チェンジ・ザ・ルール!

エリヤフ・ゴールドラット(著)/三本木亮(訳) ダイヤモンド社
本書は、ご存知ベストセラー『ザ・ゴール』の第3弾だ。
ただし前回までとは異なる全く新しいストーリーだ。
サマリー
世界屈指のコンピュータソフト開発企業BGソフト社のトップ、スコット・ダンカンは、自社と業界の将来に強い危機感を持っている。同社は年40%の成長率を維持してきたが、状況は厳しくなってきた。
まず市場が飽和している。自社のクライアントである大企業はすでに開拓済みなのだ。だが中規模以下の企業は、販売サイクルが長くコストがかかり、自社の成長は維持できない。
もう一つ問題がある。それは製品が複雑になりすぎたことだ。市場の需要を満たすために、新しい機能を次々搭載してきたためだ。だが、もはやソフトは導入にも、使いこなすにも時間がかかりすぎる。
ひとたびバグが発生すれば、探したり修正したりすることは、不可能だ。
シンプルなシステムが必要だが、これは高機能化して市場のニーズを満たすということとジレンマだ。
しかし一番の問題は、この状況にどう対応すべきか、全く見当がつかなくなってしまったことだ。
スコットは、自社の重要な顧客のCEOに突然呼び出された。彼はBGソフト社のシステムが、会社の利益に全く貢献していないと取締役会で追求され、窮地に立たされているとのことだ。
目に見える効果はでているが、それを利益に変換できていないと言う。確かに仕事は楽になったが、それで人員を減らしたわけではない。結果的に会社の利益にはつながっていないというのだ。
例えば、同社のシステムのおかげで流通センターの欠品は減り、売上は増加した。それがいくらかを説明しなければならない。持ち帰り調べた結果、増加した利益は年間1億以上であることがわかった。
スコットは、この一件で自分達を含むソフトウェア業界の人間が、いかに顧客の利益、すなわち価値に無関心であったかに気づいた。そして、むしろこれを自社の競争優位性にできると考えた。
スコットは、共同経営者のレニーに「顧客の利益を向上させるために障害になっていることは何か?」に関する自説を語った。
コンピュータの威力はすばらしいが、それを導入して利益が劇的に増えた話はほとんど聞かない。それは、多くの企業がテクノロジーを導入しながら、慣れ親しんだ自社のルールを変えないからだ。
新しいテクノロジーがメリットをもたらすのは、それを用いることで、これまで出来なかったことができるようになるからだ。逆にテクノロジーを導入しても、限界が取り除けなければメリットはない。
しかし企業はテクノロジーが導入される前から、こうした限界と共存してきた。その過程でその限界にあわせた習慣、評価尺度、ルールなどを作ってきた。
多くの企業が、テクノロジーで限界を取り除いても、旧いルールを残す。だからテクノロジーのメリットを十分享受できないのだ。
スコットは自室に経営陣を集め、現行の成長を維持するために、単にソフトウェアを売り込むことは辞め、顧客企業に真の価値を提供することを目指す決意を表明した。
そのためには、顧客企業のルールを変えることまで請け負う必要がある。企業の中に長年にわたって形成されてきた行動パターン、カルチャーなどを変えるのだ。
これは、これまでソフトウェアの会社がタブー視してきたことだ。確かに「どう自社をマネジすべきか?」「いかに変革を起すか?」にまで口に出すことは、自分達の領域を超えている。
だがこれにより顧客が確実に利益を出せるなら、投資に慎重な中小企業も取込める。また既存顧客も、従来の間接部門に加え、生産現場、研究開発、IT部門にも同社のソフトを導入するだろう。
これにより現行を上回る成長を遂げられるはずだ。まずはコンサルティング会社と組んでソフトを販売することにした。彼らはマネジメントや変革の専門家だ。その道具として製品を進めてもらうのだ。
結果、BGソフト社は目覚しい成果をあげた。同社のシステムを全社的に導入した巨大企業ピエルコ社から願ってもない提案を受ける。
今後、自社だけでなく取引先にも同様の仕組みを導入していきたいので協力してほしい旨告げられる。ただし取引先は中小企業なのでソフトウェアの購入費やインストール料、メンテナンス料を払えないという。
代わりに、ピエルコ社とその取引先のシステム管理をすべて請け負ってもらえるなら、売上げの1%を毎年支払うという。ピエルコ社だけで年間1億ドルが見込める。
またこの条件なら同社の取引先である中小企業にも支払える。これによりBGソフト社は、念願の中小企業の顧客を取り込めるようになる。
さらにピエルコ社と取引をする企業はBGソフト社と契約せざるを得なくなる。これによりBGソフト社は、飽和しつつある市場で、顧客を開拓し続けなくても、これまで以上のペースで成長出来る。
コメント
本書は、ご存知ベストセラー『ザ・ゴール』の第3弾だ。ただし前回までとは異なる全く新しいストーリーだ。
本書の舞台は1998年。「これからはインターネットの時代だ」などと言って話は終わる。このあたりを読むと「何を今さら」という感じだ。
ただし、著者の主張の根底に流れる原則「ルールを変えろ」というところは、今も当てはまる。
一時期、e-Japan構想などと称してネコも杓子もIT化という時代があった。成果の出た会社も失敗した会社もある。その違いは?と聞かれれば、やはり「導入して、仕事のやり方を変えられたかどうか」と答えざるを得ない。
うまくいかない企業は、ITを導入しただけで、満足した。そして仕事のやり方のほうは、今も導入前と同じだ。
ある企業では、社長室にEメールを導入したが、秘書が社長あてのEメールを、毎朝プリントアウトして社長に渡している。社長はそれを読み、返信の必要があれば鉛筆で返信文を書いている。そして秘書がそれを元に返信メールをうっている。
その秘書は「Eメールの導入で自分の仕事がかえって増えた」とこぼしている。
さすがにそういう企業は減ったが、社内の申請書類を電子化しながら、申請そのものは相変わらずそれをプリントアウトして、はんこを押し、社内メールやファックスで送付と言う会社は結構あるようだ。
これなどはせっかく有効な機器を導入したものの、仕事、つまり人間の方が変われなかったために、かえって仕事が増えてしまった典型だろう。
記事提供:藤井 孝一/ビジネス選書&サマリー
