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労働分配率と企業分析
【労働分配率と利害関係者】
労働分配率は「よく」高いか低いかという観点から議論がなされます。しかし、高ければよいのか、または低いほうが望ましいのかという単純な結論にはならないところにその難しさがあります。
その企業に関わる利害関係者について、従業員、株主、取引先もしくは債権者などさまざまな立場によって、労働分配率の持つ意味が変わってきます。
従業員であれば労働分配率は高いほど、概ね自らの所得が増えますので好ましいということになるでしょう。
一方株主であれば、企業が生み出した付加価値を配当に回して欲しいということで労働分配率は低いほうが望ましいことになります。
上記から結局、労働分配率に関する議論は、企業の付加価値という原資についてだれが多く配分を受けるかという問題に帰着するといっても過言ではないのです。
【労働分配率と企業分析】
それでは、上記を踏まえて投資家としての立場から労働分配率を使って、どのように企業を分析していくか考えてみます。
まず、対象業種から検討していきますと、資本集約的な製造業であれば労働分配率は低い傾向にあり、IT関連業種であれば逆に労働分配率は高くなる傾向にあるかもしれません。
ただ、すでに述べたように労働分配率が低いから安全性が高く、逆に労働分配率が高いから安全性が低いというわけではないことはお分かりいただけると思います。できれば同業他社との比較をし、なぜ他社とくらべて高いのか、低いのかということを分析してみてください。前述した、付加価値の算式、
付加価値=営業利益+人件費+賃借料+租税公課+減価償却費
のうち、どれがウェイトが高いのかを見てみるのも、大きなヒントになります。
【労働分配率と財務分析】
続いて、労働分配率の高低と財務分析を結びつけて、対象企業の特徴をつかむのも有力な手段となります。
すなわち、過去の財務諸表から数期間にわたる労働分配率の趨勢(すうせい)を把握し、自己資本利益率や流動比率などの他の財務指標との関連を調べるのです。トレンドとして労働分配率が低下しているのに、他の財務指標が悪化していたらその企業はリストラに失敗し、なおかつ業績が不振になっているのかもしれません。
企業はまさしく生き物であり、経営のさまざまな状況が他の状況に有機的に影響を与えているのです。それゆえに、労働分配率をひとつのキーとなる指標として、他の指標との関連性を分析してみると、その企業のより深い理解につながってくるのです。
公認会計士 藤田 博司
[2009年7月9日 掲載]
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