ブランドづくりは信頼づくり
第2回 B to B ブランド構築
B to B 企業にもブランド構築は大切
ブランドには大別して「商品ブランド」と「企業ブランド」があります。“自社ブランド商品”を持たず、特定の業者やお客様を対象にするB to B 企業では、ブランド形成に積極的ではない企業も多いと思います。しかし、“自社ブランド商品”がない企業でも、「企業ブランド」は必ず存在します。それは「品質」や「スピード」などの自社の強み・特長であり、それこそがブランド、すなわち企業の評判につながっていくのです。ブランドを明確化することで、企業顧客から指名を受けるようなビジネスポジションを確立でき、ディスカウントを要求されないような製品、サービス作りにつながるのではないでしょうか。
地道な活動がブランドを育てる
「ブランド」を維持し育てていく観点(ブランドマネジメント)から見れば、それをどのように伝えるかが重要になってきます。大企業のように広告宣伝費にコストをかけることはなかなかできません。その場合のポイントは「社内コミュニケーション」と「口コミ」です。
中堅企業の「社内コミュニケーション」は、大企業に比べ組織の階層や規模が大きくない分、企業トップのビジョンが全社的に行き渡りやすいという利点があります。だからこそ日頃から社長のビジョンやメッセージを、社員に対して積極的に発信することが大切なのです。自社の製品やサービスに誇りを持ち、会社の成長を信じる組織は、おのずと「企業ブランド」が芽生えます。そしてそれは、お客様への適切な応対やサービスの姿勢に現れ、対外的な企業の評判を形成していくのです。
「口コミ」もインターネットにより、今までにないパワーを持つようになりました。現在では様々なB to B 情報サイトや業界サイトなどで、消費者や購入企業がそれぞれに意見交換や情報交換をすることができます。規模は小さくともしっかりとブランドを確立している企業は、こうしたインターネット口コミで確実に信頼を勝ち得ています。
大きな視点でブランディングを考える
小規模な企業が、自社のサービスや製品の存在を業界に広く認知してもらう方法の一つとして、コンソーシアムの設立が挙げられます。優れた技術を持っていても、埋もれてしまっている企業は数多く存在します。そのような信頼できる優良企業を集め、自らがリーダーシップを取り、グループを立ち上げるのです。そしてそのグループ全体で力をあわせ、認知度の向上を目指していきます。ネガティブに考えればマーケットの奪い合いにつながると感じるかもしれませんが、視点を「TAM(Total Available Market)の拡大」へと転じて、同業種の横のつながりを有効活用することで、より大きな案件への対応も可能になります。今まで付き合いのなかった企業と取引を始めるチャンスも増えます。まず大きな受け皿をつくり、その中で各企業が独自性を発揮していけばよいのです。顧客企業にとっても安定供給と品質の標準化につながり、安心して発注することができます。 優れた商店街は各店舗に独自性があり、かつ全体のクオリティを保っています。それぞれの良さを活かして相乗効果を生み出し、ブランド力を上げていく手法は、古典的な王道ともいえます。
特定産業向けの部品を納入している企業では、大手メーカーからの指名に頼ってビジネスを展開していることも多いと思います。このような“系列”をもとにした取引は、ある程度安定はしていますが、それとていつ指名を外されるかはわかりません。仮に自らの品質と実績を証明するために、「弊社の製品はこの企業のこの製品に使われています」と告知しようとしても、多くの納入企業は仕入先を公表されることを好まず、痛し痒しな状況が多くみられるようです。 そのような場合、目先を変えて、全く付き合いのない異業種メーカーなどにコンタクトし、大手取引先との関係に影響を及ぼさないところで、自社の技術や品質を新製品開発に役立ててもらうなどの方策を採ってみるのも、自社ブランド形成という視点から考えて、あながち無駄ではないかもしれません。
中堅企業のブランド形成事例
株式会社 杉孝(http://www.sugiko.co.jp/)は建築現場における仮設機材レンタルの企業です。多くのゼネコンの建築現場へ、足場などの機材を貸し出していますが、単に必要分の機材を受注し配送するだけではありません。足場は1枚足りないだけで落下事故の原因になることもあります。ひどい場合、風にあおられて足場全体が崩れ、建築中の建造物にも損害を与えかねないものなのです。また必要がなくなった時点で、速やかに撤去しなければなりません。作業内容を吟味し、無駄なく緻密に計算されて設計されるものなのです。杉孝では長年の経験をデータベース化し、お客様の工期に合わせて無駄なく安全に作業が行なわれるように、設計から配送・撤収までの管理をしています。
日頃は建築現場で使われる商品ですから、“安全性”や“サービスの品質”を通じてしか、ブランドを存在させることはできません。しかし数年前から「屋外コンサートやスポーツイベントのステージやセットに使えないか」というお客様からの引き合いが増えたことを受け、仮設ステージなどの設計業務を、新しい「イベント事業」として立ち上げました。この事業部はすでに子会社化にまで事業拡大が進んでいます。この効果は、単に新しい需要を生み出しただけではありませんでした。イベント事業を始めることにより、杉孝の企業イメージは、「建築仮設足場レンタルの杉孝」から「幅広い視野を持ち、提案力のある杉孝」へと大きく昇華し、コアとなる建築仮設機材のサービスまでもブランド化することに成功したのです。
また、「上質即利」すなわち「質の良いものは必ず利益がついてくる」との企業理念を掲げて、社長自らが積極的に社内コミュニケーションで啓蒙してビジョンを強固にし、営業展開を行っています。強く、わかりやすい理念は社員の心を一つにまとめ、社員一人ひとりのキャラクターとして浸透し、「企業ブランド」の形成に大いに貢献するのです。
著者プロフィール
雨宮 和弘(あめみや かずひろ)
クロスメディア・コミュニケーションズ有限会社 代表取締役社長- 1983年、日本テキサス・インスツルメンツ株式会社入社、コーポレートコミュニケーションおよびPRマネージャー。日本におけるインターネットの商用利用サービス開始と同時にインターネットによる日本初の人材採用ホームページを作成、その後日本TIの初代ウェブマスター。1996年インテルジャパンに転職、コーポレートマーケティング部にて同社のインターネット企画運営を担当。1999年クロスメディア・コミュニケーションズ有限会社として独立、現在に至る。
http://www.crossmedia.co.jp/
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