Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則

ジェームズ・C・コリンズ(著)、山岡 洋一(翻訳)
日経BP社; 日経BP出版センター

今回は、全米で100万部を超えた『ビジョナリーカンパニー』の続編です。
偉大な企業には共通してあるのに、偉大になれなかった企業に足りなかった点とは何でしょうか?


サマリー

前作『The McKinsey Way』(邦題『マッキンゼー式 世界最強の仕事術』)に続いて、イーサン・M・ラジエルが新たに世に送り出す書籍。マッキンゼーの理論と技を実践するための優れた指南書に仕上がっている。

問題を解決する第一歩は、構造を把握することである。目の前にある問題の領域を決定し、他の要因とのつながりや成行きの全貌など全体に目を向ける。

次に問題を明白にし、単純化する。ふつう複雑な問題は、より小さく単純な問題の集まりに変えることができる。そして個別に解決することができる。

問題を分解するには論理ツリーを使う。これにより問題のあらゆる構成要素を階層ごとに並べる。大きいところから次第に小さなものへ分けていく。

その際、MECEを貫く。つまり要素を重複せず、かつ、一つも落とさないように分けていくのである。

こうして現実を単純化した形で表現すれば、複雑な問題の周りに散乱しているものを取り除き、混乱に秩序をもたらすことができる。


「良い」企業はたくさんあるが、「偉大な」企業に飛躍できる企業は少ない。その「飛躍」には、何が必要なのだろうか?

まず「偉大な」企業は、飛躍の時期に優れた指導者に率いられている。彼らは、個人としては「謙虚」だが、職業人としては「意思が強い」という二つの矛盾した性格を併せ持っている。

また、野心的なのだが、その野心は自分でなく会社に向けられている。後継者を選ぶときも、次世代にさらに偉大な成功が収められるような人物を選ぶ。

意外なことに、彼らは共通して成功の要因として自分の偉大さではなく「幸運」をあげる。それは我々が抱いてきた理想のリーダー像と全く異なるものだ。


偉大な企業の経営者は、まず「誰を選ぶか」を決める。そのあとに「何をすべきか」を決める。ビジョンも、戦略も、戦術も、そのあとである。

偉大な企業は、人事の決定に関して次の原則を厳格に一貫して適用している。

  1. 適切な人材を探し続ける。
  2. 必要なら、人を入れ替える。
  3. 最高の人材は、最大の問題解決でなく最高の機会の追及にあてる。

また偉大な会社の経営陣は、最善の答えを探し出すために徹底的に議論する。方針が決まれば、自分の利害を超えて、その決定を全面的に支持する。

一方、偉大でない企業は「一人の天才を千人で支える方式」をとる。天才的な指導者がビジョンを確立し、それを実現するための有能な兵士を集める方式である。しかし、これは天才が退けば崩壊する仕組みだ。


偉大な企業は自分が置かれている現実の中でも、最も厳しい事実を直視する。自社の置かれている状況を正確に把握すれば、正しい決定がくだせる。

そのためにも、上司が部下の意見、つまり真実を聞く機会が十分にある企業文化を作り上げることが必要である。

  1. 答えでなく質問で指導する。
  2. 対話と論争を行い強制はしない。
  3. 解剖を行い強制はしない。
  4. 入手した情報を無視できない情報に変える仕組みを作る。

偉大な企業は、他の企業と同じくらい逆境にぶつかってきた。しかし、対応の仕方が異なる。真っ向から取り組んでいるのだ。その結果、さらに強くなる。

その際に、重要なことは最後には必ず勝つという確信を失わないことである。


偉大な企業になるには、次の3つの点を明らかにすることが重要である。

  1. 自社が世界一になれる部分はどこか。
  2. 自社の経済的原動力になるものは何か。
  3. 自社が情熱を持って取り組めるものは何か。

これは、目標でも、願望でも、戦略でも意図でもない。あくまでも自社に対する認識に基づくものである。

偉大な企業はハリネズミに似ている。単純で、冴えない動物だが、ひとつだけ“針がある”という点を知っており、そこから決して離れない。

一方、偉大になれない企業は、狐に似ている。賢く、様々なことを知っているが、一貫性がないために失敗する。

なお、偉大な実績を残すには、偉大な産業で事業を行う必要はない。偉大な企業は、どれほど悲惨な産業でも利益をあげる方法を知っている。


偉大な業績を維持するには、 頑なに「ハリネズミの針」を重視し、自ら規律を守り、規律ある行動をとる人が集まる文化を作り上げることである。

新たな技術に関しても、自分の針に直接マッチすれば、その技術で先駆者になろうとする。そうでなければ普通に採用するか、さもなくば無視する。

偉大な企業は、外部から見ればあるとき飛躍したように見える。しかし、内部から見れば、生物の成長のように積み重ねの過程に感じられるものだ。

偉大さを維持することは、弾み車を回すようなものだ。始めは少し動かすだけでも物凄い努力が必要だが、長期間一方向に押し続けていると、やがて勢いがつく。

偉大な企業への飛躍を導いたリーダーたちは、従業員の「力の結集」などほとんどやらないものだ。条件さえ整えば、これは自然に起きるものなのだ。

コメント

本書は、全米で100万部を超えた『ビジョナリーカンパニー』の続編である。
偉大な企業11社に共通し、他の「飛躍したが持続しなかった企業」になかった点を指摘していく。

本書を読めば、企業を飛躍させる真のリーダーシップとは何か、企業の競争力を高める人材の質とは何かを考えさせられる。そして、経営とはやはり最後は「人」なのだと確認させられる。

我々が、偉大な人や企業の話に興味を持つのは「自分もそうなりたい」と考え「何かあやかれるヒントはないか」と思うからである。

しかし、そこには同時に二つの感情が付きまとう。 まず「すばらしい」と素直に受け入れる感情である。

もうひとつは「だからどうなんだ」という感情である。
つまり「その人はそうだろうが、自分にはあまり当てはまらない」という想いだ。

我々が知りたいのは通常、「では自分や自分の会社は、どうすればそうなれるのか」という問いへの答えである。

しかし、多くの書物は、それに答えてはくれない。
なぜなら成功とは、その人や企業にとってあまりにも固有なことの集積だからである。

本書はそれに挑戦している。
つまり、「ごく普通の企業」から「偉大な企業」に飛躍した企業が、飛躍できた理由は何かを徹底的に調べ、法則化している。

ここでいう偉大な企業とは、株式運用益が15年間市場平均以下なのに、あるとき好転し、以降15年間平均の3倍以上を維持し続けた企業である。

その企業を調べ、原因の共通項を探り、法則しようとしている。

しかも、まず法則ありきで、あとからそれを裏付ける事例をかき集めるといったやり方ではない。

まずデータがあり、そこから真実をあぶりだすという、より手間とヒマを要する方法をとっている。

これは従来のやり方とは全く逆のアプローチであるせいか、そこにあぶり出される法則は、意外なものが多い。

しかし、それこそがまさに偉大な企業が、偉大たり得た原因なのである。

ひとたび本書にあるこうした数々の法則に触れれば、今後偉大な企業に遭遇した際、それが特殊な幸運や偶然の積み重ねによるものだ、とは思えなくなるはずである。

記事提供:藤井 孝一ビジネス選書&サマリー