Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

エスキモーが氷を買うとき 奇跡のマーケティング

ジョン・スポールストラ (著)/宮本喜一 (訳) きこ書房

著者のジョン・スポールストラは、NBAで観客動員数最下位だったチームチケット収入の伸びを全米1位に導いた人物だ。
本書では彼のマーケティング手法とその哲学を彼自身のドラマから学ぶことができる。


サマリー

ビジネスの成功を評価する指標は売上げだ。企業の問題の根は、すべて過小な売上が原因だ。売り上げが多くて困った企業など見たことが無い。

多くの企業はこの不足を補うために増資をし、経費削減し、合併や買収をするが、そうしたところで、結局いずれは売上げを伸ばす必要に迫られる。

そのためにあるのがマーケティングだ。もちろん潤沢な予算を使い、単に売り上げを伸ばすだけでいいなら、その基本原則に従えばいい。

だが売り上げを限られた予算で、しかも急激に伸ばせねばならないなら、この基本原則を縦横無尽に応用した「常識はずれなマーケティング」が必要だ。

もちろん必ずこれを否定する人間は現れる。彼らの否定理由は「他と違うから」である。いつも彼らに対する防御策を立てておくことは大切なことだ。


「常識破りのマーケティング」のアイデアを生み出す方法は「今年業界で最高のマーケティング部門になるには何が必要か」と自分に問うことだ。

普通は、「どうすれば与えられた予算を達成できるか」、「昨年より多くの利益を確保できるのか」と考えている。だがこうした問いかけは間違いだ。

まずは、先に上げたような問いを考え、紙に書きワイシャツのポケットに入れる。それだけで、そのためにどうすればよいか、良い考えが思いつくはずだ。

もちろん資金には限りがある。だからこそ創造的な考えが必要なのだ。少ない資金で衝撃的な効果を生み出すから「常識破り」なのだ。


「自分たちのあるべき姿、ビジョン」、「自分たちが取り組んでいる事業は何なのか」を正しく理解することはとても大事なことだ。

例えば、多くの鉄道会社は「自分たちは鉄道事業をやっている」と考えたために消えた。輸送事業をやっていると考えていたら、航空会社に取って代わられることは無かったはずだ。

我々も以前は「スポーツチームの仕事はゲームを開催し、ファンにチケットを売ることだ」と考えていた。しかし本当はエンターテイメントをしていたのだ。

このように周りを見渡せば、自分たちの事業を正しく理解できていない会社はいくらでもある。


「できのよい新製品を開発していれば客が殺到する」と考えるのは間違いだ。実際には「売れるかもしれないし、売れないかもしれない」スポーツチームも「強ければマーケティングなど不要」と考えるのは間違いだ。

マーケティングの対象は、その企業に与えられたものに限られるのだ。経営者やブレーンの能力、製品のできを相手にしても仕方が無い。

例えば、営業スタッフのてこ入れならできる。多くのセールスマンは「完璧な製品をばかばかしいほど安い価格なら売れる」と考えている。

しかし、実際はスタッフの数を増やし、意欲をあげ、トレーニングし、電話の回数を増やすことで、同じ製品を同じ値段で売ることはできる。


巨大な企業と戦う小さな新参企業は「常識はずれのマーケティング」をするべきだ。AOLも最初はコンピュサーブなどが席巻する市場の弱小者だった。

そこで彼らは39ドルで売っているソフトを無料でばら撒いた。コンピュータ雑誌、機内食、冷凍ステーキなどあらゆるものに同封、自宅に郵送もした。

こうした非常識なやり方をしたからナンバーワンになれた。他と同じやり方なら市場のリーダーの巨大化を助けたに過ぎなかっただろう。

もちろん、サラリーマンにとっては、常識はずれなことを提案すること自体が危険なこともある。そのためには実地検証が必要だ。

AOLも無料ディスク100枚につき10人の契約者が獲得でき、毎月接続料が20ドル入ることがわかったからじゅうたん爆撃ができたのだ。

コメント

著者のジョン・スポールストラは、NBAで観客動員数最下位だったチームチケット収入の伸びを全米1位に導いた人物だ。本書では彼のマーケティング手法とその哲学を彼自身のドラマから学ぶことができる。

彼の凄いところは、限られた資源を最大限に生かして驚異的成果を上げるところだ。使えるものなら、猫でも(実際はニワトリ)使う。

マーケティングというと多くの企業に「素人では太刀打ちできないもの」、「お金がかかるもの」という先入観がある。そのためすぐ広告代理店まかせにしたがる。

だがそれは広告代理店の作戦かも知れない。少なくとも彼らはマーケティングのプロである。そしてまず貴社よりも自社をマーケティングするはずだ。

広告予算が余っている会社なら、彼らの言いなりでゴールデンタイムにタレントを使い、せっせと自社のイメージアップを図ればいい。

だがほとんどの企業に、そんな余裕ない。投じた費用はすべて回収し、かつ売上を上げねばならない。もともと購買に結びつかないマーケティングなど経費の無駄遣いだ。

しかし、本書で紹介される彼のやり方は、いずれも実際に会社にキャッシュを呼び込む方法ばかりだ。お金をかけずに、お客さんの心に直接働きかけ、消費者の「買いたい」心理を直接揺さぶり、魔法のように財布を開いていく。

マーケティングとは結局、人対人のコミュニケーションだ。そしてキャッシュを生まなければ意味が無い。

MBAでマーケティングを学んだ人より、行列のできるラーメン屋や保険の外交員のほうが優れたマーケッターであることが多いのはそのためだ。

記事提供:藤井 孝一ビジネス選書&サマリー