知的財産と中堅企業
第2回 発明って、どこからやってくる?
フロッピィディスク、クォーツ型腕時計、オセロゲーム、乾電池、シャープペンシル、汎用型テープレコーダ、電球用の二股ソケット、人工真珠、インスタントラーメン……。ご存知の通り日本発、世界に広がっていった発明品たちです。液晶付きの小型デジカメや、ケータイ電話に含まれる数多くの技術は、世界でも日本の特許シェアは最大であると言われています。エジソンいわく、「天才は1%のひらめきと、99%の努力」。私のような凡人でも、普段の仕事のなか努力を重ねてきたある日、ふっと解決案を思いつく瞬間は、どんなにうれしいことでしょうか!
『カップラーメン』は偉大な発明
インスタントラーメンの発明者・故安藤百福氏(日清食品(株)創業者)は、昭和30年代に、家庭で簡単に作れるラーメンの開発を始めました。どうやって麺を乾燥させ、保存できるようにするか?という問題にずっと頭を悩ませていたところ、てんぷらを見て「はっ」とひらめいたといいます。それを原点に、麺をフライしたチキンラーメンが誕生したのです。ただしチキンラーメンには必須といっていい「どんぶり」という概念のないアメリカの家庭に、これをどうやって浸透させればよいか、次の苦難が待っていました。アメリカ人が、紙コップにチキンラーメンを二つに折って入れるのを見てカップ麺を思いついたまでは良かったのですが、お湯を入れるとカップの中で麺が浮いてしまいます。麺が浮いてこない、あのカップの内側の微妙な角度は、次の大発明となりました。あさま山荘事件の折、機動隊隊員がカップ麺を食する姿がテレビ中継され、カップラーメンが爆発的に日本中に広まったという逸話もあります。
『ソフトバンク』も発明の成果
こちらも有名はお話ですが、ソフトバンクの孫正義氏は、まさに発明でいまの企業家としての礎を築いたといえるでしょう。大学生時代には、一日一アイデアからはじめ、3つの単語帳を使い、めくって出てきたキーワードの組み合わせからアイデアを練るという「強制関連法」と呼ばれる手法での発明を行っていたそうです。「音声機能付き多国語翻訳機」を発明し、自らシャープに売り込みを行い、ソフトバンク創業の原資を作ったのはご存知の通りです。
発明は、小さな「気づき」から
発明の源とは、「発見=気づき」、そして、発明とは「解決」です。いつも「気づき」の精神を持って思考することが、発明への第一歩となります。
- 身の回りの問題を発見する。
- ひとつひとつの問題の中に隠れている原因を探す。
- 問題の解決策を見つける。
このように書いてみると簡単なことでも、日々実践し、結果に結び付けて行くのは大変に難しいことです。それは何故でしょうか?それは忘れるから…と、冗談のような簡単な話ですが、前出のソフトバンクの孫氏の話を思い出してみてください。書きとめることこそ、後々の資産となるのです。
そこで、発明のためのメモ術・思考術を、3つの図にして解説します。これを薄くコピーして、手帳に張っておく。その上に濃いインクの筆記具でメモを書いていってみてください。自社のスタッフに配布して、思考法のトレーニングに使うのもいいでしょう。私の場合は、赤色でコピーを取り、そこに黒インクで書き込む、といったテクニックを使って説明することがよくあります。
図1
見つけた「問題」を書き出し、その原因をどんどん辿ります。通常、問題の多くは、複数の「原因」から成立しています。その「原因」も、問題のひとつと考えると、「問題」を構成しているルーツは、想像もしなかったような「原因」から発生していることがあるのです。

図2
「図1」の応用編です。前出の方法と同様に、「問題」を中央にして、「原因」を書き出します。ただし、同じ「原因=問題点」が違う場所で登場した時に、それらを線で結んでみましょう。思わぬひとつの原因が、アチラにもコチラにも影響していた!…などということが見えてくるかも知れません。

図3
言わずと知れた「PDCA」サイクルの図です。これを発明用に応用すると、「P=気づき D=分析 C=解決法 A=実現性の検討」となります。私はこれを企業の研修でよく使いますが、技術者の方にも、自分の技術の見直しや検討し直すのに役立つと、大変好評です。

いかがでしょうか。「発明」、「特許」といっても、最初は小さな「気づき」がスタートなのです。「ああ~、あれ、僕も問題だと思ってたんだよなぁ」とか、「ああしたら解決するの、前に思いついていたんだよなぁ」と気づいていても、メモをとっていなかった方は、「書きとめること」をぜひ今日から実践してみてください。天才と呼ばれるエジソンやアインシュタインもメモ魔だったそうですし、何よりメモしておくことで、頭の整理=ストレス軽減になって、脳寿命が延びるという説もあるくらいですから。
発明に、もっと価値を与える!
2007年4月、特許庁が『戦略的な知的財産管理に向けて―技術経営力を高めるために―<知財戦略事例集>』
(http://www.jpo.go.jp/torikumi/puresu/puresu_chiteki_keieiryoku.htm)を公表しました。これは、実際に企業からヒアリングした内容をもとに、実例を挙げて知財戦略を説明した資料となっており、ぜひ一読をお勧めいたします。この資料に、下記のような一節があります。
「企業内において日々実際に創造されている発明は、各企業にとって大切な財産であることに間違いはない。この発明を適切に保護・管理するためには、発明発掘・発明提案・発明報償などの社内制度を確立させることが重要である。」
企業内において日々創造されている発明…。私は、この言葉、非常に意義深いものだと感じます。新しい価値の創造の継続は、企業にとって大変に強い道具です。しかし、道具の材料が社内に散らばっていても、多くの社員を抱える中堅企業では、誰がどのように「材料」を拾い集め、管理し、組み立てるのかといったことも課題となってきます。そこで、決して知的財産のエキスパートでなくてもかまいませんから、責任者を決めて「小さな発見の繰り返しプロジェクト」を発足してみるのはいかがでしょうか。「モッタイナイ」は、目に見える資源のことだけではありません。「アイデアのモッタイナイ運動」を明日から全社をあげて取り組んでみませんか。そうした運動を続けることで、「ものづくり」と「発明づくり」のバランス感覚が、成長することと思います。
ところで日本は、その昔「サル真似国家」だと言われていました。他の先進国の技術をより良い物にして具現化し、実ビジネスで儲ける。アイデアを、より緻密に分析・検討して、より良いものづくりを行うのは日本人の特技です。この「サル真似」こそ、「改善」の原点であり、「カイゼン」という言葉は、いまや技術を発展させる最大の技(ワザ)として世界的にも定着しているのです。そして、日本国内においても、この「技」を、今一度本格的に導入する企業が増加しているのをご存知でしょうか?
ここのところ私が扱う仕事のなかで、「ある技術分野」もしくは「競合であるA社、B社、C社」の特許を「一覧表」にしてくれ、という依頼が後を絶ちません。特定分野の特許の状況、他社の特許の状況を知ることは、自社の技術・特許の有意義性や方向性の検証となるばかりか、他社の有力な特許を見つけ出し、それを「より良いもの」に改良して自社の研究に役立てることができるのです。先にある特許をより良いものにして出願した特許を「改良特許」、「応用特許」などともいい、低コストでの研究開発、特許戦略にも役立っているのです。一から発明するのも良いですが、既存技術やアイデアの応用・発展形の構想からはじめるのであれば、気楽に低コストで発明に取り組めるかもしれません。
さて次回は、「発明はかっこいいけど、やっぱりお金になったほうがいい」「より自社のためになる発明とは?」など、お金にするための発明、発明をお金にすることについてお話してまいります。
著者プロフィール
山岡 敬章(やまおか たかあき)
株式会社ワイズシステム 代表取締役- 1964年生まれ。23歳の時にシステム開発を主業として独立起業。以来、数百システムにのぼる構築を行い、提案型のコンサルティング・ファームとして成長。PC、LAN関連書籍多数。ICカード関連、PC関連雑誌、電波新聞などに連載を多数執筆。
途中、ベンチャー企業としてもてはやされ、その後、倒産・破産も経験。再スタートしたのは36歳。現・株式会社ワイズシステムの前身となる、合資会社を設立。自身の特許による成功経験を活かし、特許戦略コンサルティング・特許流通を事業化。また、IT部門を率い、特許分析ソフトウェア「ぱっとマイニング」を全国発売。また、企業効率化のための「PDCA」ソフトウェアのASP事業を開始。企業を確実に強くするために、机上の論ではなく、発想力の強化、具体的なツール提供、現場に入り込んだ業務・心理分析を一社で行う・・・をモットーにしている。
http://www.wides.com/
[2007年6月14日 掲載]
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