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中小企業の事業承継を考える

第4回 事業承継計画(2) 事業承継方針を決める

前回は、後継者候補の現状、会社の経営状況、経営者自身の状況、の3つの視点から、現状を把握し、見極めるポイントを紹介しました。今回は、現状を見極めた結果、どのようにして事業承継の方針を決めるかについて具体的に見ていきましょう。

事業承継方針を決定する

事業承継の方針を決める上で不可欠な要素が3つあります。「誰に」(後継者或いは後継者候補)、「いつ」(承継時期)、「どのように」(承継方法)の3つです。具体的には、自社の現状を見極めて、後継者を決め、いつ、どのような方法で承継するかを決めます。
「誰に」承継するかは、既に後継者を決定している企業は良いのですが、後継者を決めていない大半の中小企業にとって最大の問題となります。例えば、後継者を決定する際の選択肢は、「後継者を親族から選ぶか社内から選ぶか。」「選ぶにあたり株式や財産の分配を巡って相続トラブルが発生する可能性はあるか。」「親族や社内にいない場合はどうするか。」「会社を売却して存続させるか」など様々に分かれます。その中で誰に決めるかは、自社の現状を見極め、さらに後述する親族内、従業員等、M&Aのメリット・デメリットを勘案して検討します。
「いつ」承継するか(現経営者が経営権と株式を併せて後継者にバトンタッチするか)は、どれだけ対策期間を見込めるかによります。選択肢は「時間をかけられるか」「緊急を要するか」の2つに分かれます。経営者の年齢や健康状態など現状から検討し決定します。

事業承継方法、3つの選択肢

「どのような方法で」承継するかは、次のように「誰に」承継するかによって選択肢が決まります。

[1] 親族へ承継・・・相続・贈与あるいは金銭による譲渡

[2] 従業員等への承継・・・金銭による譲渡(MBO等)

[3] 社外へ・・・金銭による譲渡(M&A等)

まず、親族内承継、従業員等への承継、M&Aそれぞれの方法のメリット・デメリットを比較してみましょう。

<それぞれのメリット・デメリット>

事業承継方法 メリット デメリット
親族内承継
  1. 一般的に、内外の関係者から心情的に受け入れやすい。
  2. 後継者を早期に決定し、後継者教育等のための長期準備期間を確保することも可能。
  3. 相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い。
  1. 親族内に、経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補がいるとは限らない。
  2. 相続人が複数いる場合、後継者の決定・経営権の集中が難しい。(後継者以外の相続人への配慮が必要)
従業員等への承継
  1. 親族内だけでなく、会社の内外から広く後継者を求めることができる。
  2. 特に社内で長期間勤務している従業員に承継する場合は、経営の一体性が保ちやすい。
  1. 親族内承継の場合以上に、後継者候補が経営への強い意志を有していることが重要となるが、適任者がいないおそれがある。
  2. 後継者候補に株式取得等の資金力がない場合が多い。
  3. 個人債務保証の引継等に問題が多い。
M&A
  1. 身近に後継者に適任な者がいない場合でも、広く候補者を求めることができる。
  2. 現経営者が会社売却の利益を獲得できる。
  1. 希望の条件(従業員の雇用、価値等)を満たす買い手を見つけるのが困難である。
  2. 経営の一体性を保つのが困難である。

(中小企業庁 事業承継ガイドライン20問20答より)

どの事業承継方法を決定するかは、経営者自身が決定すべきです。そこで、決定する際に以下の留意点について検討してみてください。

[1] 親族内承継の場合

  • 後継者候補との日頃から意思の疎通が必要です。同時に、関係者である役員・従業員、取引先・金融機関の理解を得ることも必要です。そのために事業承継計画を作成し、社内関係者、次に社外関係者と順を追って公表します。さらに後継者にとって将来の良い経営環境を作るため、役員・従業員の世代交代を準備します。
  • 自社の置かれた状況により取るべき方法は異なりますが、後継者への社内教育と社外教育を検討します。
  • 株式・財産の分配については、後継者への株式等事業用資産の集中と後継者以外の相続人への配慮との2つの観点からの検討が必要です。

[2] 従業員等への承継の場合

  • 親族内承継の場合と比べて、関係者への理解にはより多くの時間と意思の疎通が必要です。親族がいる場合、その意向をよく確認しておくことが必要です。
  • 後継者教育は、必要に応じて社内・社外教育を実施します。
  • 株式・財産の分配については、MBOの利用や会社法の各種手法を活用します。
  • 事業承継に先立ち、債務の圧縮や後継者の債務保証をできるだけ軽減します。個人保証・担保の軽減が図れない場合には、後継者へ負担に見合った報酬を用意します。

[3] M&Aの場合

  • 準備段階で秘密を役員・従業員・取引先などの関係者に漏らさないようにします。
  • 専門的なノウハウを有する仲介機関に相談します。
  • 相手先との交渉に入る前に自社の実力の磨き上げを行っておくことが重要です。
  • M&Aにおける会社の売却価値を試算してことが必要です。

(中小企業庁 事業承継ガイドライン20問20答より)

中小企業診断士 中村 俊雄
[2007年7月12日 掲載]


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