「海外進出」
第3回 中国進出成功法
前回は、国別に進出方法を説明しました。今回は、中でも最も注目の集まる中国への進出方法について説明します。
段階を踏んだ進出方法
(1) 目的を定める
まず進出する上で重要なことは、中国進出の目的を明確化することです。従来は、中国の安い賃金を利用するために中国に部品等を輸出し完成品を日本に輸入する委託加工が高い比率を占めていました。現在でも高い比率を占めていますが、徐々に比率は落ちてきています。代わりに、中国市場での販売を目的とした進出が増えています。
(2) 地域を選択する
目的を決めたら、適切な地域を選択します。一口に中国といっても地域差がかなりあります。これについては、後で詳細に述べます。
(3) 出張を中心
現地企業との交渉やサンプル提示などの取っ掛かりとしては、まずは出張を中心として行うのが現実的です。ただし、法人としては銀行口座が開設できないところが難点です。
また、滞在日数が183日を越えると、個人所得税の納税義務が出てきますので注意が必要です。
(4) 駐在員事務所の開設
会社は設立せずに、本社の代表機構としての駐在員事務所を開設します。可能な業務は、情報収集・連絡業務のみで、営業活動はできません。費用も少なく、また、短期間で実現できる点がメリットです。2003年にこの形態の課税対象が明確化されましたが、メーカーが自社のための調査を行う以外は、課税対象となることが多いようです。
(5) 委託加工
加工だけを委託するのであれば、中国に原材料を輸出し、中国で加工を行い、製品を日本に輸入する委託加工が可能です。原料を有償で提供する「進料加工」と、原料を無料で供与する「来料加工」があります。
(6) 販売代理店による販売
販売だけを先行させるなら、販売代理店に任せる手があります。ただし、信頼できる販売代理店の選定や契約の確認が必要です。
(7) 企業設立
本格的に直接投資を行うためには、会社を設立します。以下の3つの方法があります。
合作企業は、中国企業と外国企業の共同出資で、利益配分は出資比率に比例しないなどの柔軟な契約が可能です。1990年代初期には多く利用されていましたが、最近は利用が少ないようです。
もう一つの中国企業と外国企業との共同出資の形として、合弁企業があります。利益配分は、出資比率に応じてなされます。長所は、中国側の設備・人材などが利用できるほか、販売ネットワークを利用可能であるため、初期投資が少なく、また、短期間で軌道に乗せることが可能です。しかし短所としては、経営が中国企業ペースになりがちで、中国企業から余剰人員や老朽施設を押し付けられることもあるようです。
最後は、100%外国資本で設立する独資企業です。近年最も増加しており、日中投資促進機構による調査では、2002年以降に日本企業が設立した企業のうち、約8割が独資企業となっています。長所としては、経営面コントロールが可能である、技術の流出が抑えられるといった点です。以前はあった輸出義務が撤廃されたため、国内販売も可能となりました。短所としては、資金や経営資源の負担が大きいこと、政府や現地企業とのネットワーク作りが難しいことが上げられます。
最近の独資企業に対する規制緩和の進展を考えれば、まずはこの独資企業の検討がお勧めです。
地域別進出方法
次に、進出する地域について解説します。中国は地域格差がかなりあります。進出目的や業種によって進出すべき地域が異なります。
日本企業が進出する地域は、主に沿岸部で、東北、華北、華東、華南の4つに分類されます。以下では、この4つの地域について説明します。
(1) 東北地方
東北地方は、遼寧省、中でも大連市への進出が中心となります。信金中央金庫の「中国投資ガイドブック2005年版」によれば、11%の日本企業が東北地方に進出しています。大連市は、日露戦争後に日本に租借権が譲渡されたため、日本と関係が深い地域です。そのため進出外国企業の中での日本企業の割合が非常に高く、日本に対して友好的な地域です。また、日本語学習者も多くいます。人口は562万人で、一人当たりGDPは34,932元(2004年)となっています。「通商白書2005」によれば、消費を牽引する高所得者数は、130万人となっています。
信金中央金庫の調査によると、進出目的としては労働力が63%と最も多く、他地域に比較して原材料の確保の割合も高くなっています。日本企業の進出業種は、様々な業種が混在していますが、他地域に比較して食料品や木材・パルプなどの資源型産業が多くなっています。
以上より、豊富な資源と安価な労働力を利用した製造業の進出に適した地域となります。
(2) 華北地方
華北地方は、北京市、天津市、山東省を中心とした地域で、遼寧省とともに環渤海湾経済圏を形成しています。2008年の北京オリンピックを控え、ますます発展が期待される地域です。信金中央金庫の調査によれば、日本企業の18%が華北地方に進出しています。進出目的は労働力が55%と多くなっています。進出業種は、金属、食料品が多く、商業も13%と多くなっています。教育レベルが高く、今後はIT産業の伸びも期待されています。「通商白書2005」によれば、消費を牽引する高所得者数は、230万人となっています。
(3) 華東地方
華東地方は、上海市、浙江省、江蘇省を中心とした地域で、長江デルタ地域とも呼ばれます。2010年の上海万博に向けて更なる発展が期待されています。
この地域は日本企業からの進出が最も多い地域で、信金中央金庫の調査では、49%の日本企業がこの地域に進出しています。進出目的として、市場を期待する割合が最も高くなっています。実際、上海市の一人当たりGDPは、55,090元と非常に高くなっています。また、「通商白書2005」によれば、消費を牽引する高所得者数は、長江デルタ地域全体で880万人と、大きな市場が広がっています。
日本からの進出企業は、繊維、機械、商業、その他製造業などが多くなっています。特に商業が多いのが特徴です。
この地域への進出は、中国市場での販売を目的とした製造業や商業などがお勧めです。
(4) 華南地方
華南地方は、広東省、深せん市、福建省などを中心とした地域で、珠江デルタ経済圏と呼ばれることもあります。
信金中央金庫の調査では、15%の日本企業が進出しています。進出目的は、日本市場への供給、低廉な労働力の割合が高くなっています。業種は、機械、化学が多くなっています。輸出加工型企業の進出が多くなっています。
消費も盛んな地域です。一人あたりGDPも非常に高く、深せん市は59,271元、広州市は56,300元となっています。また、「通商白書2005」によれば、消費を牽引する高所得者数は、広東省だけで890万人と、大きな市場が広がっています。
中国の市場としての潜在的な可能性は、やはりかなり大きいものといえます。中国の商慣習や経済事情、地域特性をしっかり考えて準備に取りかかりましょう。
最終回となる次回では、実際に海外に進出して成功を収めている企業の事例を採り上げて見ていきます。
著者プロフィール
小島 琢矢(こじま たくや)
小島経営研究所 代表- 1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 博士課程修了。博士(学術)。チェスの1993年世界青年(U-26)チーム選手権では 日本代表キャプテンを務めた。大学院、NTT基礎研究所では、コンピュータ囲碁の研究を行う。その後、NTTコミュニケーションズ(株)に移り、マーケティング、経営企画などを担当。
2005年3月に独立し、現在、経営コンサルタントとして、コンサルティング業務、講演、各種執筆を行っている。専門は、ブルーオーシャン戦略、経営品質向上プログラム、マーケティング、内部統制、リーダーシップなど。
著書:「ポケット図解 新会社法がよ~くわかる本」(秀和システム) (2005年11月出版)
http://www.kojima-keiei.biz-web.jp
[2006年5月11日 掲載]
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