生産管理改革【基礎編】賢い生産管理で逆境に勝つ!
第3回 守りの生産管理から攻めの生産管理へ
源流での改善に取り組む
最終回の今回は、管理の概念を広く捉えて、より積極的な「攻めの生産管理」について考えていきます。
多品種小ロットの現代では、購入する材料や協力企業から納入される部品の種類は増え、在庫管理も難しくなってきています。また、加工や組み立ての方法も複雑になり、当然作業工程が増えて作業者もその都度異なる場合が多くなります。
最新の生産管理システムの中には、このような複雑で大量の部品を、きめ細かく管理する機能を持ったものもあります。自社に合ったシステムを選定し活用していくことは、現在では不可欠といえるでしょう。
また、可能な限りの材料・部品の標準化も考えていかなくてはいけません。特化した工作機械などの完全個別生産の場合を除き、多品種小ロットとはいっても、多くは標準仕様にオプションがついたりバリエーションが増えたりする場合が多いもの。設計者が各々好き勝手に部品や材料の指定を行うと、やたらと部品の種類が増えていくことになります。自社に設計部門を持っている場合、生産管理部門としても「この2つの部品は共通化できるのではないか」「同じ機能は材料を変えても実現できるのではないか」など、積極的に提案していく必要があります。VE(value engineering)とは、機能を追求して製品の価値を高めることですが、このような部品の標準化も視野に入れて考えるべきです。生産効率が上がれば、それは品質の向上に直結していきます。現在、改善の重点はどんどん源流指向になってきています。高度に発展した製品の生産は、一番源流となる設計の段階から改善を考えていかないと、生産の現場だけが頑張ってもなかなか効果が上がりにくくなっています。
しかし悲しいかな、中堅・中小企業の多くは自社に設計部門を持っていません。顧客企業の設計に従って加工・組み立てをしているところがほとんどではないでしょうか。この場合設計の改善は顧客企業の協力なくしては実現できません。また、設計変更を提案してもなかなか採用されるまでにはいたらないことが多いようです。しかし顧客企業にとっても、協力会社の生産性の向上は大きなメリットであるはずです。諦めずに提案をしていきましょう。不良が少ない、納期も厳守しているなど、日頃の信頼が高ければ顧客の対応も変わってくるはずです。
経営層も意識改善を
海外企業の意志決定は基本的にトップダウン方式です。日本の企業で1週間はかかると思われる決断を、1日で下してしまうこともあります。もちろん早ければいいというものではなく、判断を誤ると致命的な問題に発展してしまう可能性もあります。しかし海外企業とのスピード競争が激しい現在、スピーディーで効率的な意志決定方法を考えていくことも必要でしょう。
部品製造会社の東京S社も、海外企業との競争を意識し、決済のスピード化を図りました。ただしここでは、トップダウンによるスピード化ではなく、大幅な権限移譲で時間短縮を実現しています。
例えばこの会社では、今まで10万円以上の決済をするには担当者、係長、課長、部長、役員の計5人の印が必要でした。ところが部長や役員は出張が多いため、決済の印をもらうのに数週間も待つことも少なくありませんでした。そのために生産に支障をきたし、競合する企業にスピードの面で負ける事もしばしば。この状態を打破するために、この会社では10万円までは係長決済、100万円までは課長決済で実行できるように社則を変更し、成功しています。
意思決定のスピード化は、製造リードタイムの短縮に直結します。今一度、決済方法を見直してみてはいかがでしょうか。
自社の強みをはっきりさせる
規模の大小に関わらず、企業の独自性は以前にも増して重要になってきています。また時代の一歩先を行くためにも、社員の意識の向上が不可欠です。独自の取り組みで成功を上げている企業の例を以下に紹介していきます。
「スピードが強み」 東京T金型会社
金型業界も厳しい競争下にあります。韓国や台湾企業の進出により、価格ダウンと受注の減少が進行しています。
この会社では、競合に勝つには顧客のニーズに応えるとともにスピードアップがなにより重要であると考え、3次元CAD(コンピュータ支援設計)システムを導入。さらに勤務形態も変更して3交代24時間体制のシフトを組んで生産を始めました。当然生産管理部門もそれに対応した勤務体制を取って、昼夜休みない生産をバックアップ。そして「どこよりも速く金型を設計して納入します」というキャッチフレーズを大々的に掲げました。受注が拡大したのは当然のことです。
「人材が強み」 名古屋 F社
F社の社長さんは7つの会社を経営するオーナー社長でもあり、この不況下でも確実に売上を伸ばして利益を拡大しています。その秘訣は人材活用にありました。
年齢や経験もさることながら、本人の“やる気”を重視して、積極的な登用を行っています。そして社長自身はあまり細かいことに口を出さずに、本人に任せて仕事をやらせます。技術的な分野の勉強は自主的にさせて、会社としては経営哲学や成功哲学、コミュニケーションの重要性などの人材教育に力を入れています。
この社長がいつも口にするのは「WIN-WIN」という言葉。自分の会社だけが儲けるのではなくて、関係する会社が皆WIN(勝利)するという考え方です。現在は、名古屋を中心とした7つの関連会社と取引先が、お互いにWIN-WINで拡大成長をしていますが、その流れは全国に波及しつつあります。
「環境対策が強み」茨城G社
茨城県で電子部品を生産するG社は、中堅企業としては非常に早く、ISO9000S(国際標準化機構の品質システム認証)と、ISO14000S(国際標準化機構の環境管理システム認証)を取得した企業です。
工場の入り口には、燃えるゴミ、生ゴミ、ペットボトル、切削くず、アルミ、銅、鉄、等々の分別ごみ箱が置かれていて、作業者は必ず分別してゴミを出しています。さらに、従業員用食堂出口にも7つのごみ箱が置いてあり、食事の後の生ゴミやペットボトル等を分別して捨てるように工夫をしています。これだけ聞くと普通のように思えますが、この会社のすごいところは、その徹底ぶりです。社員の誰一人としてルールを破ることなく、実行しているのです。さらに、社長さんのお話では、この会社の従業員は家庭でもゴミの分別を徹底するようになったとのこと。そこまで意識を高めるためには、相当の啓蒙が必要だったことと思います。このような小さなことをきちんとやることが、環境に配慮した製品作り、工場のあり方へとつながっていくのです。そしてそれは、メーカーはもちろんエンドユーザーの信頼となって企業に戻ってくるのです。
これらの事例に見られる企業の強みは、現状の売上を維持するのに大切であることはもちろん、新しい取引先を開拓する際や、異業種に参入する際にも絶対に必要です。特長のない企業は生き残りさえ難しいのです。自分の会社の良いところはどこか、どの部分を強化していけば良いのか、経営者はしっかりとビジョンを打ち立てていくことが大切です。
3回に渡って生産管理の基礎的な考え方についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。第1回で述べた「5S」や「PDCA」をしっかりと実行していくことで、第2回・3回で紹介した具体的・積極的な管理が活きてきます。現代においてIT化は、効率的な生産管理を実現する上で必須です。その場合も、基本が徹底されている会社ほど、その能力をフルに活用しているといえます。
皆さんも、毎日少しでも前進させていくような心意気で、賢い生産管理を実現してください。
著者プロフィール
- 笠原 隆(かさはら たかし)
ノバ コンサルティング株式会社 代表取締役 - 29歳にJEMCO日本経営に入社。本部長を歴任して平成元年退職。ノバ コンサルティング株式会社を設立し、「生産管理」をはじめ、様々なテーマで小規模企業から大企業まで幅広く指導。経営指導歴30年、海外企業指導歴20年。VE、IE、QCと成功哲学をベースとして「売上げ拡大」「原価低減」「利益拡大」等の実際に効果を出す外科的なコンサルティングを行っている。講演、セミナー、教育も多数行っている。
http://www.remus.dti.ne.jp/~nova-co/
[2005年7月12日 掲載]
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