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「株式公開に向けての準備とシステム化」
第1回 社内基盤の確立と整備のポイント

株式公開に向けてはまず、組織体制・社内規程・会計制度・事務処理手続きの『経営基盤』を確立することが重要です。『収益基盤』は何処にあるのか、それらが公開後も継続的・安定的に(右方上がりに)推移することが見込めるのか、それらを支える社内経営基盤は、今後の企業の成長を支えていくことができるのかが、『公開審査』の対象となります。
今日、この基盤確立にあたり、情報技術を日常業務の効率化あるいは経営管理面で利用し、『経営管理資料の提供』『意志決定のスピード化への対応』等に役立てることが求められます。
今回は、社内基盤業務の仕組み面およびシステム面での整備のポイントについてお話します。

予算管理の仕組み・システムでの整備ポイント

企業の経営戦略が策定され、その内容が反映された中長期の事業計画があり、その計画に基づき『短期事業計画』がビジネスユニット上に落とされ、月々の目標に対し実績値が『予算/実績』として『予実差』管理され、次月以降の企業活動に反映される、という仕組み・システムが必要です。
公開を目指し、コンピュータシステムを既存システムから新システムに移行する場合、以下の点に注意が必要です。1つ目は、ビジネスユニットが明確に定義されているかどうかです。『プロフィットセンター』『コストセンター』の定義が曖昧ですと、旧ビジネスユニットと新ビジネスユニットで過去の実績が1:1の関係にならない場合が存在します。データ移行する場合、充分な対応付けの検討が必要になります。 2つ目は、セグメントの定義の明確化です。近年『セグメント重視』の経営管理および『セグメント重視』の公開開示内容に変わってきています。大、中、小までのセグメント分類定義をしておくことをお勧めします。こうしておけば、後に詳細な経営分析が可能になります。

組織の仕組み・システムでの整備ポイント

会社の意思決定『組織階層』の見直しに伴い、経営管理のスピード化のために、データを『発生場所』で入力処理するというコンピュータシステムを構築される企業が多くあります。このときの注意ポイントは、『承認プロセス』経路をどうするかです。『人事上の組織定義』と『経理上の組織定義』を別々に持つ企業がよく存在します。『承認プロセス』経路をどちらの組織定義にしてシステムを作るか充分な検討が必要です。また、経営管理資料の『照会・検索システム』構築に当たっても『セキュリティ管理』の面から、組織階層を意識したシステム作りが必要です。

販売管理の仕組み・システムでの整備ポイント

販売管理の仕組みにおいて、受注出荷システムと経理システムの整合性が取れないことがよくあります。これは,販売管理側と経理側とでの『計上認識』の違いから発生します。この整合性を確立しておくことは、公開以後に諸資料を正確に出力する上で必須条件となります。『与信管理』においても、相手先顧客の複数の部門と取引がある場合、販売管理側で設定される与信と、経理側で設定される与信との位置付け、関連を明確にしておく必要があります。また、『債権管理/回収管理』においては、売掛金の『年令表』作成の上からも、個別消し込みが必須となります。グロスで消し込み処理をされているような場合は仕組みの変更となります。入金を経理側の当座預金/仮受金で受けて、販売管理側で仮受金/売掛金の消し込みをするような個別消し込みの仕組みとシステムを作られるとよいでしょう。

購買管理の仕組み・システムでの整備ポイント

事務処理の繁雑性、社内的仕組みの面から、月次で買掛金、未払金を計上されない企業が見受けられますが、公開を目指す企業としては月次決算上問題があります。公開を前提にシステム化を考えた場合、『発生主義』が前提となりますので、相手先の請求書による計上でなく自社で検収後、買掛金、未払金を計上し、支払管理に連動し『債務認識』され、月次決算に反映できる仕組みとシステムが必要になります。また、購入予定単価等がコンピュータ登録され、発注管理に連動し注文書を発行される仕組みとシステムを持つ企業が多いかと思います。セキュリティ管理の面から考え、第三者が、この購入予定単価等を閲覧できないガードされたシステム化が必要です。

原価計算の仕組み・システムでの整備ポイント

原価計算の仕組み・システムは、製造業の根幹をなす生産管理業務と密接な関係があるため、公開に向けた仕組み・システム化を考えた場合、一番早くに取組みが必要な最重要ハードルと言えるでしょう。会社全体の費用は分かるが、どこの部門でいくらの費用が発生しているか分からない。また、その下位の製品をいくらで作ったか分からない。このような企業は、売上は細かく管理されているが、意外に原価計算の部分は細かく管理されていない場合があります。
『要素別原価計算』―『部門別原価計算』―『製品別原価計算』
の対応を明確にしておく必要があります。現在の社内体制で、どの部分まで管理できるのか充分な検討が必要です。製品まで求めようとすると、多大のコストと時間をかけた仕組み作りになるかと思います。特に、労務費コスト把握に当たり、『部門』、『工程』の作業賃率を一本で行われている企業は、問題になる場合がありますので、社内の業態を見て判断する必要があると思います。仕組み作りに当たっては、公認会計士の先生に相談された方がよろしいでしょう。

在庫管理の仕組み・システム面での整備ポイント

物の動きに対応して、受払い管理がキチンと行われ、『前残・入庫・出庫・残高』が反映した『受払い台帳』が継続的に管理されることが必要です(『継続記録法』での管理)。『受払い台帳』は、公開への仕組み・システム作りにおいての最重要管理帳表です。よく、実施棚卸から出庫を逆算し、損益計算書を作られている企業がありますが、正しくロスを把握することができない点で、また、このロスがどのような形で発生したかの原因分析ができない点で問題です。棚卸の評価方法も『最終原価法』を採用されている場合、資産が膨れてみえることで問題になることがあります。企業の業種業態を見て判断が必要になります。やはり、公認会計士の先生に相談されるとよろしいでしょう。

公開申請書作成のための分析作業イメージ

株式公開を目的とした事業活動支援

著者プロフィール

内山 富夫(うちやま とみお)
株式会社マーベリックコンサルティング 代表取締役社長
昭和51年富士通興業(株)入社、昭和54年(株)富士通システムソリューションズ転社、平成14年6月株式会社マーベリックコンサルティングを設立。富士通システムソリューションズ在籍中からの現場経験を活かし、平成4年から株式公開を中心としたコンサルとシステム構築を手がける。著書に「株式公開実務ガイド」(中央経済社)など。
http://www.mave.co.jp/

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