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生産管理改革【実践編】
「製品ごとの利益が把握できてますか?」
-原価管理システムの実際-

今回は、実際に原価システムを構築した事例から、企業の課題、原価システムの内容とシステム構築時の工夫、システム導入の効果などを具体的にみてみましょう。
大小の鋼管を成形・加工されている年商120億のK社様の例をご紹介します。K社様は、帯鋼コイルから、成形機で造管し、溶接加工したさまざまな製品を製造・販売しています。標準品の見込み生産と特注品の受注生産の二通りの形態で生産していますが、近年は特注品の割合が増えてきていました。

現状の課題

K社様が原価管理システムを含め、現状システムの刷新に取り組んだ背景には、親会社からの強い意向がありました。親会社の経営環境の激変に伴い、国際会計基準や連結決算への対応が求められていました。K社様の取引には、グループ内企業に販売する「内販」と、グループ外に販売する「外販」の2つがあり、それぞれの経理データを月末締5営業日以内に親会社へ報告することが義務づけられました。K社様自身も財務体質や競争力の強化という課題などから、製品別コストの分析やそのために間接費を適切に配賦すべきとの問題意識を持っていました。携帯電話のアンテナのような軽量・高価な新部品が増え種類が多様化しているにもかかわらず、従来の「重量」按分による経費の配賦のやり方は現状にそぐわなくなっていました。また、工場の稼働率も低下しており、間接コストを適正に配賦計算しなければ、製品ごとの本当の採算性が把握できない状況でした。

原価管理システムの概要と構築の工夫

K社様のシステムの全体図は下図のようになっています。図中にシステム構築時のポイントを1から5に示しています。その内容について以下でご説明します。

【ポイント1】原価要素の内訳細分化

材料費を帯鋼、切板、その他の種別に細分化したり、労務費や経費を直接費と間接費に分けたり、システム構築のベースとなる原価管理パッケージで標準で持つ原価項目より細かく管理、分析できるようにしました。細かく管理することで、固定費を含めた実際原価の把握ができる一方で、操業度の変動によりバラツキがちな固定費部分を排除した原価分析(直接原価)を行うことも可能になりました。

【ポイント2】作業屑の消費額調整

ひとかたまりの材料からいくつかのオーダーの製品が加工され、加工途中で作業屑や端材が発生するため、オーダー単位で材料の投入量を確定できません。材料と完成製品の間には差分が生じます。例えば、100キロの材料からオーダー単位A、B、Cの3種類の鋼管を製造するとします。完成した鋼管がA:30キロ、B:20キロ、C:40キロの場合、合計で90キロ。この場合10キロの作業屑や端材が発生していますが、加工段階ではこの作業屑や端材がA、B、Cいずれから発生したか特定できません。そこで、この差分を、月末処理においてオーダー単位で割り振るなどの工夫を加えました。

【ポイント3】労務費の集計

システム構築で最も大きな課題の1つが、労務費の透明化でした。工場稼働率のバラツキや低下などから、従来のシステムでは適切な労務費の把握が難しくなっていました。かといって、精度の高い労務費データを求めようとすると、作業現場で煩雑な日報データの入力が必要になります。過度にこれを強要すると、生産性の低下につながりかねません。そこで、部門ごとに以下のような工夫を加えました。

原価管理システムの概要とカスタマイズポイント

  • 生産部門
    従来から造管ラインごとに作業時間は記録しており、この時間と生産管理システムで把握している、どんな製品をどのラインで何本加工したかのデータとつきあわせることでオーダーごとの作業時間を算出できるようにしました。
  • 技術開発部
    設計とか試作のコストが無視できなくなってきており、これらのコストを製品ごとにきちんと割り振ることが必要でした。作業日報は、もともと書かれており、そのEXCELデータを取り込めるようにしました。
  • 資材部
    発注業務をやるということは、契約から見積りからいろいろな仕事があります。発注業務を新規発注品と繰返し発注品に分け、各々標準的な作業時間の設定と発注実績と突き合わせることにより、どの製品にどれくらい資材部のコストが入るかがわかるようにしました。
  • 品質管理部
    製品ごとの検査の手間は、品種と工程により決まりますので、あらかじめ設定された工程別品種別の標準作業時間と、検査実績情報から、作業時間を求めるようにしました。特注品については全品検査のため、検査実績入力時に実作業時間を入力することにしました。
  • 生産管理部
    生産管理部は、部材の供給から外注管理・工程管理など生産管理の全般を担当していますが、ここでも、受注1件あたりの作業工数を標準的に設定できるようにし、オーダーごとの作業時間を算出できるようにしました。

このように、従来、あいまいだった作業時間を、最低限の労力で品目別やオーダー別に直課できるようにしたのは、新システムの大きな特長ということができるでしょう。
なお、基本的に、作業ベースで配賦を行いましたが、予算に比較して稼働率が低いために直課しきれない工数は、間接費として強制的に配賦することにしました。
また、個々の製品においては、直接作業による直課金額と二次的な配賦部分の金額を明確に区別することができます。

【ポイント4】物的経費と人的経費を分けて配賦

減価償却費や設備保守費は数量あるいは重量で按分計算し、交通費や備品の減価償却費、各種保険料は直接工数で按分計算しました。

【ポイント5】会計システムとの連携

会計上の仕訳を定義し、例外的な処理をきちんとルール化することで、自動仕訳パターンを作成し、会計システムとスムーズに連携できるようにしました。

システム導入の効果

まず1つは、製品別の採算性をきちんと把握した上で、販売戦略が検討できるようになったことです。これまでは、お客様の要求を聞き入れて、複雑で、手間のかかる特注品を受注していくことが生き残る道であるという営業サイドの意見にしたがってやってきました。しかし、現状は、特注品の原価が予想以上に高く、受注すればするほど利益を失うことがわかりました。これは大変重要なことです。K社様では、受注方針や製品価格の見直しを進めることになりました。2つ目は、生産活動へのフィードバックができるようになったことです。設計も製造も購買も含んでデジタルに生産性の評価ができるようになりました。結果として、特注品の製造方法の見直しが必須であることがわかりました。3つ目は、月次の決算が早くなり、親会社への決算報告が月末締5営業日以内にできるようになりました。

当初から期待していた効果以外に副次的な効果も見逃すことができません。原価が正確にわかるため、新規の製品の受注に際しての見積り精度が向上しました。また、生産の立ち上げ時には、在庫精度がよくなかったものでしたが、在庫管理を正しく行わないと原価管理が正確にできないことから在庫精度が上がるという効果が生まれました。さらに、どういった加工を施すとどのくらいコストがかかるかが明確になったことで、お客様との交渉時に技術部門としてアドバイスできるようになりました。経営面から見ると、もし稼働率がよければ、この製品は儲け筋かどうかといったものの見方ができるようになりました。全社として原価管理に取り組んだことで、このようにさまざまな面で効果がでてきました。

ただし、不採算の部門がクローズアップされることになるため、部門によっては厳しさが直撃することにもなりますが、会社の生き残りという面から考えれば致し方のないことでしょう。

著者プロフィール

中井 克紀
1988年 株式会社富士通関西システムエンジニアリング(現富士通関西システムズ)入社
以来、一貫して国内外の製造業ユーザ様におけるシステムサポートを担当
GLOVIA-Cアプリケーションコンサルタント(生産管理・原価管理)
今までに経験したお客様業種と原価管理:
・一般機械・金属等の組立・加工業(ロット生産・個別生産)
・鋼管製品製造業(総合原価計算)
・プラスチック成形品製造業(海外サポート)
・映像装置関連製造業(個別原価管理)
・化学・配合関連の製品製造業、等
・GLOVIA-C生産情報PRONESの原価管理システム開発に従事

趣味:旅行、サイクリング、映画、イラスト、等
座右の銘:人の和が大事

[2005年9月8日 掲載]


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