第8回 就業規則へは「解雇の事由」の記載を明確に!
常時10人以上の労働者を使用している事業主は、就業規則を作成して、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。(労働基準法第89条)
また、労基法では、就業規則に記載しなければならない事項として
- (1)絶対的記載事項・・・必ず記載しなければならない項目
- ・労働時間 ・休日 ・賃金 ・退職 などに関する事項
- (2)相対的記載事項・・・規定を設けている場合に記載しなければならない項目
- ・退職金や安全衛生、表彰・制裁などに関する事項
の2つを規定しています。
これまで、こうした記載事項のなかで、就業規則上の解雇事由の表現が抽象的であるが故のトラブルが多数発生していました。
そこで、今回の法改正では、
- 全く解雇事由が記載されていない就業規則が減少することを期待
- 就業規則の作成段階で解雇事由が整理される
- 労使当事者間において解雇についての事前の予測性が高まり、実際の解雇が行われる場面での解雇理由に関するトラブルが未然に防止できる
といった観点から、解雇に関するトラブルを未然に防止することを目的として、上記(1)の絶対的記載事項に「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」が含まれていることを法律上明らかにしています。
ここがポイント
就業規則をチェックしましょう!
「解雇の事由」について記載されていますか?
普通解雇の場合
【ポイント1】解雇事由の分類
解雇事由については、一般的に
- 労働能力または適格性の欠如・喪失によるもの
- 労働者の規律違反行為によるもの
- 経営上の必要性によるもの
以上のように大別されます。この分類に沿った具体的な規定を設けましょう。
【ポイント2】試用期間はありますか?
試用期間中の労働契約は、『解約権留保付労働契約』とされ、最高裁においても、こうした留保解約権に基づく解雇は通常の解雇よりも広い範囲で解雇の自由が認められるべきと解されています。
ですから、試用期間を設けている場合、試用期間中の解雇についての規定を設ける必要もあります。
ただし、試用期間の有無、また試用期間中の契約内容によりますので、必ずしも規定を設けなくても差し支えはありません。
【ポイント3】予期せぬ事由に対応するために
解雇に至るまでの事情は千差万別であって、就業規則を作成する時点では想定できないような事情が発生することも考えられます。
こうした予期せぬ事由について網羅的に規定することは実際問題困難ですので、解雇の事由の中に次のような包括条項の規定を設けることも必要です。
<例>『その他、前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき』
ただし、他の解雇事由をできる限り明確かつ網羅的に規定し、包括条項が適用される範囲をより限定することが大切です。
懲戒の事由について
【ポイント4】就業規則に明記していますか?
懲戒処分については、上記(2)の相対的記載事項である「制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を定めていない場合、労基法違反となってしまいます。
ここに注意
最高裁判決において、『懲戒処分について、使用者は規則や指示・命令に違反する労働者に対しては、「規則の定めるところ」により懲戒処分ができる』としているところからも、就業規則に定めのない事由による懲戒処分は“解雇権の濫用”と判断されることになります。
また、懲戒事由の内容について、労基法上では特に制限はされていませんが、“合理性がない”と判断された場合には、その事由による懲戒処分もまた“解雇権の濫用”と判断されると考えられます。
【ポイント5】懲戒の対象
懲戒の対象者に対しては、規律違反の程度に応じて、過去の同様の事例による処分の程度を考慮するなど、公正な処分を行わなければなりません。
裁判において、使用者の行った懲戒が公正な処分ではないと認められた場合、“懲戒権の濫用”として無効と判断されます。
ここに注意
- 懲戒規定が設けられる以前の行為 → さかのぼって懲戒処分することはできません。
- 1回の懲戒事由に該当する行為 → 2回の懲戒処分を行うことはできません。
【ポイント6】懲戒解雇事由の分類
解雇事由については、一般的に
- 経歴査証
- 職務怠慢
- 業務命令違背
- 業務妨害
- 職場規律違反
- 私生活上の非行等
- 誠実義務違反
に分けられ、この分類に沿った具体的な規定を設ける必要があります。
なお、包括条項については、上記【ポイント3】と同様の考え方となります。
包括条項を定める一方で、解雇に至るまでの事情について、就業規則を作成する時点では想定できないような事由もあり得ますが、懲戒解雇の事由をできる限り明確かつ網羅的に規定することが必要です。
社会保険労務士 米田聡美
[2005年11月10日 掲載]
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