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第3回 勤務延長と再雇用(1)

前回までは、「高年齢者雇用」に関する法令改正の内容と、企業の対応策についてみてきました。今回は、改正高年齢者雇用安定法にともなう対応の具体策として、継続雇用制度(「勤務延長」と「再雇用」)について考えていきます。

1.言葉の定義(継続雇用制度)

「勤務延長」と「再雇用」とは、具体的には、どのような制度なのでしょうか?

「勤務延長」→ 定年年齢に達した社員を退職させることなく、引き続き雇用すること。
「再雇用」 → 定年年齢に達した社員を一度退職させ、再び雇用し直すこと。

2.注意点

上記1.のいずれの場合でも、原則として希望者全員を対象とすることが必要です。ただし、例外的に労使協定で継続雇用制度の対象となる労働者の基準を定めた場合には、当該労働者のみを継続雇用制度の対象とすることができることとなっています。
この基準の策定に関しては、原則として労使に委ねられていますが、労使が十分に協議したものでも65歳までの雇用の確保を目的とした高年齢者雇用安定法の趣旨や他の労働関連法規、公序良俗に反する基準は認められません。
さらに、この労使の協議が調わなかった場合でも、中小企業で平成23年3月31日まで、大企業では平成21年3月31日までは労使協定ではなく、就業規則などの定めによって対象者の基準を定めることが認められています。

3.継続雇用制度導入までにステップ

継続雇用制度を導入するまでには、以下のステップが考えられます。

  やるべきこと
ステップ(1)
方針決定
(1) 継続雇用制度に関する会社の方針」の決定
(2) 社員の定年後の希望についてのヒアリング
(3) 継続雇用制度の選択・決定
ステップ(2)
制度設計
(4) 継続雇用制度の内容検討・決定
(5) 継続雇用制度についての労使協議及び労使協定の締結
(6) 就業規則の変更・意見聴取・届出
ステップ(3)
社員対応
(7) 社員説明会の開催
(8) 継続雇用の希望の聴取・決定
(9) 個別労働条件の検討・個別面談の実施
ステップ(4)
制度運用
(10) 個別労働契約の締結
(11) 労働・社会保険手続き
(12) 制度の見直し

ステップ(1)「方針決定」

(1) 方針決定

まず、継続雇用制度を導入するにあたり、実施しなければならないのは、どのような目的や方針を持って定年到達者を雇用していくかを決定します。会社の将来と、社員とその家族の生活の安定のために制度導入の方針を決定します。理由としては、以下の内容が統計結果としてありますので参考にしてください。

  • 定年到達者の知識・経験を活用するため
  • 高年齢者でも働ける仕事であるため
  • 定年到達者の就業の機会を確保するため
  • 賃金が安いので

(2)社員へのヒアリング

いくら会社が定年延長や再雇用制度を導入しようとしても、その制度が実際に適用される社員の希望を無視してしまってはまったく形だけの制度になってしまい、意味を持ちません。社員が定年後をどのように考え、働くことについてどのような意識を持ち、会社にどのような事を望んでいるかの調査をします。

<ヒアリングする項目例>

  • 現在の年齢
  • あと何年会社で働きたいか?
  • 定年後も会社で働く場合の重視項目は?
    (賃金・労働時間・職務内容・社会保険)
  • 定年後も働く場合、希望する勤務形態
    (正社員・パート・嘱託・契約社員)
  • 定年後の生活資金は何を予定しているか?
    (年金・貯金・家族の扶助・就業収入)
  • その他雇用延長制度に関する意見

(3) 雇用延長制度の選択・決定

会社方針が決定し、社員へのヒアリングも行ったら、最終的に会社のとるべき継続雇用制度を選択します。社員の意見も加味しながら、会社で取るべき継続雇用制度を決定してください。

<継続雇用制度の特徴>

継続雇用制度 勤務延長制度
  • 対象者の基準をきめることができる
  • 従来の勤務延長なので、労働条件の変更が難しい
  • 退職金の支払いも延長できる
再雇用制度
  • 対象者の基準を定められる
  • 雇用関係が一旦中断するので、労働条件の変更が容易

ステップ(2)「制度設計」

(4) 継続雇用制度の内容検討・決定

導入すべき制度の方針が決定したら、制度設計を行います。「制度設計」の段階では、継続雇用の対象者および労働条件の決定方針を検討します。会社の方針を重視しつつ、年金や給付金の社会保障を上手に活用するための労働条件にすることが望まれます。

必要となる作業は、基準を設定し、継続雇用制度の適用対象者を限定することです。基準の設定には、「具体性」や「客観性」が求められます。

  • 「具体性」とは、意欲、能力等を具体的に測定するものであり、社員自ら基準に適合するか否かを一定程度予見することができ、到達していない労働者に対して能力開発などを促進することができるような具体性を有することをいいます。
  • 「客観性」とは、必要とされる能力などが客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものでなければなりません。会社や上司の主観的な選択ではなく、基準に該当するか否かを社員が客観的に予見可能で該当の有無について紛争を招くことのないように配慮されたものをいいます。

(5) 労使協議及び労使協定の締結

対象にかかる基準を決定したら、労使協議を行い、労使協定を締結する必要があります。会社が協議する相手は社員の過半数で組織する労働組合、また社員の過半数で組織する労働組合がない場合においては、社員の過半数を代表するものです。この協定書は労働基準監督署に提出する必要はありません。
ただし、労使協定の努力をしたにもかかわらず、協定が調わない場合には、中小企業においては平成23年3月31日、大企業においては平成21年3月31日までの間は、就業規則その他これに準ずるものにより継続雇用制度の対象者にかかる基準を定め、その基準にもとづき継続雇用制度を導入することができます。

(6) 就業規則の変更・意見聴取・届出

継続雇用制度の決定・労使協議を経た後、就業規則の変更が必要になります。就業規則には、再雇用時の労働条件の決定の基準についても決めておくことが望ましいでしょう。
ただし、あまり細かく決めてしまうと年金や給付金の有利な需給を妨げることになりかねません。大まかな決定方針を定め、あとは個別に対応することも検討するとよいかと考えます。

次回は、ステップ(3)以降についてみていきます。

社会保険労務士・ファイナンシャル・プランナー 成岡 英律
[2006年6月26日 掲載]