第5回 秋は旧交を温めるきっかけ作りのとき - 2
「眞知子さん!読んでますよ」名刺交換をさせていただくや否やおっしゃってくださった某メーカーの女性課長がいらっしゃいました。
てきぱきした物言いがとてもりりしい、いわゆるハンサム女性であります。
「英語が苦手でねえ。手紙のことでも最後、どう締めくくったらいいかわかんなくなるんですわ」大阪弁らしき言い回しでおっしゃる彼女の悩みは、どうやら結びに当たる「時節柄お体、くれぐれもご自愛くださいませ」とか「それでは皆様によろしくお伝えください」云々、日本語にあるような表現のことをおっしゃっているようです。
実は英文手紙も日本と同様、ご家族などへの気遣い、相手のことを思いやるフレーズ、そして感謝の気持ちを述べて終えるのが定番です。
たとえば、
Take care and have a good weekend.
(体に気をつけて楽しい週末をお過ごしください)
Do not overwork.
(働き過ぎないようにね)
Good luck on your examination.
(試験がうまくいきますように)
などと言い、
また感謝したい気持ちを再度表してペンを置くときは、
Thank you so much again.
(もう一度感謝したくて)
Once again I appreciate your kindness.
(再度ご親切に感謝を申し上げます)
相手とのお付き合いをこれからも持続したいと思う気持ちを述べるときは
Please keep in touch!
(これからもよろしくね)
となり、相手のお返事を期待する場合は
I am looking forward to hearing from you soon.
I am waiting for your next letter.
などなど。
「なるほど!」と一端首を縦に大きく振った彼女でしたが、ひと呼吸空けるとおもむろに訊いていらっしゃいました。
「よくヘンな印が最後、相手の名前の上にありますけど。あれはなんやろ?」彼女がコースターの裏に書いたのは、なんと×が三つでありました。
「はは~ん」と、もうわかった方もいらっしゃると思います。
これは親しき友人同士の間で使う定番&究極の「結び表現」。×はkissの意味。
チュッっとくちをすぼめた形に似ていることからきたのか、十字架に口付けするところから由来されたかは定かではありません。
その数が多いほど「愛している」の意味が強いのです。
たいてい三つくらいが友情の印かな・・・と眞知子本人は経験上から分析。
しかしながら10年位前から新種が出ました。○です。
この○の意味は、hug. 抱き締めること。
あたかも二人の人の腕がお互いを抱いているかのように見えるこの○を使ってキスよりも強い愛を表します。
なかには○だけでなく、○×○×○のように書して相手への深い愛情を表現しています。
「それで眞知子さんは、そんな手紙をもらった経験ありますの?」
「・・・」なかなか鋭い指摘の大阪弁課長。今度は夜お酒でも飲みながら
お話しましょうと笑って別れた出会いでありました。
皆様もうまく活用して愛を送ってくださいね!
石橋眞知子(いしばし まちこ)
エッセイスト&プロデューサー
学習院大在学中から深夜放送のパーソナリティとして活躍。
シカゴ・ノースウエスタン大学で日本語講師。オックスフォード大学留学。
異文化コミュニケーションやマナーをテーマに執筆やエッセイ、そして講演会などで活躍している。
現在の執筆活動の拠点は産経新聞「ビジネスアイ」。日曜版5面「女の本音・男の本音」、木曜版1面「よのなか万華鏡」を執筆、その視点にはたくさんのファンから絶賛を浴びている。
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