Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

企業変革力

ジョン・P・コッター(著)、梅津祐良(訳) 日経BP社

企業を変革する力とは?
リーダーシップ論の大家ハーバード・ビジネス・スクール教授、ジョン・P・コッター氏が、これまでのマネジメント至上主義から、リーダーシップを重視する方向転換を主張する。


サマリー

環境変化のスピードが速まり、企業に自社の変革を促すプレッシャーが、これまでの20年間で強くなった。今後20年間にさらに増大するだろう。

具体的には、合併、戦略転換、品質向上計画、ダウンサイジング、品質向上計画、リエンジニアリング、リストラクチャリング、企業文化革命などである。

この変革を進める上で大事なこと、それは2つのことについて理解することだ。そして、それをできるだけ多くの社員と共有することだ。

ひとつ目は変革を進めるプロセスについてだ。もうひとつは、このプロセスを進める推進力について、つまりリーダーシップについて理解することだ。


これまでの歴史で、ほとんどの変革が失敗しているので、多くの人が変革を懐疑的に見ている。しかし次のプロセスを踏めばいかなる組織でも変革は可能だ。

にも拘らず、これまで大半の変革が、失敗している。変革の過程でいくつかの過ちを犯してしまうからだ。結局、痛みや出費が無駄になる。

代表的な過ちの例は次の8つだ。

  1. 従業員の危機感を盛り上げないで変革に突入する。
  2. 変革を推進するチームを築くことを怠る。
  3. 変革にビジョンがない。
  4. ビジョンを従業員に伝えない。
  5. 変革の障害を事前にとり除いておかない。
  6. 短期的な成果をあげておかない。
  7. すぐに勝利宣言して、変革をやめてしまう。
  8. 変革を文化に根付かせることを怠る。

変革には、痛みが伴う。例えば人員削減だ。これは、それまでの投資を無駄にする。また社員の側に、燃え尽き、恐れ、フラストレーションを起こさせる。

  1. 危機感を植えつける。
  2. 変革推進をガイドするチームを作る。
  3. 変革のビジョンと戦略を作る。
  4. ビジョンを周知徹底する。
  5. 多数の参加者の自発的取り組みを促す。
  6. 短期的な成果を生む。
  7. 前進を確認し、次の変革を起す。
  8. 新しい方法を企業文化に定着する。

1)~4)では現状をほぐし、5)~7)で新しいやり方を導入する。

早急に成果をあげようと1)~4)を飛ばしたり、順番を変えたりしては駄目だ。人々の抵抗にあい、5)以降がうまくいかなくなる。

トップダウンで無理やり押し付けようとすれば、社員は巧妙な逃げ道を見つけ出すだけだ。


マネジメントとリーダーシップは違う。マネジメントは、仕組みをうまく進めることだ。具体的には、計画・予算策定、人員配置、問題解決などである。

リーダーシップとは、組織を生み、それを環境に適応させていくことである。組織の将来のあるべき姿を明らかにし、それに向けて人を動かすことである。

成功を収める変革では、7から9割がリーダーシップによって、残りの3から1割がマネジメントによってもたらされる。

ところが企業はマネジメントを重視してきた。これまではそれでうまく言ったため、ますますその傾向は強まった。これが変革を難しくしている。


変革をマネジメント(管理)するよりも、リード(推進)するほうが重要である。リーダーこそ組織の無気力を除去し、活性化し、変革を文化にしえるのだ。

また変革を成功させるリーダーシップの発揮は、まず一人か二人の人物によって始まるが、次第にリーダーの数を増大させていくことが必要だ。

何千人を従順な信望者に変える一人の英雄が変革を成功に導くのではない。今日の企業は、複雑すぎて一人の巨人では変革できないのだ。

多くの人材がリーダーシップを発揮し、周囲がその取組みに協力する。各自が責任の範囲でリーダーの計画に適切に参加するからこそ、変革は成功するのだ。

コメント

企業を変革する力とは?リーダーシップ論の大家ハーバード・ビジネス・スクール教授、ジョン・P・コッター氏が、これまでのマネジメント至上主義から、リーダーシップを重視する方向転換を主張する。

コッター氏の著書は、日本ではあまり知られていない。しかし、アメリカでは絶えずアマゾンのベストセラーに名を連ねるほど人気がある。彼はハーバード史上最年少の33歳で教授になった天才でもある。

さて、本書のテーマは、企業の変革である。どうすれば変革がうまくいくのかということで、その手順と原動力、つまりリーダーシップをテーマにしている。

リーダーシップとマネジメントの違いは、ピーター・ドラッガー氏が的確に言い表している。
すなわち、
「マネジメントは物事を正しく行うこと。リーダーシップは正しいことを行うこと。」なのである。

リーダーシップといえば「7つの習慣」という本の中で、著者のスティーブン・コビー氏は次のようにたとえている。

「ジャングルの中で、作業チームが斧を持ち、道を切り開いている。マネージャーは、後ろでマニュアルやスケジュール、賃金体系を作っている。」

リーダーは、ジャングルの中で一番高い木に登り、そこからときどき「おーい、このジャングルは違うぞー」と叫んでいる。

そう言われて次のように答えるのがマネージャーである。「ちゃんと時間内に予定どおりの木を切っているんだからいいじゃないか。メンバーも予定以上に休みを取っているじゃないか!」

だが考えてほしい。間違ったジャングルでいくら木を切っても、行きたいところには着かない。同じことが、あなたの会社で起きてないだろうか?

われわれは日常に埋没すると、日々の仕事をこなすことに精一杯になり「どうやるか」ばかりに気をとられる。しかし同時に「今、これをやっていていいのだろうか?」と客観的に見極めることが大切である。

まして、企業のような組織ならなおさらである。組織では、一人が軌道修正の必要性に気づくだけでは不十分である。それを全員が共有し、かつ行動させる必要がある。これは並大抵の力ではできない。これができる人こそがリーダーになるべきなのだ。

今日のように変化のスピードが速いと、絶えずそうした軌道修正が必要である。いつも周りに目を凝らし、必要なら正しい方向に組織の舵をきれる人材こそリーダーであり、本当に必要とされている人材なのである。

記事提供:藤井 孝一ビジネス選書&サマリー