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実例人事労務Q&A

採用内定を取り消すことはできるか

Q

不況により経営が急激に悪化し、雇用調整をしなければならない事態になりました。そこで4月に採用を予定している新卒者の内定を取り消すことを検討していますが、これは可能でしょうか。

A

採用内定が、労働契約の締結か或いは労働契約締結の予約かによって対応は異なります。採用内定が労働契約の締結と認められる場合には、実際に労務の提供がなされていなくとも労働契約は成立していますので、これを取り消すことは法律上解雇に当たります。採用内定が労働契約の予約に過ぎない場合は、労働契約は成立していませんので、解雇の問題は生じません(労働基準法第20条・昭和27.5.27基監発15号)。

判例では、「採用内定通知のほかには労働契約のための特段の意思表示が予定されていない場合、企業からの採用内定通知は労働者からの労働契約の申し込みに対する承諾であり、誓約書の提出と相まって、就労の始期を定めた解約権を留保した労働契約が成立したと解する」(「大日本印刷事件」最高裁昭54.7.20第二小法廷判決)としていますので、このような事実があれば労働契約は成立しているとみてよいでしょう。

採用内定の取消し(解雇)が、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」となります(労働契約法第16条)。また、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」(前掲判決)としています。個々の事情により判断が異なり一概には言えませんが、企業として解雇回避の努力を尽くしても経営上やむを得ない場合には採用取消し(解雇)の合理性が認められると考えられます。

やむなく採用内定を取り消す場合には、解雇予告をするか、解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。また、これとは別に相手から補償を請求された場合には、誠意を持って対応すべきでしょう。なお、新卒者の採用内定を取消し、又は撤回するときは、公共職業安定所長にその旨を通知しなければなりません(職業安定法施行規則第35条第2項)。

社会保険労務士(人事コンサルタント) 金子 賢一
[2009年10月23日 掲載]


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