生産管理改革【実践編】
「月ごとの利益が把握できてますか?」
-原価管理システムの実際 その2-
もう一つの事例として、原料(薬品)を配合し製品(界面活性剤)を製造する生産形態のN社様での原価計算システムの構築事例をご紹介します。N社様は、年商15億円、従業員数50名の規模のお客様です。
原価管理の流れ
N社様の原価管理の全体の流れは下図のようです。過去の実績をもとにして立案された販売計画から製造計画と操業度計画すなわち製造予算を決めます。また、固定費、変動費などの経費を品目・費目毎に重みづけをし経費の標準値を求めます。これから、この製品はこのくらいの原価になるはずとの「予算原価計算書」を毎月作成します。重みづけは製品の「等級」に従って行います。経費のうち、原料費・包材費は、配合表をもとに原材料標準仕入単価から算出し、労務費・間接費は製造予算量をもとに等級別に配賦します。
原価管理システムの流れ

実績については、等級別の総合原価計算により、実際原価を算出します。算出は「累加法」で下図のように行います。累加法とは、製造工程ごとに完成品の原価を計算して、次工程の原価へと振替える方法です。総合原価計算は、プラント装置で原料から製品を連続生産する場合によく用いられる原価計算方式です。
実際原価を算出後に、予算原価との差異分析を行い、予算に対する実績を検証します。
累加法による原価計算プロセス

システム構築のポイントと導入の効果
システムの構築は、基本的にはパッケージをそのまま利用していますが、等級別計算と、副産物の棚卸し評価に使える数字を出すところは、パッケージに手を加えています。副産物を配合表(組立加工業での部品表にあたるもの)に登録することで、主製品と親子関係を作り、主製品に応じた実績がとれるようにしたのがポイントです。
システム構築以前は、Excelにより手作業で行っていました。そのため、時間はかかり、精度も低いものでした。当然、決算のスピードも遅くなり、経営判断のスピードも遅くなっていました。
導入の効果としては、以下の2点です。
- 月毎に予算原価を作成し、販売予算と比較することで、生産を始める前に粗利が把握できるため、利益を上げる製品を作っているかどうかを早めに把握でき、対策が早めに打てるようになったこと。
- 予算原価、実際原価、副産物の棚卸し評価など、精度の高い数字が手間をかけずに得られるようになったこと。
システム安定稼働までの道のり
N社様とK社様の原価管理システムが簡単に成功したかのように見えますが、安定稼働までは根気と労力も必要です。原価管理システムは、生産管理や経理システムなど他システムから正確なデータの転送を受けて、初めて機能します。他システムとデータの連携や整合性など、安定稼働までにはいくつものトラブルが考えられます。それらを根気よく解決していかなければいけません。
K社様の場合は、成功の要因として、経理部を中心に全部門が積極的に参画していたことがあげらます。要求仕様の確定、工場実務の分析、賃率・配賦率・標準工数など設定値の確定、個別残課題の整理などのための月1回の部門長会議に加え、推進役の経理部長による関係部門へのきめ細かな根回しがありました。これも大変重要なことです。原価が見えることで、ともすればリストラにつながりかねず、従来のやり方に固執する部門からは大きな反発も予想されます。これら要因を想定し、各部門への十分な説得、根回しが必要となります。
企業を取り巻く環境は、海外製品との競合、環境対策への出費など原価が上がる要因ばかりです。きちんと原価を管理し、下げられるものは何か、どう下げるかを常に考えることがますます必要になってきています。2つの事例より、原価管理システムの具体的な構築方法とその効果をご理解頂ければ幸いです。
著者プロフィール
中井 克紀- 1988年 株式会社富士通関西システムエンジニアリング(現富士通関西システムズ)入社
以来、一貫して国内外の製造業ユーザ様におけるシステムサポートを担当
GLOVIA-Cアプリケーションコンサルタント(生産管理・原価管理)
今までに経験したお客様業種と原価管理:
・一般機械・金属等の組立・加工業(ロット生産・個別生産)
・鋼管製品製造業(総合原価計算)
・プラスチック成形品製造業(海外サポート)
・映像装置関連製造業(個別原価管理)
・化学・配合関連の製品製造業、等
・GLOVIA-C生産情報PRONESの原価管理システム開発に従事
趣味:旅行、サイクリング、映画、イラスト、等
座右の銘:人の和が大事
[2005年10月3日 掲載]
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