Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

会社にお金が残らない本当の理由

岡本 吏郎 (著) フォレスト出版

あらゆるセールスの体験をし、外資系の社長を経験してきた著者のセールス人生から得た経験に基づき、すぐに役立つ手法を具体的に 解説する。


サマリー

ビジネスはゲームだ。その基本ルールは、儲けることだ。ところが、中小企業の多くがこのルールを理解していない。そればかりか今では通用しない常識に惑わされ、正しい経営感覚を失っている。

「儲け」を出すには、利回りをあげなくてはならない。だが、資産を銀行や郵便局に預金しているおばあちゃんより利回りが稼げないという中小企業が多い。

会計士はよく「大企業で利回り7パーセントぐらいが標準だから、中小企業はそれより少なくていいですよ」などと言う。だがこれは間違いだ。

預金と違い、運用の世界では資産ボリュームが少ないほど利回りを稼ぎやすいはずだからだ。当然、中小企業のほうが大企業より利率が高くなくてはならないのだ。

「預金口座にちゃんとカネはある」「役員報酬で生活もできる」「来月の支払いも大丈夫」と安心し、本来、稼ぐべき利回りを稼いでいない中小企業が多いのだ。


中小企業経営者は投資する資産をなるべく少なく抑え、利益はギリギリまで多く取るようにしなければならない。

点棒の計算ができない人に、マージャンのうまい人がいないように、利回りが評価できない人に、経営上手はいない。こうした経営者は、いわばゲームのルールも知らずに、駒を動かしているようなものだ。
幸運と奇跡を頼ってビジネスを続けるのは、あまりに危険だ。

利回りを上げたら、次は会社にお金を残さなくてはならない。これを「内部留保」という。会社の利益がゼロなら、役員報酬の一部を内部留保しなければならない。役員報酬は、いわば社長の借受金だ。

それにもかかわらず、役員報酬をすべて自分で遣ってしまう経営者がいる。本来、経営者の自由になるお金など、いくらもないのだ。

こうしてできるだけ内部留保したら、次の事業へ再投資を行う。つまり経営とは利回りを稼ぎ、内部留保し、再投資することで「アガリ」となるゲームなのだ。このサイクルは3年と考えればよい。


再投資どころか、ひたすら借入金の返済に必死になっている経営者が多い。彼らは、過去の亡霊に追われているようなものだ。

ちなみに経営における「過去」とは「借入れの返済」、「現在」は「売上と利益」、「未来」は「内部留保と再投資」だ。この3つをバランスよく管理することが、経営というゲームの基本だ。

だが、現実には借入れにとらわれ、選択を誤る会社が多い。たとえば町のメインストリートに出店している店があるとする。店主は、まもなくショッピングセンターが近くに建設されることを知りつつ、その中に入る踏ん切りがつかない。借入れの返済で頭が一杯なのだ。

このように、見たくない現実から目をそむけ、小手先の問題解決を続けていると、結果的に経営は死に体になる。さらに周りを巻き込みながら転落の道をたどるという、最悪の結果を招きかねない。


日本の中小企業が、ゲームのルールを忘れてしまったのは、ひとえに戦後日本がおこなってきた社会主義的政策のせいだ。

1955年頃から1990年まで、私たちは特殊な時代を生き、上昇気流を満喫した。上昇気流は数々の矛盾も飲み込んでいった。

辻褄の合わない税法、ルールなきまま維持される経営、存在意義のない各種団体、社会保険制度、借入れ依存の企業体質。ぬるま湯のなかで、戦う力と意欲をそがれ、中小企業は自ら考えることのない依存体質へと骨抜きにされていった。

もはや、企業の平均寿命は20年を切っている。会社が人の寿命より長い時代は、すでに過去のものとなったのだ。何世代にもわたって受け継がれてきた原理原則や法則も、もはや通用しないのだ。

かつての常識では、生き残れない時代が現代なのだ。だが、もう一度、基本ルールに立ち戻り、自分の頭と価値観で経営をおこなえば、いろいろな問題が解決するはずだ。

コメント

本書は、中小企業の経営者に向けて書かれた会計の本だ。この手の本にしては、随分売れている。読んでみて「確かになかなかおもしろいな」と思った。

特に私の場合、お客さんが著者と同様、中小企業の経営者だ。だから多くの点で共感できた。例えば、本書では「儲かったら内部留保しろ、すぐベンツを買うな」と戒める。

この言葉を言いたくなる気持ち、よくわかる。起業家も少しお金が入ると、すぐにベンツに走ります。事情はいろいろある。例えば現金を残すと課税されるが、ベンツを社用車として購入すると、税金が減らせ、いざというとき現金になる。

しかし、少し傾き始めたら、ベンツを売って得られる金などひとたまりもない。だから、やはりちゃんと税金を払い、せっせとお金を貯めておくべきだ。

また、経営コンサルタントのような仕事の世界では、見てくれの大事さが強調される。「お客をとるために、無理をしてでも一流の事務所を持ち、一流品を身につけろ」と同業者はよく言う。

そういう人も「車はベンツ」を勧める。ベンツにこだわるのは、誰が見ても高級車とわかるからだ。ここでは、自分の趣味は二の次、相手にわかることが大事なのだ。

前出の起業家と違い、こちらがベンツを買うのは節税や虚栄心を満たす道具ではなく、お客をとるための道具だ。つまりベースは、投資という発想だ。

ベンツの購入費は出たきり戻らない消費でなく、回収が期待できる投資だ。だから「惜しまず、借金してでも買え」となる。つまり我々の世界でベンツを買うのはお客さま募集中の証なのだ。

私の知っているお金持ちの何人かは、ベンツどころか車すら持っていない。また、彼らは自分がお金持ちに見られることを極端に嫌う。お金持ちに見られて良いことなど一つもないと言う。

こう考えると、ベンツに乗って、自分をわざわざお金持ちに見せている人に、本当のお金持ちは多くないのかもしれない。

記事提供:藤井 孝一ビジネス選書&サマリー