Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

考える技術

大前 研一 (著) 講談社

新しいビジネスに必須の思考法と、その思考回路を身につけるためのノウハウを伝授。


サマリー

私たちは、仕事の中で、あるいは社会生活の中で、ありとあらゆる問題に直面する。ほとんどの人は、その問題を解決するために何をどう考えればいいのかについて、その方法を知らないように見える。

そしてろくに考えもせずに、たんなる「思いつき」を解決策と称している。驚くべきことに、そんな思いつきが、仕事や経営の現場でも問題解決策として、平気でまかり通っている。

本来、問題解決をするためには、問題がどこにあるのかを分析して原因を解明し、それを解消しなければならない。それは論理的に考えれば簡単に導き出せるものだ。

だが、日本の経営者の多くははこうした思考回路を持たない。自分の立場や派閥の利益といった、問題解決の上では何の役にも立たないことを核にした思考がまかり通っているケースが珍しくないのだ。


問題解決のための思考プロセスとは、業界のデータや自社のデータを分析することから始まる。分析した結果をもとに仮説を出すのだ。

ここで仮説が出ると、日本のほとんどの経営者やビジネスマンは、それを結論だと思い込んでしまい「結論を得た」と安心してしまう。

そしてその仮説を裏付ける証拠収集や、本当の結論に至るまでの論理的思考を怠ってしまう。

仮説でしかないことを「結論」として示し「この問題を解決することは非常に難しい」というものを「提言」だと勘違いしている人間がいる。だが何の解決にもならないものは、提言とはよべない。そんなことを言っても、時間と労力の無駄にしかならないからだ。

本来、解決策のない問題など存在しないのだ。本当に重要なのは「仮説」ではなく、問題を解決するための「結論」を導き出すことなのだ。

最初の仮説が解決策にならなければ、さらにデータを分析して、別の仮説を立てればいいだけだ。これを繰り返し、問題の真の解決策になる「結論」にたどり着くまで思考を続けるのだ。


解決策になる結論を導き出すために最も大切なことが「その問題の原因は何か」を明確にすることだ。ところが、ほとんどの経営者やビジネスマンは、問題として見えている現象にばかり目がいってしまう。だから原因の解決に至らないのだ。

現象はあくまでも現象にすぎず、原因ではない。この当たり前のことがなかなか理解できないのだ。

だが原因になっている部分を直さないかぎり、問題の解決は決して望めない。問題解決のために大切なのは「さまざまな現象の中で、本当の原因は何か」を考えることだ。現象を数え上げるだけで思考を停止してはならないのだ。

さらに最悪なのは、すべての現象を個別に改善しようと考えることだ。原因を明確にせずに現象を改善しようとすると、かえって業績が落ち込む。こうして負のスパイラルに陥ってしまうのだ。


経営コンサルタントの仕事とは、企業が自分ではどうしても解決できない問題に対して解決策を見つけ、提案としてクライアントに示すことだ。

そのために情報を収集、分析し「こうではないか」という仮説を立て、仮説を裏付けるためにフィールドインタビューを行ったり、実験を試みたりする。

仮説が裏付けられるまで、とことん必要なインタビューや実験を行い、仮説が間違いないものであることを実証する。これが問題の解決策を導き出す科学的なアプローチと言える。

こうしたアプローチを経るからこそ、合理的で間違いのない結論が導かれるのだ。真の論理的思考とは、本来こういうものだ。このプロセスこそが、あるゆる問題解決において必要なのだ。

このように問題解決力とは、仮説を裏付けるために労を惜しまない行動力と、その仮説が絶対に正しいと結論づけられるまで、徹底的に考え続ける思考力のことなのだ。

コメント

本書は、これからのビジネスパーソンに求められる重要なスキル、論理思考の方法を詳しく解説した本だ。とくに著者大前氏の思考プロセスを詳しく紹介している点が大いに参考になった。

時代が激変し、ビジネスの世界で過去の成功体験は役立たなってきた。まして日本人お得意の「なぁなぁ」とか「気合い」とかはすっかり通用しなくなっている。

そこで頼りになるのが論理性だ。論理は人を説得し、動かす際に大きな力を発揮する。ビジネスの基本は人だから、仕事を論理的に進めれば、仕事の成果を著しく高めることができるのだ。

もちろん、論理的に仕事を進めようとする人はたくさんいる。会議などでも統計資料を美しい資料にまとめ、パワーポイントを駆使し、一見論理的に進むプレゼンもよく目にする。

しかしプレゼンや資料のすばらしさが、論理性を保証するわけではない。むしろPCの技術が向上し、見てくれでごまかしやすくなった分、論旨が曖昧なプレゼンも大手を振っている。

そのためプレゼン準備の時間の大半を、罫線の太さやグラフの色をいじくることに費やす人もいる。しかし高給をとって昼間から図画工作をしてはいけない。むしろ時間は論旨固めに割くべきだ。

この論理思考、うまくいかないのは方法を知らない事からきている。日本人の多くは思考法を学ぶ機会が少ないのだ。だから一度、きちんと学ぶべきだ。未知の分野だけに、少し学ぶだけで成果がでる。

学ぶためには社会人向けのビジネススクールに行くのもいいだろう。しかし、時間とお金の制約もある。そこで本書のような書籍を一読してみることをお勧めする。本で学んだことを、日常の仕事に活用してみれば、すぐに力がつくはずだ。

記事提供:藤井 孝一ビジネス選書&サマリー