知的財産と中堅企業
第4回 発明を活かす!特許に命を与えましょう。
知的財産を有効活用するためには「特許でひと儲け!」的な発想もひとつですが、「特許的発想で会社をカイゼン」という考え方は、企業人として大変に有益であることを、これまでお話してまいりました。今回は、少し違う視点から、実際に特許でビジネスするための方法についてお話します。
特許を譲ってもらうという発想
年間40万件ほども出願される特許について、権利化される特許は約15%程度であると言われています。出願された特許の中には審査請求(特許になるかどうか特許庁に審査してもらうための手続き)もせず、そのまま権利が放棄されてしまったものもあります。さらに、権利化された特許についても、実際に製品として応用されるなど、ビジネス上有益に活用されているものは、半分以下です。
特許出願には、権利化を狙うものと、「このような研究をしていますよ!」という公開目的のものがありますので、一概に上記の確率が低いとは限りませんが、逆に言うと、活用されていない膨大な特許という情報が、そこに眠っていると考えられるのです。
実は、休眠特許、未利用特許、未活用特許と呼ばれる特許の中には、活用されたがっているものが多いのです。例えば、取得したものの自社で活用されていない特許には、以下のような事情が考えられます。
- 商品化のための資金が足りない。
- 商品化するために、より研究を進める人的リソースがない。
- 自社の事業分野から、少しはずれている。
- 特許を販売するために取得した。
このような事情を抱えた特許や企業について、発想の転換をすると下記のようになります。
- 資金はあるが、商品のネタがない。
- 研究者はいるが、すぐれたアイデアが足りない。
- 自社の事業のビジョンにあてはまるアイデアが欲しい。
- 積極的に特許をさがしている。
いかがでしょうか。貴社でこのようなニーズがあるとすれば、それは膨大な休眠特許が、宝の山に見えてくることでしょう! 場合によっては、自社で研究開発するよりも、手軽に、低予算ですぐれた特許が手に入る可能性があるのですから、休眠特許を放っておく手はありません。
休眠特許を探しに行こう!
休眠特許を探す場合、その特許だけに依存して発想するよりも、「自社のアイデアや特許に足りない部分を探す」ようにすると、より具体的に検索できるでしょう。
「アイデアは、アイデアにつながって、より良いアイデアに成長する・・・」と、よく私は言っているのですが、この発想は、子育てにも似ている気がします。子供のころから夢見がちだった私は、よくとっぴもない言葉を口にしました。「宇宙飛行士になりたいなぁ・・・」そんなとき、「まぁ~た、そんなバカなこといって!」なんていわれると、ついショボンとしてしまうものですが、私の両親は「あはははっ・・・」となんとも言えない表情をしていたものです。後になってみれば、夢見がちな性格を否定されずに育ててもらえたことに、とても感謝しています。がんばってみれば可能性が見えてくることも、たまにはあるもんだよなぁ~なんて思えるこの性格は、本当に両親のおかげなのです。
ひとつの特許で利用しにくいのであれば、他の特許を組み合わせる。複数の特許を組み合わせて、よりよい特許を組み立てる。あきらめるのではなく、補足すべきアイデアの探索を行っていけば、多くの場合、解決の糸口が見えてくることでしょう。
独立行政法人 工業所有権情報・研修館のホームページ・サイトには、「特許流通促進事業」という事業専用のページが設けられています。(URL http://www.ryutu.inpit.go.jp/index.html)そのページのメニューに「開放特許活用例集」という大変に有意義な情報があります。これはサイト上で紹介されている開放特許を利用してビジネス化した事例が満載された冊子ですが、PDFファイルを無料で閲覧出来ますので、ぜひご覧ください。
また、同じサイトには、積極的に特許を譲りたい・活用して欲しいという情報が検索できる「特許流通データベース」(URL http://www.ryutu.inpit.go.jp/db/index.html)というシステムも用意されています。
もし、貴社において具体的な商品・分野・内容についての特許やアイデアを求めているのであれば、私のような知的財産コンサルタントに検索を依頼することも可能です。実際、私が現在扱っている特許流通事業の中でも大規模なものの一例をご紹介いたしましょう。
宇宙航空研究開発機構(JAXA:ジャクサ)の保有する数百件という特許について、利用いただける企業を探しています。JAXAというと、H2Aロケットや宇宙ステーションなど、われわれの生活とはかけ離れたイメージがありますが、実はJAXAの特許は非常に身近です。ロケットや宇宙ステーションでの空気清浄や環境維持、衛生管理のための特許は、地上でも比較的容易に転用できます。例えば、星を観測するデジタルカメラの特許は、監視カメラの技術の応用であったり、電子機器の省電力化、高速通信技術、高耐力な材質・・・などなど、最先端でありながら身近な技術というものが意外と多くあるのです。
特許の健康診断?!
さて、休眠特許を利用する場合、あるいは自社の特許を活用していただける企業に譲る場合などに浮上するのが、特許の「価値」の問題ではないでしょうか。特許の価値の感じ方は、立場によってまちまちです。以前にもお話しましたように、特許をライセンス貸しする場合には、その特許の利用によって得られた利益の○○%を見返りにいただく・・・というような契約が多くなっています。また、契約時の一時金の設定や、特許を売る・買うといった場合の金額の設定時には、特許の価値を診断し、適正価格を当事者同士が納得したうえで契約をすることが、後々のトラブルも避けられるという考えが浸透してきています。


この表は、弊社で行っている特許価値診断業務における成果品の一部です。さまざまな診断項目に答えを入力していくことで、結果的にこのようなグラフに特許の価値目安が表示され、さらに金額に換価していきます。
ここで注目すべきは、特許の一般的な流通シーン上での特許の価値とは、その技術的な価値だけではなく、その特許を利用した商品が開発しやすいか?量産のしやすさ、製品化の容易性、当該市場の今後の発展性、商品の広報・営業の容易性・・・などといったビジネス上の多彩な観点から評価する必要があるということです。お気づきの通り、素晴らしい発明が、すべて利益にしやすい発明とは限りませんから、こうした事業性までを包括した評価・診断を行い、特許の売買における資料として活用されるようになってきたのです。もちろん、自社の特許をこのような評価・診断手法によって価値の高いものから維持するように戦略を練るなどしても有益でしょう。
さて、今回で私の記事の最終となりました。皆様、ぜひ今後も特許を有効活用するために、発想法を工夫し、特許を探し求め、診断し、楽しんで特許戦略を進めていってください。
お付き合いくださいまして、本当にありがとうございました!
著者プロフィール
山岡 敬章(やまおか たかあき)
株式会社ワイズシステム 代表取締役- 1964年生まれ。23歳の時にシステム開発を主業として独立起業。以来、数百システムにのぼる構築を行い、提案型のコンサルティング・ファームとして成長。PC、LAN関連書籍多数。ICカード関連、PC関連雑誌、電波新聞などに連載を多数執筆。
途中、ベンチャー企業としてもてはやされ、その後、倒産・破産も経験。再スタートしたのは36歳。現・株式会社ワイズシステムの前身となる、合資会社を設立。自身の特許による成功経験を活かし、特許戦略コンサルティング・特許流通を事業化。また、IT部門を率い、特許分析ソフトウェア「ぱっとマイニング」を全国発売。また、企業効率化のための「PDCA」ソフトウェアのASP事業を開始。企業を確実に強くするために、机上の論ではなく、発想力の強化、具体的なツール提供、現場に入り込んだ業務・心理分析を一社で行う・・・をモットーにしている。
http://www.wides.com/
[2007年8月9日 掲載]
関連記事
- 第1回 知的財産、発明ってなぁに?
- 第2回 発明って、どこからやってくる?
- 第3回 知的財産ってお金になるの?
- 第4回 発明を活かす!特許に命を与えましょう。
記事についてのご質問・ご意見ご要望など、お気軽にお問い合わせください。

