ネクスト・ソサエティ 歴史が見たことのない未来がはじまる

P・F・ドラッカー(著)、上田惇生(訳) ダイヤモンド社
21世紀の社会は、一般に予想されているものとは全く異なるものになる。
それをネクスト・ソサエティと呼ぶ。かなりの部分はすでに実現しつつある。
サマリー
90年代半ば、IT化とグローバル化でニューエコノミーが到来し、株式市場は永久に活況するといわれていた。
そのとき私は経済より社会の変化に着目していた。そのほうがずっと急激であるし、影響もずっと大きい。
例えば、出生率低下とそれに伴う若年人口の減少などの人口構造の変化、製造業の地位の低下、労働力の多様化などだ。
21世紀の社会は、一般に予想されているものとは全く異なるものになる。それをネクスト・ソサエティと呼ぶ。かなりの部分はすでに実現しつつある。
若年人口は急減する。これはこれまで前例の無いことだ。先進国のすべてと中国、ブラジルではすでに人口維持に必要な出生率は2.2%を下回っている。
今から25年後、誰もが70代半ばまで働かなければならなくなるだろう。しかも、大半は契約、非常勤、臨時、パートタイムで働くようになる。
また大量の若年移民の受け入れが必要になる。その結果、外国人労働者や移民の受け入れが国論を2分する問題となるだろう。
国内市場も、これまで消費の主役であった若年層に代わり、中高年が主役となる。企業は高学歴高年者を採用し確保することが重要なテーマになる。
ネクスト・ソサエティは知識社会である。知識が資源の中核である。働き手の中心は、知識労働者になる。
知識は、簡単に移動するものだ。そのため社会にはいかなる境界線もなくなる。また、知識は誰もが教育で得られるため、誰もが成功する可能性を手にする。
しかし、そこには勝者と敗者が生まれる。こうしてネクスト・ソサエティは競争の激しい社会となる。
例えば、ITにより知識は瞬時に世界中に伝わるようになった。そして消費者は、何をどこでいくらで手に入れられるかを知るようになった。結果どんなローカル企業もグローバル競争に巻き込まれるようになった。
知識労働者が主役であるネクスト・ソサエティでは、彼らがこれまでの製造業における肉体労働者のように、社会と政治の中核を占めるようになる。
1万年の間、社会を支配してきた農業が20世紀に力を失った。同じように、今後製造業が力を失っていくだろう。
現に大戦後から今日までに、先進国の工業生産は3倍以上になった。しかし価格は低下した。その間、医療や教育など知識製品の価格が3倍になっている。
アメリカでは就業人口の35%を占めていた製造業の雇用が半減した。だが社会不安は起きなかった。依然30%近い水準にある日本やドイツではどうだろう?
これまで多国籍企業は、国別に独立した子会社をもっていた。子会社はそれぞれの国で、国内企業として独自の事業を展開してきた。
これからのグローバル化は、戦略によって一体化する。各国の子会社との関係も株の所有による支配関係でなく、合弁、提携、ノウハウ契約などが中心だ。
これに伴ってトップマネジメントのあり方も変わる。現在のトップは、現場のマネジメントの延長線にすぎないことをやっている。
だが、今後トップは独立した機関として価値、ミッション、ビジョンを作る。企業内の他の機能は、いずれもアウトソーシングされてしまうかも知れない。
コメント
本書は、P・F・ドラッカーによる最新の未来予測である。
「日本の最大の問題は経済ではなく社会である」とし、来るべき未来を予測している。
また、そこで生じる問題や脅威、機会も明らかにしている。
著者のP・F・ドラッカー氏はすでに92歳である。
論者の中には、筆致が衰えたという人もいる。しかし本書を読む限りでは、それを全く感じさせない。
もちろん未来予測は容易ではない。
数年前の誰が今日の日本を、そして世界を予測できだろうか。
以前『2001年宇宙の旅』という映画があった。その2001年も、気がつけば、はや過去である。あの映画は「映画史上、最も科学的正確さにこだわった作品」といわれている。それでも世界はあのようになっていない。
これだけ変化のスピードが速いと、株価や地価、為替など来年のことすら予測できない。
もちろん、かなり正確にわかることもある。
例えば20年後の労働人口やその年齢構成である。なぜなら20年後に働く人は、すでに生まれているからである。戦争や自然災害でもない限り、この予測は大きくブレないはずである。当面、若年人口は減り、高齢化が進み、これに伴い市場も雇用も大きく変わるはずである。
こうした、既知の事実をベースにすれば、見えてくることも多い。もちろん予測するだけでは意味が無い。大切なことは、この予測に従って準備すること、すなわち行動である。
例えば、崩壊しつつある年金に備え、何をしているだろうか?
終身雇用が崩壊し、実力主義の社会の到来しつつある今、どんな対策を打っているだろうか?仮に頭でわかっていても、なかなか行動に移せないのが人間の性である。
この未来予測を契機に、一度自らの未来にも目をむけ、行動してみてはいかがだろうか。
記事提供:藤井 孝一/ビジネス選書&サマリー
