60分間・企業ダントツ化プロジェクト

神田 昌典(著) ダイヤモンド社
『あなたの会社が90日で儲かる!』 『非常識な成功法則』
などのベストセラーで知られる実践マーケター神田昌典氏がこれまでの著書を総括する。
サマリー
戦略について書かれた本は星の数ほどある。だがそのほとんどが30年以上前に開発された競争理論をベースにしている。そのためそのまま現代の経営にあてはめるのは無理だ。
なぜなら当時は成長経済にあり、顧客も商品需要も目の前にあることが前提だったからだ。企業戦略もいかにライバルを負かし、顧客を奪うかが主眼だった。
今でもライバル企業に対して競争優位に立つための知識は必要だ。しかしそれだけでは不十分だ。なぜなら現在、顧客も商品需要も無くライバル会社も顧客がいなくて疲弊しているからだ。
つまり今はライバル会社と戦っている場合でなく、市場を創造しなければならない。顧客の購買意欲を起し、需要を喚起する戦略が必要なのだ。もはや敵はライバル会社ではなく顧客なのだ。
戦略のある会社は楽して儲けている。しかも中途半端な儲かり方ではない。勝ち組と負け組の二極化が進む中、圧倒的に儲っている。
顧客を魅了するから、売り込まなくても顧客が行列をなす。自動的に仕事が降ってくるから毎月の資金繰りの心配が無い。残業は少なく給料は高い。
また戦略があると短期間に業界地図を塗り替えることができる。存在しなかった会社がライバル会社に気づかれないうちに業界トップになる方法、それが戦略だ。
ところが日本の中小零細企業・経営者に戦略を勉強する人はほとんどいない。だから戦略を学べばあっという間にダントツになれる。
戦略という言葉を使えば賢そうに聞こえるから、濫用されているが、それが何なのかを正確に答えられる人はほとんどいない。
例えば戦略とは順番だ。戦略が無い会社はなんでもやる。戦略がある会社は、自社が強い分野を慎重に選択し、その分野に集中してリソースを投入する。
つまり戦略とは選択であり、選択したものの優先順位を決定することなのだ。ところがほとんどの会社は目標の優先順位すら設定されていないためすべてが最重要課題になっている。
「顧客満足度ナンバーワン企業目指す」などという標語があるのはその会社に戦略が無い証拠だ。
戦略目標を選択し、そこに集中すれば、どうしても欠けるものが出る。すると一部の顧客は当然不満に思う。だからすべての顧客を満足させるということ自体、戦略的発想ではないのだ。
戦略と戦術はよく混同される。しかしこの二つは明確に区別されるべきだ。
戦術とは、例えば営業トーク、販促プロモーション、広告宣伝、チラシ、DMなどだ。つまり戦争における弓矢や鉄砲のような武器のことだ。
一方、戦略とは、
「何を使って、誰に戦いを挑むのか?」
「どんな陣形(流通方法、営業プロセス)をとるべきか?」
「どこから切り込んでいき、次にどこに行くべきか」
「いつ戦いを仕掛け、いつ終えるべきか?」
こうしたことを検討し、答えを出し、一貫性を保ちながら実行するための計画のことだ。
すなわち戦略とはプランそのものなのだ。これに対し戦術はプランを効果的に達成する武器なのだ。
実行できる戦略を構築するにはどうすればいいのか?まず時間をかけるべきではない。60分で十分だ。なぜなら優れた発想は一瞬にして得られるからだ。
また発想する際には、次の3つの条件を満たすことが必要だ。
- 効果的な質問をして戦略構築に必要な情報を抽出する。
- 一時的に混乱状態を作り出す。
- アイデアを実行する人間が、自ら発想する。
この3要件を満たながら、顧客を魅了する事業を構築する。その際、次の項目をステップ・バイ・ステップに検討する。
- 商品
- 顧客
- 競合
- 収益シュミレーション
- タイミング
- メッセージ
ここに挙げた6項目に関する分析と判断を順番に進めれば、創造的かつ実行力ある戦略を簡単に見出すことができる。
コメント
『あなたの会社が90日で儲かる!』『非常識な成功法則』などのベストセラーで知られる実践マーケター神田昌典氏によるこれまでの著書の総括、それが本書だ。
今や企業にとって最大の課題は「競合から顧客を奪い取ること」でなく「いかにして新しい顧客を生み出すか」その前提から「顧客の心を捉える企業戦略の構築方法」を実践的に解説する。
具体的には「スター戦略構築法」と呼ばれる独自の手法を紹介、「商品」「顧客」「競合」「収益シミュレーション」「タイミング」「メッセージ」の6つの要素を順番に分析、検討していく。
一般的な経営書やビジネス誌で取り上げられる手法は大企業が対象だ。そのため中小企業経営者には「ウチには使えない」と思わせる。一方、本書は全国3800社を超えるクライアント指導の経験をベースにしており、「これならできる」と思わせる。
日本の企業の9割以上を占めるのが、従業員数30名以下の企業だから、そうした企業を対象にしている点は高く評価できる。
いわゆる戦略発想本はよく売れていまるが、実際には一般的なビジネスマンが日常の業務の中で使う機会は、あまり多くないのが実情だ。ただ戦略思考そのものは思考の方法だから、その使用法を企業のプラン作りに限定することはない。例えば、自分の人生設計に生かすことがでる。
特に、これからの厳しい時代、個人も企業と同じような綿密な計画を立てることが望ましい。終身雇用を前提に会社の処遇=自分の人生であった時代は終わりを告げたからだ。
企業は自社を取り巻く環境に適応するために、経営資源(ヒト、モノ、カネ)を最適に配分するための戦略を策定する。個人もいかに自分の持てる資源を配分していくか、これを考えるために戦略的思考を活かしてはどうだろう?
例えば、個人の資源の一つに「時間」がある。会社勤めなら、その「時間」のうち月~金の9時から5時を会社勤めに投じて給与を得る。
しかし、この資源にも余剰はある。「これをどのように使うか」を考える際「将来最大のリターンを得るにはどこに投じたらよいか」という具合に戦略的に考えることが可能だ。
これを「将来のために配分してみよう」と考える人と、何も考えずに今、現在の快楽のために消費してしまう人では、その後の人生から得るリターンに大きな差が生じるはずだ。
このように個人の人生を仕切りなおすための道具、そんな視点で様々な戦略思考のツールを再考すると、宝の持ち腐れにも活用の場面がありそうだ。
記事提供:藤井 孝一/ビジネス選書&サマリー
