職能給・職務給のメリット、デメリット(2)
職能給は従業員個々の「能力」評価に基づいて習熟昇給や昇格昇給を行うことが建前ですが、その前提にはどうしても日本的な年功賃金思想があると考えられています。
しかし能力を直接評価することは、実際は大変難しく、そのため職能給はどうしてもあいまいな年功的な運用にならざるをえないのかもしれません。
この点職務給は、仕事のアサイン(採用、契約の更新、異動、昇格)の段階でひとまず能力評価は終わっているため、あとは仕事の出来栄えについての業績評価を行い、習熟昇給に反映させるだけなのです。
職能給では仕事が必ずしもレベルアップしないのに、年功的に資格・賃金が上がり続けるという弊害が大きな問題とされることが多いようです。
しかし職務給は、多少の習熟昇給はあるものの、基本的にはより市場価値のある仕事にランクアップしない限り賃金も増えない仕組みになっています。
仕事が変わらなければ数年、長くても10年前後で賃金は頭打ちになります。
そのため、職務給を導入すると、年功的な賃金上昇は抑えられ、仕事の市場価値に基づいて賃金水準を合理的にコントロールできるようになると考えられます。
職能給は、採用した社員を長期雇用のもとで育成し、活用するという包括的な考え方がベースになっているといえるかもしれません。

「社員となった以上は、いろいろな仕事を覚えてもらいますよ」
「では、よろしくお願いします」
とうような、身柄を丸ごと会社に預けるイメージです。
これに対し職能給は、個別的な考え方がベースになっているといえます。

「職務記述書のとおり、これがあなたの仕事で、賃金はこれだけです。やりますか?」
「わかりました、やります」
というイメージです。当然、仕事の範囲が明確な仕事ほどうまく機能し、従業員一人ひとりの職務に対する意欲を高め、仕事への忠誠心やプロ意識を引き出すうえでも効果的です。
以上のような観点から、職務給制度において年齢や差別、学歴のような個人的な属性や、経営者の主観的な判断によって賃金が影響を受けることが少ないので、よりハイレベルの仕事にチャレンジする向上心と自助努力さえあれば、自分の力で賃金を増やすことは可能といえるかもしれません。
また、昨今の流動的な労働市場のもとでは、働く側にとってもこうした納得性の高い制度の方が受け入れ易いのかもしれません。
しかし一方で、次のようなデメリットも指摘されているのです。
- 個々の仕事の職務記述書を作成し、それをメンテナンスすることが大きな負担
- 仕事の大きさや難易度の職務評価、世間相場に合わせて賃金を調整することが面倒
- 職務評価が先行して賃金の大部分が決まりがちであり、個人の意欲や業績を賃金に反映しにくい
- 賃金が変わらないのであれば、従業員は仕事の改善や変化を嫌うようになる
- 仕事が変わると賃金に影響するため、柔軟な人事配置を阻害するようになる
- 硬直的な仕事の縄張り意識を助長し、他の仕事と強調・連携しなくなる傾向がある
- 定義してある職務以上の仕事をすることに対してネガティブになる
- 日本では職種別の賃金相場が不明確で、職務給を運用しようとするとリサーチに費用と手間がかかる
職務給についても、その運用には以上のようなデメリットも十分理解し、それぞれの企業の必要に合わせて使うといった工夫が必要のようです。
社会保険労務士 米田聡美
[2003年12月 掲載]
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