生産管理改革【基礎編】賢い生産管理で逆境に勝つ!
第2回 作業改善と工程改善
レイアウトから動作まで
第1回では、基本の重要性について述べましたが、今回はもう少し具体的な生産管理方法について考えていきましょう。
多品種小ロットへの対応、競争による価格引き下げの要求、納期短縮など、常に「改善」を考えた運営をしなければなりません。改善は難しく考える必要はありません。全ては「ムリ・ムラ・ムダ」を排除することに他なりません。
改善の方法を考える上で重要なのが、IE(Industry Engineering)で、作業や動作の効率化を図る手法です。これは20世紀初頭に考え出された生産管理の古典とも言えるものですが、基本的な考え方は現在にも共通しています。ここでは、仮に以下の4つに分けて考えてみます。
- (1)レイアウト改善
- (2)作業改善
- (3)動作改善
- (4)治具改善
(1)のレイアウト改善とは、その名の通り工場内の設備や人員の配置を改善することです。簡単なことのようですが効果が高いものです。一般的に、人が1m移動するのには1.1秒掛かると言われています。3m離れていると3.3秒です。これらの移動時間はムダに直結します。可能な範囲で出きる限り人の動きにムダのない配置を作りだしましょう。同じラインで流れる製品が大きく違う場合、その製品ごとに最適になるよう、可動的レイアウトにするということも考えられますが、現実的には工作機械の設置場所などの問題もあり、困難な場合も多いもの。しかし、レイアウトは変えないものではなく、常に改善をしていくものであるという認識はしっかりと持っていてください。
(2)作業改善とは、一人ひとりの作業を改善していくこと。(1)のレイアウト改善をもう少し小さな範囲で見たものです。これには作業員の動きを継続してビデオに録画し、分析することがとても有効です。さきほど1mの移動は1.1秒と述べましたが、足一歩は0.6秒です。さらに90度振り向く作業は0.8秒です。このレベルになると1秒以下の動きの改善です。これらは、材料の置き場所や工具の位置などで大きく変わってきます。
(3)動作改善になるともっと細かくなります。指が1cm動くのに0.0023秒といわれています。一部の先進的な企業では、このレベルで改善を行っているところもあるのです。しかし、ここに至る前にまだまだ改善の余地がありますので、そちらに神経を集中した方が良いでしょう。
(4)治具は中堅・中小企業でも自社でオリジナルを製作しているところも多いもの。ちょっとしたアイデアで大きく作業効率が変わってきます。中には発明に近いようなものを作りだす企業もあります。そのアイデアもムダの発見から始まります。道具に対しても、常に改善の意識を持っておきたいものです。
ボトルネック解消で全体最適!
IEによる作業改善とならんで重要なのが、「工程改善」です。従来の工程改善では各工程それぞれを、いかに最適化できるかが問題とされてきましたが、その考え方では部分的な改善しか実現できず、ライン全体の作業効率向上に結びつかないこともあります。全体最適を実現するために非常に有効なのが、イスラエルのゴールドラット博士が創り上げたTOC(制約条件の理論)です。
いくら作業効率の良い優秀な工程も、ひとつの作業効率の悪い工程があると、それに引きずられてしまいます。TOCは、この「ネック(ボトルネック)」になっている工程を徹底的に改善し、ライン全体のスピードを均一にすることで、全体の効率を向上させていくのです。
最初にしなくてはいけないのは、ネックを見つけだすことです。この場合に限ったことではありませんが、現代では「目に見える管理」をしていくことが非常に重要です。たたきあげの熟練作業者であればあるほど、自分の勘に頼った管理をする傾向があります。熟練工の勘は非常に大切ですが、ある程度の規模以上の工場では、きちんと数値で管理をすることが不可欠です。各工程をストップウォッチで測定し、グラフに表してみましょう。(例:図1)
図に表してみると、どこがネックになっているか一目瞭然です。この場合のネックはD作業であることがわかります。さて、いかにこれを解消していくかが問題ですが、そのためにまず原因を解明しましょう。

(1)作業自体が原因の場合
まず真っ先に考えるべきことは、ネックであるDで行っていた作業の一部を前工程のB・Cや、後工程のEで行うことはできないかということです。Dでする作業量を減らしてしまうことで全体をならしてしまうのです。作業の総量は減ってないわけですが、均一化することでE作業の手待ちを解消することができます。柔軟に考えれば、D工程でやらなくてもよい作業もあるはずです。
また、作業時間を詳しく分析するのに大いに役立つのが、人と機械の動きの関連をまとめた「マンマシンチャート」です。まず、機械のボタンを押してから稼働している時間はどれだけか、また機械が止まっている時間はどれだけかをストップウォッチで計測します。そして、その間に作業者が何をしているかを観測するのです。作業者が機械の止まるのを待っているような状態であるならば、もう1台の機械を同時に操作することも考えられます。これを「多台持ち」といいます。多台持ちの効果は絶大で、一気に生産性を上げることができますが、小規模な企業では設備の関係などでなかなかできていないのが現状のようです。多台持ちが無理な場合でも、機械が動いている時間を有効に使い、機械待ちを解消することで効率はグンと上がります。
(2)材料の問題
材料が足りない、在庫が無いなどが原因でボトルネックを作りだしてしまうケースも散見されます。また、とても多いのが材料の不良。その材料が自社の前工程で作られている場合はそこを改善していけば良いのですが、やっかいなのはその材料の製作を協力企業に委ねている場合です。これを解決するには、協力企業の管理を徹底するしかありませんが、そのためにはIT化が不可欠です。生産管理システムなどを通して、協力企業とも情報を共有化することで、協力会社の実際の作業進捗状況を把握することができます。自動車関連業界でもいくつか例があります。
例えば自動車部品製造の名古屋M社では、関連会社間で生産管理システムの統合が不可欠と考え、設計・生産・販売のデータベースを共有化しました。これにより、リアルタイムで部品の生産状況が把握でき、在庫待ちにつながりそうな協力会社のスケジュール遅れなどを未然にキャッチし、早め早めの対策を打てるようになりました。その結果在庫の管理は抜本的に改善され、無駄な手待ちが原因だったボトルネックを解消し、リードタイム短縮が実現できたのです。さらには、設計や販売も含めた大幅な改善もしやすくなり、コストダウンまで実現したのです。情報化の推進は、在庫管理にも大きな効果をもたらすことが多いといえます。
材料待ちが原因のボトルネックを解消するためには、ボトルネックの部分には特例的に仕掛け在庫を持っても良いという考え方もあるようですが、私はこれには賛同しかねます。やはり需要変動の激しい現況を考えると、仕掛け在庫はなるべく作らない方が良いと思います。それは最後の手段として、他の方法で在庫管理を徹底することを考えましょう。
著者プロフィール
- 笠原 隆(かさはら たかし)
ノバ コンサルティング株式会社 代表取締役 - 29歳にJEMCO日本経営に入社。本部長を歴任して平成元年退職。ノバ コンサルティング株式会社を設立し、「生産管理」をはじめ、様々なテーマで小規模企業から大企業まで幅広く指導。経営指導歴30年、海外企業指導歴20年。VE、IE、QCと成功哲学をベースとして「売上げ拡大」「原価低減」「利益拡大」等の実際に効果を出す外科的なコンサルティングを行っている。講演、セミナー、教育も多数行っている。
http://www.remus.dti.ne.jp/~nova-co/
[2005年6月20日 掲載]
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