知的財産と中堅企業
第1回 知的財産、発明ってなぁに?
「ものづくり大国」「電子立国」であった日本が各国の猛追を受け、「JAPAN As Number One」ではなくなったころ、「知的財産」「特許戦争」という言葉がビジネス界に浸透を始めました。それはアメリカの“ものを作るより先に特許を押さえろ!”という「プロパテント戦略」がスタートして久しく、効果を発揮し成果となってきた時期でした。IBMの収益の柱のひとつとして大きな特許収入が計上され、日本企業は追いかけるように特許熱に浮かれ始めるのです。そして小泉内閣(当時)は「知的財産立国」というビジョンを打ち立てました。
今日、日本の特許・知的財産は、諸外国の企業からも常に注目されており、日本の得意分野はもちろん、あらゆる分野において調査依頼が相次いでいます。特許紛争については海外企業との事例が増加する一方、発明者が企業を相手取って発明報酬を要求するケースなど、知的財産の話題はビジネストークの定番となっているほどです。LSIや発光ダイオード、薄型ディスプレイなどの係争の話題は、まだまだ記憶に新しいところではないでしょうか。
現在日本では、年間40万件以上もの特許や実用新案が出願されています。たとえば身近にある携帯電話や薄型テレビなどの電子機器は、数百といった特許のかたまりです。玉子パックや缶飲料の形状・表面加工にまで重要な特許が活きています。けれど特許は、大企業だけの特権ではありません。中堅企業にとって、強い武器になることも確かなのです。ではいったい「知的財産」とは何なのか? 今回は原点からお話いたします。
「知的財産」の種類

上図にあるように、「知的財産」という言葉は非常に幅の広い“概念”のような表現です。前記のように、ここで話題としていく「特許権」や「実用新案権」などの「産業財産権」をはじめ、商品の名前・形、小説や音楽・絵画などの世界で話題となることの多い「著作権」、また、個々人の姿そのものに発生する「肖像権」なども知的財産に含まれます。
そもそも特許制度の目的はなんでしょうか。もちろん発明者の権利と利益を守ることです。特許法には、こうあります。
「発明を奨励し、産業の発達を図る」
一定の期間、発明者の権利を守るという“特典”を与えますから、より多くの発明を世の中に送り出し、産業の発展に貢献してください・・・というわけです。さらに、特許は出願から1年半経過すると、“公開”されます。公開された内容は、“公開公報”として工業所有権情報・研修館「特許電子図書館」というホームページ(http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)で検索することが可能となるのです。この情報は、まさに生きた情報倉庫です。一度自分自身で覗いてみてはいかがでしょうか。また、このホームページの中には、使ってほしい特許、欲しい特許が登録された「特許流通データベース」というものもありますので、貴社に思わぬビジネスの大ヒントが得られるかもしれません。
「特許」になる条件
「特許」とは、どのような条件を満たせばよいのでしょうか。
「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」
と特許法では定義されています。難しい文章ですね(笑)
まず、自然法則を利用している・・・という意味を理解せねばなりません。簡単に言うと、非常識ではないこと。特別な条件を与えない限り、水は、高いところから低いところに流れ、リンゴは木から地面に落ちます。これは、「常識というルール」であり、自然法則です。一見複雑なパソコンでも、電子がどのように流れ、蓄積され、圧力を生むかといった自然法則を積み重ねた結果、動作しているのです。
一時期流行した「ビジネスモデル特許」の多くが特許庁の審査の結果、拒絶され、無駄となったように、人為的な決め事は“自然法則”を利用したものではなく、結果は確実ではありません。ただし、“データベース”や“ソフトウェア”といった“自然法則”をコアにした「ビジネスモデル特許」は認められる可能性があるわけです。

上図は、近年の年度ごとの特許出願件数の推移を表したものです。1994年頃には35万件程度であった出願数が、2000年前後に向けて急増、ビジネスモデル特許熱が冷め一時的に出願件数が微減するものの、近年の近隣国を初めとした攻勢に対抗すべく、出願件数の増加傾向に変わりはありません。
発明は利益率の高い仕事と考えるべき
さて特許、発明というと“高度なもの”とか“研究費用が莫大にかかるもの”とばかり考えがちです。しかし、主婦の日曜発明品であっても何億円もの売り上げをあげるものもあります。そうです、貴社の中を探すと、たくさんの発明が眠っているかもしれないのです!
実は、私のうけたまわる仕事の多くが、そうした“発明の発掘”です。
「こんなことは当たり前」
「難しいものではないから、発明なんて言えません」
「うちの会社では使えないから、特許出願していません」
ああ~、なんてモッタイナイ(笑)もうお察しの通り、発明は社内、もしくは皆さんの頭の中に眠っているかもしれないのです。さらにいえば、発明とは創り出すものです。今抱えている問題点を解決するとき、そこには多かれ少なかれ「発明」がもたらされていると考えることが大切です。
次回からは、「発明」を日常化し、会社を変えていく「思考法」についてお話してまいります。
著者プロフィール
山岡 敬章(やまおか たかあき)
株式会社ワイズシステム 代表取締役- 1964年生まれ。23歳の時にシステム開発を主業として独立起業。以来、数百システムにのぼる構築を行い、提案型のコンサルティング・ファームとして成長。PC、LAN関連書籍多数。ICカード関連、PC関連雑誌、電波新聞などに連載を多数執筆。
途中、ベンチャー企業としてもてはやされ、その後、倒産・破産も経験。再スタートしたのは36歳。現・株式会社ワイズシステムの前身となる、合資会社を設立。自身の特許による成功経験を活かし、特許戦略コンサルティング・特許流通を事業化。また、IT部門を率い、特許分析ソフトウェア「ぱっとマイニング」を全国発売。また、企業効率化のための「PDCA」ソフトウェアのASP事業を開始。企業を確実に強くするために、机上の論ではなく、発想力の強化、具体的なツール提供、現場に入り込んだ業務・心理分析を一社で行う・・・をモットーにしている。
http://www.wides.com/
[2007年5月10日 掲載]
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