、全社一丸となって、この目標達成に向けた、意識の高揚、モチベーションアップを図っていく必要があります。

今回、4回のシリーズ内容をシステムの立場より執筆致しました。企業規模、業種により直面する問題などが異なる部分があるかと思いますが、ご参考にして頂きたいと思います。

著者プロフィール

内山 富夫(うちやま とみお)
株式会社マーベリックコンサルティング 代表取締役社長
昭和51年富士通興業(株)入社、昭和54年(株)富士通システムソリューションズ転社、平成14年6月株式会社マーベリックコンサルティングを設立。富士通システムソリューションズ在籍中からの現場経験を活かし、平成4年から株式公開を中心としたコンサルとシステム構築を手がける。著書に「株式公開実務ガイド」(中央経済社)など。
http://www.mave.co.jp/

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