第3回 「暑い」は奥が深い
お盆休みも終わり、長かった夏もようやく終焉を迎えようとしていますが、さすが「残暑厳しい折」というだけあって、茹だるような暑さだけは、当分居残りそうな気配であります。
「真夏日」を記録してから日本中のいたる場所で、どれくらい「暑いですネェ・・」「ホント暑い」という会話が交わされてきたのでしょうか。
ホトホト飽きている感がします。
ところでこの時候の挨拶を英語でなんと言うか?
そうです。‘It’s hot isn’t it?’ ‘Yes, it is very hot’。
中学生の教科書で徹底的に覚えこまされましたよね。
春の暖かさは‘warm’、夏の暑さは‘hot’、秋は涼しく‘cool’で、寒い冬は‘cold’ と4つの形容詞を入れ替えてパターン練習を繰り返したものです。
その努力が功を成し、中学時代英語の好きだった日本人は、押しなべて時候の挨拶が得意。
ただし、難点は、今の時期のように来る日も来る日も暑さが続く時です。
「暑い」は`hot’としてだけインプットして来たため、いつ何時も、hotの一点張りとなってしまいます。
毎日、顔合わせするお決まりの人たちに。‘It’s hot isn’t it?’と日々機械的に繰り返していたら、だんだん慣れすぎて感情移入もできなくなる。
ましてや相手からワンパターン人間として軽蔑されるのが関の山です。
外資系のテレビ局で働いていたときのこと。
夏の真っ盛り、毎日ただ‘Hot, hot’と口走る日本人のディレクターを見て、口の悪いアメリカ人のプロデューサーがこう言いました。
‘He is like a cuckoo clock’(あいつは鳩時計みたいだ)毎日大体同じ時刻に撮影から戻ってくると必ず、「暑い暑い,hot, hot」と唱える彼は、確かに鳩時計の役目を果たしているかのようでありました。
乏しいボキャブラリーの露呈を未然に防ぐには、とにかく多彩な表現を覚えるしかありません。今回は、すぐに使える時候の挨拶。
8月、イエ9月のお彼岸までは使える暑さの表現を集めてみました。
得意客や上司の前でいくつかの単語を駆使して挨拶を交わし、「アイツ、案外できるヤツかも」と印象付けてしまいましょう。
- 最初はホントに暑い。猛暑の表現を二つ。
- scorching
―猛烈に暑い - as hot as blazes
―a blaze とは単数で「炎」の意味。複数blazesになると、「地獄」となる。地獄のような暑さを表す。
- scorching
- 湿気が多いときの暑さ
- muggy/humid
―蒸し暑い、うっとおしい
- hot and sticky
―べたべたする
- damp
―じめじめする
- stuffy
―室内などでむっとする暑さを表すとき
- muggy/humid
- ちょっとだけカッコイイ表現
- hot enough to fry an egg
―ゆで卵ができちゃうくらい暑い。茹蛸状態と同じ意味合いで使う。
- hot enough to fry an egg
石橋眞知子(いしばし まちこ)
エッセイスト&プロデューサー
学習院大在学中から深夜放送のパーソナリティとして活躍。
シカゴ・ノースウエスタン大学で日本語講師。オックスフォード大学留学。
異文化コミュニケーションやマナーをテーマに執筆やエッセイ、そして講演会などで活躍している。
現在の執筆活動の拠点は産経新聞「ビジネスアイ」。日曜版5面「女の本音・男の本音」、木曜版1面「よのなか万華鏡」を執筆、その視点にはたくさんのファンから絶賛を浴びている。
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