マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック

イーサン・M・ラジエル(著)、嶋本 恵美、上浦 倫人(翻訳) 英治出版
前作『The McKinsey Way』(邦題『マッキンゼー式 世界最強の仕事術』)に続いて、イーサン・M・ラジエルが新たに世に送り出す書籍。マッキンゼーの理論と技を実践するための優れた指南書に仕上がっている。
サマリー
前作『The McKinsey Way』(邦題『マッキンゼー式 世界最強の仕事術』)に続いて、イーサン・M・ラジエルが新たに世に送り出す書籍。マッキンゼーの理論と技を実践するための優れた指南書に仕上がっている。
問題を解決する第一歩は、構造を把握することである。目の前にある問題の領域を決定し、他の要因とのつながりや成行きの全貌など全体に目を向ける。
次に問題を明白にし、単純化する。ふつう複雑な問題は、より小さく単純な問題の集まりに変えることができる。そして個別に解決することができる。
問題を分解するには論理ツリーを使う。これにより問題のあらゆる構成要素を階層ごとに並べる。大きいところから次第に小さなものへ分けていく。
その際、MECEを貫く。つまり要素を重複せず、かつ、一つも落とさないように分けていくのである。
こうして現実を単純化した形で表現すれば、複雑な問題の周りに散乱しているものを取り除き、混乱に秩序をもたらすことができる。
問題を本質的な構成要素に落とし込んだら、次は解決策の仮説を立てる。仮説に基づいてリサーチや分析を進めると意思決定の効率や効果が増すからだ。
仮説を立てる際、リサーチなどしない。自分が知っている事実に基づき直感的に結論を出す。次に複数の仮説から間違ったものを落としいく。
残った仮説を証明あるいは反証する。ただし事前にどんな分析が必要になるかは決めておく。これを考えるにあたっては問題点ツリーが便利だ。
これは仮説を証明、反証するために明らかにしておくべき項目を枝にしたツリーで、疑問点を細分化したものである。それに答えていくことで分析不要な項目は事前に取り除いておくことができる。
仮説を立てたら、それを事実に基づく分析で裏付ける。そのために分析の計画を立て、さらにその計画をワークプランに落とし込んでいく。
まずは必要と思われる分析や情報源、予想される結果、分析の責任者や期日などをリストアップし、スケジュール化していく。
その際、大切なことは優先順位を決め、不要な分析は省くことだ。問題に一番影響しそうなキードライバーを見つけ、それに的を絞ることが大切なのだ。
なお分析では絶対的正確さを目指す必要はない。たえず問題解決のための分析であることを思い出すべきだ。役立たない分析はやるべきではない。
次にデータを収集する。事実は経験や直感の不足を補ってくれる。マッキンゼーでは年次報告書に目を通している。
その際、外れ値(極端に良い値や悪い値)に注目して、それを掘り下げる。また競合他社や他業界の業績トップ会社などのベストプラクティスから学ぶ。
なお誰かに質問してデータを集める場合「検討もつかない」といわれてあきらめないこと。それは時間が無い、答えることが不安だ、面倒くさいといっているにすぎない。本音を突き止めて調整すべきだ。
なお組織でデータ収集するには、データベースを構築するなどインフラを整備して収集しやすい組織にしておくことが大事である。そのために日ごろから事実の持つ威力を組織にわからせる努力が必要である。
最後にデータを解釈する。集まった事実から組織に付加価値をもたらす達見を引き出し、重要な決定を下せるようにする。
まず集まったデータから仮説を証明あるいは反証するデータを抜き出す。これをつなぎあわせ一貫性のあるストーリーにする。そこには創造性も必要だ。
そしてすべての分析がクライアントの問題解決に役立つものであること。なお分析では、早いことと、正しいことの両方を目指すべきだ。
その際、パレートの80対20の法則が役立つ。またひらめいたことを忘れないよう、毎日学んだことをチャートにして書きとめておくことも大切だ。
なお、解決策に事実を当てはめないこと。すばらしい仮説も事実に否定されることがある。そのとき変えるべきは仮説であり事実のほうではない。
コメント
本書は前作『The McKinsey Way』の続編になる。前作ではマッキンゼーにおける事例で“クライアントが抱える難問を解決する方法”を説いていっるが、今回はその「マッキンゼー式」を読者が使いこなせるように書かれている。
例えば、「マッキンゼー式」概説の後、各企業が抱える問題を解決できるよう導いてくれる。現実に即した例やたとえ話、練習問題でマッキンゼー式を使えるよう工夫されている。
この配慮はありがたい。最近はやりの思考法本を読むと、読んだ後に「だからどうなの」という感想をもつことが多い。読者が知りたいのは「自分の仕事にどう役立てるか」のはずだ。
ビジネス書を読むときにこの視点は大切だ。書いてあることは業界知識だったり、経営者の生き様だったり、考え方のヒントだったり、お金のため方だったりする。だが肝心なのは読者が"自分の生活をどうするか"である。
今回紹介したようなビジネスのスキルを紹介した本も同様なことがいえる。書いてあることを頭に詰め込むだけでは、「頭がよくなった気がする」以外の効果はないだろう。
それでは、バブルの時代に“ヤンエグ”(完全死語)と呼ばれたいばっかりに、空っぽのゼロハリのアタッシュと、鳴らない携帯電話を持ったのとあまり変わりがない。仕事や生活に実践的に使えてはじめて価値がでてくる。
こういう本を読んで「自分の知っていることばっかりだ」とコメントしている人がよくいるが、そういう人はその辺、どうだろうか?
実をいえば、本書にも新しいことはあまり書いてあるわけではない。だが、本当に本書にそって仕事を進められれば、仕事の質は格段にランクアップするはずだ。
机の上において自分の仕事をチェックする、そういった実践に即した使用には、本書はとても重宝な本といえるだろう。
記事提供:藤井 孝一/ビジネス選書&サマリー
