年俸制の導入(2)
具体的に年俸制を運用していくうえで、会社として何が必要要件となるのでしょうか?
そのポイントをあげていきましょう。
年俸制を効果的に機能させるには
1.適用対象各人の期待成果と対応する業績指標、行動基準を明示する
<管理職・高度専門職>
管理職の場合は担当部門の期待業績、経営スタッフや高度専門職の場合は所属する組織の方針に基づく達成課題が期待成果となります。
<一般社員>
一般社員の場合は所属部門の期待業績や上司の達成課題が上位方針となってそのまま個人へブレイクダウンされることになります。ですから、このような上位方針との関連がないままにいきなり個人目標を書かせるようなやり方をしてしまうと、業務運営も人事管理も混乱するので注意が必要です。
2.戦略決定の自由度と戦術選択の裁量幅を与える
年俸制は、各社員について毎年目標を設定して、年度の終わりにその達成度を評価して賃金を支払う方法であるため、「目標管理」が重要となってきます。
ですから、そのためには目標に対するアプローチ方法については大幅に権限が委任される必要があります。しかし、一般社員の場合大幅に権限委任されることは少ないため、出てきた成果についての業績評価をあまり強調することは勧められないといえます。むしろ、上司の認めた戦略・戦術の枠内での活動の妥当性を評価したりするほうがわかりやすいようです。
3.計画的な目標管理がうまく働くよう、上司が部下の仕事の内容と実行プロセスをしっかり把握し、行動評価に責任を持つこと。
特に一般社員の場合、本人の意思だけでは仕事をコントロールでいないケースがしばしば起きます。上司はこのような社員の仕事の状況をよく理解し、日ごろから部下の仕事のプロセスをしっかり把握したうえで問題意識を共有し、部下の信頼を確保することが大切です。
4.時間外賃金の法的問題を十分配慮する
年俸制はもともと、労働基準法第41条2号に該当する労働時間管理が免除された管理職の報酬形態で、一般社員であっても、みなし労働時間制を適用できる営業職や、裁量労働制が適用される企画職・専門職の場合は、完全固定給に近い運用が可能ですから、年俸制にもフィットしやすいのです。
しかし、それ以外の事務職や作業職の場合は、法的に実労働時間に応じた割増賃金の支払いが必要となります。
では、どのような年俸の設定が必要となるのでしょうか?
通常の労働時間に対応する賃金と、割増賃金に相当する賃金とが区別できるようになっている必要があり、つぎのような方法で対処する必要があります。
- 年俸制とは別に超過勤務手当をその都度支払う
- 一定時間分の超過勤務手当をあらかじめ年俸の一部として別枠表示・固定払いにしておき、実労働時間がこれをオーバーしたときは不足額を支払う
- 実労働時間が一定時間を超えないような労働時間管理を行う
このように、年俸制を維持するとすれば、前年度実績に基づいた各月の支払いとしたうえで、割増賃金部分を特定することが望まれます。
ただその場合、各企業により業務の繁閑によって時間外労働の実時間は異なるのが一般的なのではないかと思われます。そこで、定額の時間外手当を支払う場合、比較的時間外労働の多い月を基準に考えるべきでしょう。そうすると、基本給(固定給)に相当する部分は当然低い水準になると思われます。導入の際には年間勤務状況をよく把握し、検討することが必要です。
なお、いわゆる完全固定給の運用となる年俸制といえども、1ヶ月まるまる欠勤した場合や退職または休職した場合、あるいは解雇された場合など直ちに無給となるよう規定している例が多いようです。年俸制以外の社員の賃金支払い方法との整合性があれば、欠勤控除だけでなく、遅刻や早退をした部分の控除も可能なのです。
最後に、年俸制導入にあたってのポイントを以下にまとめてみましょう。
年俸制導入にあたっての確認事項
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年俸制賃金導入の検討 → なぜ?
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(注)会社は社員に何を求め、社員は会社に何を期待するのかを明確にする |
評価基準の妥当性を、労働時間管理の対象となる一般社員に求めることができるかが、年俸制を導入するうえで、法律論以上に実は企業にとっては難しく、重要な課題となります。
人事労務面からみた場合、年俸制導入の目的・必要性について再度検証することが重要
社会保険労務士 米田聡美
[2003年11月 掲載]
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