対応策のひとつ『みなし労働時間制』とは?(後編)
一般的に、みなし労働時間制の導入、イコール時間外労働への割増賃金を支払わなくてもよい(?)と捉えてしまうケースも少なくありません。
しかしながら、就業規則等で「所定労働時間労働したものとみなす」と規定して、そのみなし労働時間と算定された時間が法定労働時間(8時間/日)を超えてしまう場合には、その超える部分は時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります。
では、時間外労働だけでなく、休日労働などが生じた場合はどうなのでしょうか。
休日労働・深夜労働をさせる場合は?
この場合も、みなし労働時間制を採用しているからといって、「休日や深夜にも自由に労働させてもいい」ということにはなりません。
同制度に適用する社員が休日または深夜に労働した場合、休日(または深夜)割増による賃金を支払わなければならないのです。
ですから労使協定のなかで、「特別の指示のない限り、原則として休日(または深夜)におよばないものとする」、などと明記した方がよいかもしれません。
「営業手当」との関係は?
営業職の社員への対応として、「営業手当」を支払うケースも多く見受けられますが、みなし労働時間を採用した場合、適用した営業社員が、月20~30時間の時間外労働をした場合、この時間に相当する額以上の営業手当が必要となります。
裁判例からみても、営業手当に時間外割増が含まれていると主張するためには、手当が何時間分の割増賃金に相当するかが分かるように、営業手当のうち割増賃金相当部分とそれ以外の部分とを明確に区別することを要する、としている例があります。
ですから、営業手当の額を決定する際には、「営業社員が通常どのくらい時間外労働しているのか」をよく理解する必要があるのです。
事業場外労働と事業場内労働が混在する場合の考え方は?
事業場外労働と事業場内労働が混在したとしても、原則として事業場内の時間を含めて所定労働時間労働したものとみなします。ただし、事業場外業務を遂行するには通常所定労働時間を超えて労働することが必要であり、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされる場合には、このみなし労働時間に事業場内で従事した労働時間を加えた時間労働したものとみなされます。
以下、具体的な事例を交えてご説明しましょう。
≪例:A社のケース≫
所定労働時間 : 9時~18時
休憩 : 12時~13時
みなし労働時間(営業職) : 9時間

A社では、上記のようなケースが生じた場合、営業3氏とも終業時刻は同じであるのに、外勤業務を、実際の長さにかかわらず「通常必要とされる時間」として9時間とみなした場合、早く帰社して労働時間の算定可能な内勤業務に従事したほうが、時間外手当が稼げてしまうではないか、という点に疑問を抱いています。
しかし、行政解釈では、
みなし労働時間制による労働時間の算定の対象となるのは、事業場外で業務した部分であり、労使協定についても、この部分について協定する。~
~そして、労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、みなし労働時間によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となる。(s63.3.14基発第150号)
しています。
ですから、A社の場合、営業社員についてみなし労働時間制を適用するとし、通常必要とされる労働時間を9時間と協定した以上は、日毎に事業場外における労働時間に多少の違いが生じても、9時間労働したとみなさなければならないのです。
つまり、営業3氏の場合、
X氏は時間外4時間、Y氏は時間外6時間、Z氏は時間外3時間、
と計算されることになります。
A社のケースは極端な例とも考えられますが、このような例が頻繁にでてくるようならば、やはり対策を考える必要があるでしょう。
例えば、前記労働時間の決め方として4つのタイプをご紹介しましたが、「通常必要とされる時間」を複数用意して、合理的に処理するのもひとつの方法です。
しかしながら、営業社員の業務について一概にその労働時間を把握することができないことから採用した制度であることを考えると、労使で定めたみなし労働時間に落ち着くのが普通の営業社員の勤務形態であると考えられますし、A社Y氏のように早々と帰社し、4時間も内勤業務に従事するのが常態となりうるならば、営業社員の勤務状況そのものに疑問があると思われます。
このようなケースが生じた場合は、その営業社員の勤務内容をチェックすべきともいえるかもしれません。
社会保険労務士 米田聡美
[2008年6月17日(改) 掲載]
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