Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

コトラーのマーケティング・コンセプト

フィリップ・コトラー(著)、恩藏 直人、大川 修二(訳) 東洋経済新報社

世界的なマーケティングの権威、フィリップ・コトラーが、マーケティングのコンセプトを取り上げ、アルファベット順に、事例を交えながら、一つ一つコンパクトかつ丁寧に解説を加える。


サマリー

今日のビジネス界が直面している問題は、商品の不足ではない。顧客の不足だ。世界的に、ほとんどの産業が消費者の購買力をはるかに上回る生産力を持っている。

この過剰な生産能力は、それぞれの企業が市場シェアの拡大競争をした結果もたらされた。例えば、個々の企業が売り上げ10%増を目 指しても、市場の成長率が3%しかなければ残りは過剰生産になる。

この過剰生産がさらに激しい競争をもたらす。競合各社は、なんとか顧客を引きつけようと値下げをしたりおまけをつけたりしている。

このようなやり方は、最終的に利ざやの縮小や、利益の減少につながる。これが倒産、合併、買収を加速させたりすることになる。


値下げせずに競争するには、マーケティングを駆使することだ。過剰な生産能力が問題になっている今日、マーケティングはますます重要だ。マーケティングは企業の顧客製造部門と言えるからだ。

ところが企業は、マーケティングの役割は製造部門を助け、製品を市場に送り出すことだと考えている。しかしマーケティングは生産した物をうまく処理する技術などではない。

本当は逆なのだ。製造部門がマーケティングを支援するのだ。製造部門など、いざとなればアウトソーシングすればいい。企業に繁栄をもたらすのは、企業のマーケティグ・アイデアと提供物なのだ。

また同時に、マーケティングは顧客の生活向上を支援する技術でもある。製造、購買、研究開発、財務は、いずれも企業が市場で活動することを支えるために存在する機能に過ぎないのだ。


マーケティングはよくセールスと混同される。だがマーケティングとセールスはむしろ正反対のものだ。セールスは製品が完成してからスタートする。

しかしマーケティングは製品が存在する前からスタートする。人々が求めているものは何か?自社は何を提供すべきか?その答えを探るのがマーケティングなのだ。

つまりマーケティングは短期的な販売活動でなく、長期的な投資活動なのだ。製品を製造したり、市場に投入したりする前から始められ、販売活動が終わった後も続いていく活動なのだ。


マーケティングをとことこん突き詰め、顧客を知り尽くせばセールスは不要になる。マーケティング(Marketing)とは、的(Mark)に命中させる能力のことをさすのだ。

製品を売ることだけにこだわると、今日の売り上げと引き替えに、明日の顧客を失うことになる。目指すは顧客と長期にわたる良好な関係を築き、その顧客からできるだけ多くの収益を上げることだ。

だから、顧客のニーズにあった商品やサービス・メッセージを適切な形で、適切な時期に、顧客に提供することが大切だ。そのためには、顧客を十分に理解する必要がある。

マーケティングの役割は、絶えず変化する顧客のニーズを収益に転化することだ。そして顧客が製品を探したり買ったりするための時間や労力を省くことで社会全体の生活水準を向上させることなのだ。


企業には、普通マーケティング部門がある。だが、こうした部門があるために、かえって他の部門が「マーケティングはその部門の仕事だ」と思いこんでいることも多い。これは大問題だ。

マーケティング部門を作ったり、有能な人物をその職につけたりすれば、企業にマーケティング文化を根付かせることができると考えるのは大きな間違いだ。

マーケティングは、単に広告を作ったり、媒体を選んだり、ダイレクトメールを送ったり、顧客からの問い合わせに答えたりする活動をさすのではない。企業活動全般に関連するものだ。

まず、経営トップが顧客志向の必要性を確信していること、そして社員1人ひとりが顧客への影響を考えて行動していることが大切だ。

そもそも何を作るべきか、どのように顧客に製品を届けるか、引き続き買いたいと思わせるにはどうすればいいのか、そうした問いに組織全体で答える大規模なプロセス、これがマーケティングなのだ。

コメント

世界的なマーケティングの権威、フィリップ・コトラーが、マーケティングのコンセプトを取り上げ、アルファベット順に、事例を交えながら、一つ一つコンパクトかつ丁寧に解説を加える。

他にコトラーの代表的な著書と言えば「マーケティング入門」「マーケティングマネジメント」「マーケティング原理」「コトラー新・マーケティング原論」などがあり、MBA学生や、マーケティングの専門家の間では必読の書になっている。

本書には「新規客より既存客を大事にしよう」ともある。これは当たり前のことだが、できていないことが多いようだ。例えば、居酒屋に行くと、時々お客さんが空のジョッキを抱えてボーっとしていることがある。こうしたテーブルに追加の注文を取りに行くだけで、そのテーブルの客単価は1割以上上がるはずだ。

さらにお勘定の前に、デザートやご飯ものをお勧めするだけで客単価はさらに1割上がる。店によっては、街頭でビラ配りを懸命にやっていながら、店内でこうした配慮が欠けているために、ずいぶんと損をしていると思う。

従業員に一言、言わせるだけだから、コストがかかるわけではない。第一すでに店に入って、ある程度お金を使っているお客なのだ。
(しかもたいてい酔っている)街頭で、しらふの、全くその気のない人を店に呼び込むことに比べたら、ずっと簡単なはずだ。

都心のビジネス街のような激戦区では、従業員にこうした教育できるかどうかの、小さな積み重ねで勝敗が決まってしまうものなのだ。

記事提供:藤井 孝一ビジネス選書&サマリー