コトラー 新・マーケティング原論

フィリップ・コトラー/ディパック・ジェイン/スヴィート・マイアシンシー(著)
恩蔵直人(監修)、有賀裕子(訳)
翔泳社
本書は、マーケティングの神様といわれるコトラー教授が「デジタル時代のマーケティング」のあり方を提言した点で記念すべき一冊と言える。
サマリー
インターネット、テクノロジー、グローバリゼーションが結びついてニューエコノミーが生まれた。
従来のオールドエコノミーは、製造業をマネジメントしてきた。標準化、繰り返し作業、規模の経済、効率、命令型の経営などを重視する。
ニューエコノミーは、情報産業のマネジメントの上に成立つ。文書、データ、音声はどこへでも瞬時に送信でき「効率性」と「正確性」が高まった。
おかげで企業が顧客とコミュニケーションをとったり、取引を行ったりする能力は飛躍的に高まった。
こうして多くの企業がデジタル化を急ぎ、コストを抑えながら市場により広く浸透しようとしている。
今はニューエコノミーとオールドエコノミーが並存している時代だ。企業はこれまで有用だったスキルや能力を維持しつつ、新しい発想や能力を吸収しなければならない。
そして次の3つを目指さなくてはならない。
- 顧客ニーズを最も利便性の高い方法で満たす。顧客が最小の時間とエネルギーで、製品やサービスを探し、注文し、受け取れるようにする。
- 発想の重点を「製品ポートフォーリオ」から「顧客ポートフォーリオ」へ移す。
- マーケティング戦略を企業戦略の中で築き、マーケティング部門が他部門への影響を強めるようにする。
もはや製品を作って売るという発想ではダメだ。自動車メーカーはまず工場など生産能力を築くことから始める。100万台生産できる工場を作れば100万台製造する。
作ったものは売ろうとする。だが売れない。結局ディーラに眠る。マーケッターは、これを販売促進費やリベートなどのお金を使い、無理やり売ろうとする。こうして顧客は2万ドルの車に2000ドルの販売促進コストを払わされている。
これからは顧客を基点に事業を設計しなければならない。顧客に関する知識を収集し、十分な能力を身につけ、カスタマイズされた製品、サービス、プログラム、メッセージを提供しなければならない。
それはこれまでとは全く反対のプロセスをとる。すなわち以下のとおりである。
「顧客」→「流通チャネル」→「製品・サービス」→「資産投入」
これからは「顧客のニーズを感じ取り、それに応える」という発想でマーケティグを推進すべきだ。発想の基点はあくまでも顧客の要望である。
今は顧客が企業に「必要な製品を説明するので作ってほしい」とリクエストする時代である。そして価格、受取り方法、広告を受け取るかどうかまで決める。
企業はより大きな顧客の満足を引き出すために、サプライヤー、流通企業、社員、地域コミュニティーとの協力関係を求める必要がある。
そのために電子ネットワークを介して相互に作用しあい、ダイナミックで包括的なマーケティングを展開する必要がある。マーケティングの使命は、それに沿った製品、サービス、顧客経験を生み出すことである。
激しい変化と競争の中で、顧客に向けて価値を探求、創造、提供するには
- 顧客
- 事業パートナー
- 社員
- 地域コミュニティー
など“関係資本への投資”が必要だ。
これは、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)をさらに推し進めた、ホール・リレーション・マネジメントというべきものだ。
企業と顧客との関係だけでなく、全当事者との関係をマネジメントすることで顧客シェアと顧客ロイヤルティを高め、顧客生涯価値を最大限に引き出すのだ。
こうした全体的なマーケティングこそ、企業がこれからも高品質の製品、サービスをスピーディーに提供するために必要なのだ。
コメント
本書は、マーケティングの神様といわれるコトラー教授が「デジタル時代のマーケティング」のあり方を提言した点で記念すべき一冊と言える。
インターネット、テクノロジー、グローバリゼーションが結びついて生まれたデジタルエコノミーが伝統的マーケティングを変えようとしている。
そこで、本書ではホリスティック・マーケティングという、全く新しいマーケティングのコンセプトを提案している。
これは、顧客の欲求を満たすために、あらゆる当事者との関係をマネジメントするマーケティングである。もはやマーケティングが、企業と顧客との関係を管理するだけでよかった時代は終わったのだ。
例えば、昼食の価格は極限まで安くなった。しかしさらに「安く済ませたい」というニーズがあれば、それをいち早く満たせる企業が勝つ。
もはや、自社のコスト削減だけでどうにかなるレベルではない。そこで仕入れ元を世界中に求め、物流会社にも努力してもらう。
こうしてお客さんに満足してもらうために、一連の企業が自社の強みを活かしつつ、あたかも一つの企業のように行動する。
これからのマーケティングは、これに関わる当事者すべてをコントロールすることが求められる。それができない企業は、他のお客さんを狙う。さもなくば淘汰される。
ビジネスの本質が「顧客に価値を提供することで対価をいただく」ものである以上、やむをえないことだ。
記事提供:藤井 孝一/ビジネス選書&サマリー
